
重要なポイント
通信回線の品質向上により、新たなプラットフォームとして注目されているクラウドゲーミング。これまでどんなサービスがあったのか、今後どうなっていくのか、2030年に向けて現在の状況をまとめてみよう。
"クラウドゲーミング"と呼ばれるサービスをご存じだろうか。
インターネット経由で接続されたリモートサーバー(クラウド)にあるゲームを操作し、手元にあるデバイス(PCやスマホ、家庭用ゲーム機など)に映像がストリーミングで送られてくるサービス。ゲーム機や高性能PCなどは不要で、スマホやタブレットなどのさまざまなデバイスから、いつでもどこでもゲームをプレイできる。
このサービスの魅力は、"ゲームをデバイス本体にインストールすることなく、すぐに始められる"という点にある。ゲームはリモートサーバー(クラウド)側にあり、手元の本体にインストールする必要がない。
つまり「このゲームをインストールするためには100GBの空き容量が必要」といった心配もなく、これはひとつの大きな利点とも言える。
クラウドゲーミングは、約20年ほどまえにサービスが始まり、現在では複数の企業が提供している。よく聞かれる懸念のひとつが、「ネット経由だから遅延するのでは?」という点だ。
たしかにサービス初期はそうだった。麻雀やノベルゲームならタイムラグがあってもそれほど問題はないが、レースゲームやアクションゲームなど瞬時の判断が必要とされるゲームはプレイに支障が出てしまうことも多かった。
そんな当時の印象をそのまま持っている人や、数年まえに試して「やっぱり遅延がある」と感じて、クラウドゲーミングで遊ぶことをやめてしまった人も多いかもしれない。
しかし、いまや技術の進歩は目覚ましく、各社のクラウドゲーミングサービスでは遅延が大幅に減少している。もちろんゼロとは言わないが、アクション性のあるゲームでもさほど気にならないレベルなのである。
本記事では、そんなクラウドゲーミングの歴史を振り返りながら、今後の展望についても考えていく。
クラウドゲーミングの歴史を振り返る!
まずはクラウドゲーミングの歴史をおさらいしていこう。サービスがスタートした順から紹介していく。
【2004年~2025年】G-cluster

G-cluster(ジークラスタ)はブロードメディア社が2013年に専用ハードとともにサービスを開始したクラウドゲーミングサービスだ。
東京ゲームショウ2013では"新時代クラウドゲーム機"として出展し、プロモーション活動を積極的に行っていた。
筆者も触ったことがあるが、シューティングゲームなどアクション性の高いものだと、入力結果が画面に反映されるまで「ちょっと遅れるな」という印象だった。
ソニーやシャープなど一部のテレビにアプリが搭載されるなど独自サービスとして展開してきたが、2025年2月28日でサービスが終了した。
【2010年~2015年】OnLive、【2010年~2015年】Gaikai
OnLiveは2010年に、Gaikaiは2011年にアメリカでサービスが開始されたクラウドゲーミングサービスだ。
その後、どちらもソニーに買収され、そのクラウド技術を使って2015年にプレイステーションのクラウドゲーミング"PlayStation Now"がスタートする(なお"PlayStation Now"は、2022年6月からPlayStation Plusに統合された)。
【2014年~2016年】シンラ・テクノロジー
シンラ・テクノロジーはスクウェア・エニックスの子会社として2014年に設立。クラウドゲーミング専門会社としてスタート。
ところが具体的なサービスが始まることなく2016年に解散。公式リリースによると「クラウド・プラットフォーム事業者として、追加の事業資金の第三者からの調達を目指して参りましたが、その目処が立たなかった」とのこと。
米国テキサス州オースティンのGoogle Fiber Spaceにて シンラ・テクノロジーの技術を米国で初公開/2015年夏Google Fiberユーザー向けβテスト開始 http://t.co/Ackm5nLhP5 pic.twitter.com/U2cAFUtdHm
— Shinra Technologies (@Shinra_Tech_JP) March 13, 2015
【2019年~2023年】Google Stadia
このあたりから知っている人も多くなってきそうだ。2019年、「Googleがついにゲーム機参入!」ということで話題になったのが、この"Google Stadia"だ。
専用コントローラーを使用し、無料コースと月額課金コース(9.99ドル)が選択可能。最大の特徴は、GoogleのサービスのひとつであるYouTubeとの連携だ。Stadiaで配信されているゲームトレーラー等をYouTubeで観ているとき、「あ、このゲームを遊びたいな」と思ったらクリックするだけでそのゲームがスタートする。動画配信とゲームを連携させた、画期的なものだった。
さらにはStadia Games and EntertainmentというStadia専用ゲームを作るためにゲームスタジオを設立。責任者にジェイド・レイモンド氏(『アサシン クリード』の元プロデューサー)を招き入れ、さらにはシャノン・スタッドスティル氏(『God of War』などを作ったソニー・インタラクティブエンタテインメント サンタモニカのスタジオヘッド)も参加し、ゲーム業界に大きな衝撃を与えた。
2019年11月に北米・欧州でサービスイン。『Orcs Must Die! 3』などの独占タイトルをはじめ、『サイバーパンク2077』、『ファイナルファンタジーXV』、『ディビジョン2』、『ボーダーランズ3』、『サムライスピリッツ』と人気作も遊ぶことができたが、ユーザーの興味は次世代ゲーム機(2020年末にプレイステーション5とXbox Series X|Sが発売)に向いてしまい、会員数が伸び悩んでしまった。
その結果、日本でサービス開始とはならず、2023年1月にサービス終了となった。
現在も継続中のクラウドゲーミングは?
ここからは、2025年9月現在も継続中のクラウドゲーミングサービスを紹介しよう。
【2015年~】PlayStation Plus プレミアム加入者向けのクラウドストリーミング

ソニーはふたつのクラウドゲーミング会社を買収し、2015年に"PlayStation Now"というサービスをスタートさせた。"PlayStation Now"はプレイステーション4とプレイステーション3のタイトルをクラウドで遊べるというものだったが、2022年にこのサービスは"PlayStation Plus"に統合された。
2025年現在は、PlayStation Plus プレミアム加入者であれば初代プレイステーションやプレイステーション・ポータブル(PSP)、プレイステーション2、プレイステーション3、プレイステーション4、プレイステーション5のタイトルをクラウドで遊ぶことが可能だ。月額1550円。
【2019年~】Boosteroid

Boosteroidはウクライナ、アラブ首長国連邦、ルーマニアを拠点とするクラウドゲーミング会社で、2019年にサービス開始。
WindowsやMac、スマホ等からブラウザ経由で楽しむことができ、半導体メーカー・AMDと、エレクトロニクスメーカー・ASUSと提携することで、クラウドゲーミングに特化したハードウェアとサーバーシステムを構築し、最大で4K / 120fpsを実現している。SteamやEpic Games Store、Battle.netなど多くのプラットフォームと連携し、いまどきの人気タイトルをしっかり揃えており、とくにヨーロッパでは意欲的にサービスを拡充している。
日本からもサービスを利用することはできるが、北米と欧州にサーバーが設置されているため品質の保証はない。料金は月額9.89ユーロから。
【2020年~】Game Pass Ultimate加入者向けのXbox Cloud Gaming
マイクロソフトが展開しているXbox Cloud Gamingは、2020年に欧米でスタートしたクラウドゲーミングサービスだ。
2021年から日本でも開始され、その存在感を少しずつ大きくしている。
ゲーム遊び放題サブスクサービスのGame Pass UltimateにXbox Cloud Gamingが組み込まれており(PlayStation Plus プレミアムのクラウドストリーミングと同じような取り組み)、対応タイトルがクラウド経由でXboxやWindows、スマホでプレイすることができる。月額1450円。
【2020年~】Geforce NOW
アメリカの半導体企業・NVIDIAによるクラウドゲーミングサービスのGeforce NOWは2020年にスタート。
SteamやEpic Games Storeで購入したゲームをクラウドで遊ぶという仕組みで、グラフィックボードRTX5080相当のゲーム体験が可能となっている。日本ではソフトバンクやauがサービスを提供していたが、現在はNVIDIA自身が日本市場を運用している。
サービス料金は広告ありの無料プランから、Performance、Ultimateの3コースがあり、さらには1日、月、年と期間も好みに合わせて用意されている。まずは無料コースやワンデイパスで試してみて、その触り心地を試してみるのもいいだろう。
Performanceの場合、ワンデイパスは650円で月額だと1790円。Ultimateは月額3580円。
【2022年】Amazon Luna

Amazonによって運営されているクラウドゲーミングサービスのAmazon Lunaは、2022年3月からアメリカでスタート。Amazon Web Services (AWS) のクラウドサーバーでゲームを動かしている。
Amazonのプライム会員ならすぐに体験でき、選りすぐりのゲームがクラウド経由でWindowsやスマホでプレイできる。加えて月額9.99ドルのLuna+に加入すると、ゲームライブラリに話題作・人気作が追加。その他UBISOFT+など、ライブラリごとに加入することが可能となっている。
ゲームを遊ぶときはWindowsに接続可能なゲームパッドでオッケーだが、専用のLunaコントローラーを使うとより快適に遊べるのも大きな特徴のひとつ。コントローラーからクラウドサーバーへ直接接続することで、入力遅延が17~30ミリ秒ほど短縮。さらにはAlexa対応なので、「『フォートナイト』を遊ぶ」など音声対話でゲームを起動することができる。
2025年9月現在、日本ではサービスは開始されていない。
これからどうなるクラウドゲーミング?
調査会社のフォーチューンビジネスインサイトによると、世界のクラウドゲーミング市場は2025年の157億4000万ドルから、2032年までに1217億7700万ドルに成長すると予測されている。
なぜそこまで市場が拡大すると思われているのか。
クラウドゲーミング最大の利点は、ハイスペックのPCが必要ない、という点にある。低スペックパソコンでも、十分なネット回線があれば、有名メーカーの超人気ゲームを高品質なグラフィックでプレイ可能なので、高価なグラフィックボードを増設するなどの追加投資の必要がない。
次世代家庭用ゲーム機の噂もそろそろ出てきているが、昨今の現世代ハード価格からして、かなり高額になることが予想されている。クラウドゲーミングなら、新ハードがなくても同等のゲームを遊ぶことができるのは大きな利点だ。
また、スマホでプレイできる点も大きい。世界人口の約半分である43億人がスマートフォンを持っていると言われており、それだけの人数がゲームに触れるチャンスがある。その人たちにもっと広がれば、クラウドゲーミングサービスにとって大きなチャンスとなるだろう。
2030年ごろには6G(シックスジー)が実用化される予定だ。6Gになるといま以上に大容量&低遅延になるので、クラウドゲーミングがもっと快適になるはず。5Gの登場前後でクラウドゲーミングサービスが多数始まったことから、6Gが始まる2030年ごろにはさらなるクラウドゲーミングのビッグバンが起こるかもしれない。
5Gに続く次世代の移動通信システムで、2030年ごろの商用化を目指し、現在開発が進められている。
BoosteroidやAmazon Lunaの日本展開はあるのか、それとも新たな日本独自のクラウドゲーミングサービスが生まれるのか。これから5年間のクラウドゲーミング市場に注目したい。




