重要なポイント
家にいながらにして旅行気分を味わえるゲームを紹介。『Fallout 4』でボストン(アメリカ独立戦争ゆかりの地)、『パラノマサイト』で東京墨田区、『返校』で1960年代の台湾、『Grim Fandango』でメキシコ文化、『Deliver Us The Moon』で月面探査が楽しめる。ゲームを通じて、世界各地の雰囲気や歴史を体感しよう。
物価高や円高などの影響で、おいそれと旅行にも行きづらくなった昨今。とはいえ、せめて気持ちだけでも、いろいろな場所を見て回りたいというもの。
そこで、現実世界をベースにした5本のゲームをピックアップし、少しでも旅行に行った気分が味わえるような記事をご用意した。
家にいながら各地を旅行する楽しさをご堪能あれ!
①『Fallout4』(マサチューセッツ州ボストン)
『Fallout』シリーズは、核戦争後の世界を舞台にしたオープンワールドRPGだ。銃器や各種医薬品(ドラッグ)などを頼りに荒廃した世界を生き残り、大量に用意されたクエストをさまざまな方法で攻略するのがウリのゲームである。
『Fallout4』は、アメリカのマサチューセッツ州ボストンが舞台。といっても善良な市民は生き残っておらず、グール(放射能で変異してしまった人間)やラッドローチ(巨大ゴキブリ)といったモンスターたちが蔓延っている。まさに、アメリカが元気だったころの風景を幻視しながら、いまやケツ拭く紙にもなりやしない戦前のお金を拾ってげんなりするような世界観となっている。
なお、『Fallout』シリーズは近未来の設定でありながら、アメリカの歴史をなぞるために用意されたスポットが多い。本作のスタート地点のすぐ近くには、レキシントン、コンコードといった"アメリカ独立戦争"ゆかりの地がある。
また、コンコードの街には自由博物館(ゲーム内ではこう表記されている)があり、建物のなかには独立戦争に関する資料が展示され、イギリス兵とアメリカ兵が衝突するマネキンなども飾られている。とはいえ、核戦争後の荒廃した世界なので、各種展示もボロボロで朽ち果てているのだが……自身の教養を深めるための観光目的で本作を遊ぶのもなかなか乙なものだ。
現実世界ならば博物館に入るにもチケット代が必要だが、『Fallout4』ならタダで見て回れる。しかし案の定、自由博物館はレイダーと呼ばれる無法者たちの巣窟になっているので、足を踏み入れるときは、強度な武器と装備は忘れずに。
②『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』(東京都墨田区 本所吾妻橋)
『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』は、東京の下町が舞台だ。もっとも霊力が集まる夜、"呪いの力"を得た9人の男女が《蘇りの秘術》という禁術を求めて殺し合うミステリーホラーアドベンチャーである。
ゲーム内の時代こそ昭和後期であるものの、両国駅と錦糸町駅のあいだに広がる一帯が舞台であり、ランドマークも現代とだいたい同じである。たとえば、旧安田庭園や両国橋といったスポットはゲーム内でも見て回れる(流石にスカイツリーは竣工されていないが……)。聖地巡礼しながら遊ぶのも良いだろう。
また、本作に登場する"呪いの力"は、"本所七不思議"という怪談がモチーフになっている。"本所七不思議"は、江戸時代から何度となく語り直されてきた人気の怪談であり、講談や小説として人気を博してきた。詳しくは墨田区の公式ホームページにも載っているので、興味のある方は、そちらも併せて読んでもらいたい。たとえば"送り拍子木"の怪談は亀沢一丁目から四丁目に伝わるものらしく、伝承の範囲が非常に細かいところなどが面白いと感じた。
③『返校 –Detention-』(台湾)
本作は1960年代の台湾にあった架空の学校が舞台のホラーアドベンチャーゲームだ。"白色テロ"が吹き荒れる時代、学校から帰ろうとした主人公のウェイ・チャンティンは、講堂で眠る女子生徒ファン・レイシンを見かける。ふたりは学校を出ようとするものの、怪異が彼らを襲う……。
白色テロとは、体制派による反体制派への弾圧を指す言葉である。当時、蒋 介石(しょう・かいせき)率いる中国国民党が台湾行政を支配し、反政府思想に染まりそうな人物を片端から逮捕、監禁、処刑していた。
本作では、教師が学生に禁書を用いて読書会を開いたことが事件の基となっている。そのモデルになったと言われている事件"基隆中學事件"でも、読書会を開いた教員や学生が不当に逮捕された。1949年、台湾北部の学校での出来事である。
本作を開発した台湾のゲームメーカー、Red Candle Gamesは、続編となる『還願 -Devotion-』(現在はPC版のみの配信)でも、同じ時代の台湾を題材にしている。家の意匠や服装、当時の空気感に至るまで、徹底的な取材によって作られている。
当時の台湾の歴史的背景に興味のある人は、ぜひ続編もあわせてもチェックしてみてほしい。
④『Grim Fandango Remastered』(メキシコ)
『Grim Fandango』は1998年にリリースされたポイント&クリック方式のアドベンチャーゲームだ。現在『Grim Fandango Remastered』としてリマスター版がリリースされている。
本作の舞台は、正確には死後の世界だがメキシコの民間伝承を基にした空間になっており、本作を遊ぶことでメキシコ文化の一端を学ぶことができるだろう。
主人公マニー・カラベラは、死者の国にある旅行代理店のサラリーマン。彷徨える魂が楽園に行けるように旅行パッケージを売りつける仕事をしているが、ある日会社が不正を働いていることに気づく。会社の不正を暴くため、そしてひとりの女の魂を救うため、マニーは旅に出るのだった。
本作は"死者の日(Dia de muertos)"というメキシコのお祭りからスタートする。こちらは毎年11月1日か2日に行われるお祭りで、日本ならお盆、欧米ならハロウィンに相当するようなものだ。故人の魂が現世に戻ってくるとされ、祭壇にカラフルな骸骨を並べたり、死者のための菓子パンを用意したりして祝う。日本や欧米とはまた違った感覚を覚える風習で、彼らの死生観が垣間見れる。
『Grim Fandango』の登場人物はみんな着飾った骸骨で、彼らの名前も死者の日を意識している。オフレンダ(祭壇)やら、コパル(お香)といった具合だ。
メキシコ文化が織りなす一風変わったこの死者の世界を、ぜひとも旅していただきたい。
⑤『Deliver Us The Moon』(月面)
本記事"ゲームで旅行"の最後に紹介するのは、地球を飛び出し「いっそ月まで行ってしまおう!」ということで、アクションアドベンチャーゲーム『Deliver Us The Moon』をチョイス。
本作のストーリーはこうだ。宇宙時代、地球は月から放射される資源を頼りに生き永らえていたが、突如としてその放射が止まってしまう。月面基地の様子を調べに行く主人公だが、そこでは大きな問題が起きていた……というもの。
宇宙に人類が住み始めるという遠い未来においても、人間同士の諍いは止まらないという苦しいストーリーが語られる。ゲーム中は大体月面基地内を行き来して進むが、基地の外に出る低重力パートもちゃんと存在する。どこまでも続く白と黒が織り成す美しい月面の景色を存分に堪能してほしい。
続編となる『Deliver Us Mars』では火星へ向かう。太陽系を巡る"旅"を楽しみたいというのであれば、本シリーズを追い掛けるのをオススメしたい。
……以上、"ゲームで世界旅行しよう!"をお届けした。気分だけでも世界を見て回れたのであれば幸いである。