Ascending Inferno

【BitSummit the 13th】青春と謎が交差する『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』で日常の不思議を解き明かせ!

BitSummit the13th出展作品のプレイレポート

ライター /

ミステリー小説が好きな筆者の目に飛び込んできたのは、青くて美しいパッケージと『502号室』というタイトル。

舞台は寄宿学校、ジャンルは青春ミステリー。なんという魅力的な要素の詰まった作品だろうか。

この『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』、開発は韓国・ソウルを拠点とする開発チーム、LOTSによるものだ。

『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』のブース
©PINION/©LOTS

ブースには、登場人物の学生証や制服のパネルが飾られていて、ついじっくりと眺めてしまう。

ブースに向かうと、そこは学校の世界観を丁寧に落とし込んだ空間だった。キャラクターたちの学生証や制服(カード)が飾られており、とても可愛らしい。

試遊および、Steamのウィッシュリストへの追加をすると、実際に学生証カードをもらうことができたので、思い出として持ち帰ることができたのも嬉しかった。

平凡を求める少女が出会う非日常--静かに始まる青春の謎解き

『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』のゲーム画面
©PINION/©LOTS

美しいイラストと、紡がれる文字を読みながらプレイを進めるので満足感がある。

ゲームは、美麗なイラストと文章を読み進めながら、物語と謎解きを楽しむ構成となっている。

主人公は、平凡な毎日を愛する高校生・ヘウン。彼女は寄宿制高校に入学するが、新学期早々耳に入ってくるのは、学校内で起こったどこか不思議で少しファンタジー要素を感じさせる、ミステリーの数々だった。

ヘウンのルームメイトは目を輝かせてその謎に心躍らせるが、ヘウンはどこか冷めた様子。世のなかがそんなに面白いわけがないという思いから、「謎なんてない」ことを証明すべく、真相究明に乗り出すことになる。

ゲームの流れとしては、発生した謎について、聞き込みや観察を通じて情報を集め、夜にはルームメイトとともに"502号室"に集まり推理を展開することになる。

手掛かりとなる持ち物や言動、些細な違和感をつなぎ合わせて仮説を立て、検証を重ねながら真相に迫っていく。

ダヒはどこに消えた? 部屋に入ったはずの行方を推理する

『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』のゲーム画面
©PINION/©LOTS

ルームメイトのダヒがどこにいったのかを、会話や当時の状況から探っていく。

最初に直面する謎は、「ルームメイトのダヒはどこに行ったのか?」というものだ。入学に向けて、生徒たちはそれぞれ入寮の準備を進めていた。

502号室に配属された4人の生徒たちも、例にもれず荷物を運び込んでいたという。そのうちのひとり、セリンは寮に入る直前、女子生徒のダヒを見かけている。彼女はキャリーケースを引いており、いままさに部屋へ向かっているように見えた。

セリンが間を置かず502号室に入ってみると、ダヒのキャリーケースが部屋にある。

しかも彼女の周りはすでにきれいに整理されていた。だが、肝心のダヒだけがどこにも見当たらないのだ。彼女は本当に部屋に入ったのか? どこへ行ってしまったのか?

セリンの証言や部屋に残された私物を頼りに、状況をひとつずつ紐解いていく。

 

画面左の円には、集めた"手掛かり"が表示される。それらを組み合わせて"仮説"を構築し、証明していく仕組みだ。

ときには新たな"疑問"が生じるので、手掛かりを見直して"推論"を導き出すことで新たな視点が得られることもある。

しっかりと手掛かりを整理して考える必要があり、プレイヤー自身の思考力が試される場面が多い。情報をつなぎ、検証を重ねることでじょじょに真相へと近づいていく過程は、推理小説の名探偵さながらで、思わずストーリーにどっぷりと没入してしまう。

インスピレーションはあのアニメ作品! ただの高校生活が、謎に包まれていく

本作では殺人や泥棒といった、劇的な事件は起こらない。だが、高校生活に潜む小さな違和感や不可解な出来事を解き明かしていくという点で、むしろリアルで魅力的なミステリーとなっている。

開発者にその着想について尋ねたところ、「アニメ『氷菓』にインスピレーションを受けた」との回答があり、思わず声を上げるほどに納得してしまった。


メモ

TVアニメ『氷菓』
©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会

テレビアニメ『氷菓』のイメージビジュアル。

『氷菓』は、小説家・米澤穂信による〈古典部〉シリーズの第1作を原作とし、2012年に放送された青春ミステリーアニメ。学校生活で感じた身近な謎を丁寧に解き明かしていく日常系ミステリーで、メインキャラクターである"奉太郎"と"える"の掛け合いや、美しい作画も魅力。国内外問わず多くのファンを獲得した作品だ。

『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』のゲーム画面
©PINION/©LOTS

イラストはもちろんだが、いっしょに紡がれる文章がなんとも美しい。

確かに、チュートリアル冒頭で描かれる小説的な語り口や、"幻想なんて信じていない高校生・ヘウン"という現実主義な主人公が、"平凡で快適な毎日を夢見る"という姿勢で、省エネ志向の学校生活を送ろうとする様子は、『氷菓』の主人公・折木奉太郎を彷彿とさせるものがあった。

さらにゲームを進めていくなかで、日常に潜む、些細だがどこか引っかかるような違和感を本人の意思とは裏腹に解き明かしていくことになったり、その過程で、ときおり話が脱線するようなテンポのよい同級生たちとの掛け合いが展開されたりと、確かに『氷菓』の持つ独特の空気感やリズムが随所にちりばめられていると感じた。

重苦しさのない軽やかな語り口のなかで、じんわりと深まっていく謎。

その描きかたには、思春期の微妙な感情や関係性、そして思考のやりとりを大切にしようとする開発者の意図が感じられるようだった。

本作の開発者が、どのように作品から影響を受け、どこに共鳴し、どんなかたちで自分たちのゲームにその精神を落とし込んだのか。その一端を垣間見たような気がした。

ミステリー初心者にも勧めたい、青春が詰まった一作

『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』のゲーム画面

©PINION/©LOTS

シリアスすぎず、それでいてしっかりとした思考を求められる絶妙なバランス。女子高生たちが真剣に謎に取り組みながら絆を深めていく様子は、まさにかけがえのない青春そのものだ。

なお、ブースのデザインやゲーム内のカラーリングが一貫して青基調だった理由を聞いてみたところ、「青春の青をイメージした」とのこと。このあたりの演出にも開発チームのこだわりが光る。

発売は2026年末を予定。6〜8時間ほどで遊び切れる設計になっているという。

寄宿高校で繰り広げられる青くて繊細なミステリー、その謎を解き明かせる日が待ち遠しい。

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