Ascending Inferno

【BitSummit the 13th】そのすべてが愛おしくなる! 世界イチ小さな美少女ゲーム『Thumbylina』

BitSummit the 13th出展作品のプレイレポート

ライター /

重要なポイント

2025年7月18日(金)~20日(日)にかけて、京都・みやこめっせ(京都市勧業館)で開催されたインディーゲームイベント、"BitSummit the 13th"(以下、ビットサミット13)。そのイベントに出展された『Thumbylina』のプレイレポート。親指サイズの極小ハードウェアで美少女を愛でる、超画期的な伴走型育成シミュレーションゲームに出会った!

近年では自分の好きなキャラクター、いわゆる""推し"といっしょに、さまざまな活動を行うムーブメントが活発になってきている。たとえば、ぬいぐるみを連れてさまざまな場所で写真を撮ったり、着せ替えを行ったりする"ぬい活"などが有名だろうか。このように"推し"を身近に感じられれば、ふだんの生活もより楽しく、特別なものになるというものだ。

そんな"推し"との生活を文字通り"手軽に"実現してくれるのが、Leona Softwareが開発した"世界イチ小さな美少女ゲーム"こと、『Thumbylina(サンビリーナ)』である。あえて"手軽に"を強調したのには、ワケがある。とりあえず、この写真を見てほしい。

本体とボールペンの比較
©PINION/©Leona Software

この小ささで遊べるってマジ?

……いや小さッッッッ!! ボールペンと比べてこのサイズって、小さッッッッ!! だが、この極小ハードウェアに収まっているのは、まぎれもなくひとつのゲーム……いや、ひとりの美少女と言うべきだろうか。なんにせよ、超絶レアな作品であることは間違いない! というわけで、今回はこの『Thumbylina』を紹介していきたい。

Thumbylinaのブース
©PINION/©Leona Software

『Thumbylina』のブース。開発者さんも快く撮影をオッケーしてくれた。

"おやゆび姫"もビックリ!? のコンパクトさ

本体のバリエーション
©PINION/©Leona Software

スケルトンもある!

あらためてになるが、まずは非常に特徴的な本体外装から見ていこう。本作はオープンソースハードウェアの"Thumby"をベースに作られており、『Thumbylina』というタイトルはその名称と、童話『おやゆび姫 サンベリーナ』からつけられたそうだ。もはや親和性の塊とでも言うべき、素晴らしい名前である。

電源ボタン
©PINION/©Leona Software

上部の電源ボタン。「カチッ」となるのが気持ちイイ。

外装の造りは非常にシンプルで、上部に電源ボタン、下部に充電用のドック、前面に液晶と方向キー&ふたつのボタンがある。また、ストラップの装着も可能。もちろん、ボタンは全部ちゃんと押せるし、反応する。ただ本当に小さいので、一般的なコントローラーと違って指の腹などではなく、爪の先端を使うほうが押しやすかった。

本体のデザインにはいくつかの種類があり、見た目の違いを楽しめるのも魅力のひとつだ。キーホルダー感覚で持ち運べるほか、ぬいぐるみに持たせた小型のポシェットに収納することもたやすいので、本当に"手軽"なのである。

美少女といっしょに自分磨き!

Thumbylinaの見た目
©Leona Software

こちらの"Thumbylina"が、ゲームに登場する子だ。ロゴの下にローマ字で書かれた"親指サイズのお友だち"が、妙にオシャレである(そこも開発者さんのこだわりなんだとか)。

次に、ゲームの内容だ。ゲームに登場するのはひとりの美少女で、その名前こそがゲームタイトル、すなわち"Thumbylina"なのである。くっ、俺(筆者)はピンクの髪とツインテールに弱いんだ……かわいい……グフッ(倒)。

基本のメニュー画面
©PINION/©Leona Software

ゲームを起動したばかりの状態だと、"Thumbylina"は髪がボサボサ。早く整えてあげたくなってしまう。

電源を入れると、基本のメニュー画面が表示される。この画面の中央では"Thumbylina"が足踏みをしており、ここで各種ボタンを押すことで、さまざまな機能を利用できる仕組みになっている。

まず方向キーの下を押すと"着せ替えモード"が起動し、彼女の服装や髪型を変えられる。新しい服や髪は、ゲーム内で貯めた"コイン"を消費して"ガチャ"を回すことで入手可能だ。また、セットした服装や髪型は、基本のメニュー画面にいる"Thumbylina"や、後述する別の画面に反映される。本当に芸が細かい。

その肝心の"ガチャ"を回す"コイン"を稼ぐために使うのが、基本のメニュー画面から遷移できる、"勉強モード"(方向キー左)と"運動モード"(方向キー右)である。

これらのモードを起動し、1分~60分のタイマーを設定したあと、小さい丸ボタンの右側を押して決定すると、カウントダウンが始まる。そしてタイマーがゼロになると、経過した時間に応じたコインをもらえるのだ。

タイマーが進んでいるあいだは、"Thumbylina"が画面内でがんばっている様子がうかがえる。プレイヤーはそのあいだ何をするも自由だが、せっかくだから彼女といっしょにやっているつもりで勉強や運動をすれば、いっしょに成長できる!? これぞまさしく、伴走型育成シミュレーションゲームの真骨頂である。

データ確認画面
©PINION/©Leona Software

自分のやりこみ度が、ひと目で分かる。

基本のメニュー画面で方向キーの上を押すと、"勉強モード"や"運動モード"の経過時間、"コイン"所有数の確認のほか、サウンドやタイマー終了時のアラームのON/OFF切り替え、ガチャの実行を行う画面に遷移する。

そして、基本のメニュー画面で小さい丸ボタンの左側を押すと……"Thumbylina"のバストアップが表示される!! これだけでもかなりハッピーになれるが、なんとこの画面のイラストには、"着せ替えモード"で変更した内容が反映される。

つまり、"勉強モード"や"運動モード"でがんばってコインを集めて"ガチャ"を回しまくれば、いろいろな表情の"Thumbylina"を見られるのだ! こんな小さな本体なのに、ビッグなドリームが広がっているじゃあないのさ……。しかも服装と髪型の入手が"ガチャ"(ランダム)なので、ワクワク感が続くところも面白い。

ちなみに、遊んでいる途中で本体のバッテリーがなくなっても、内部のデータはちゃんと残るので安心だ。

真心こめて、1個ずつ手作り

試遊後、『Thumbylina』の開発者にインタビューの時間をいただいた。

――本作は、なぜこのサイズ感にしようと思ったのですか?

開発者:世界イチ小さいと、面白いと思ったからです(笑)。あと、最近はぬいぐるみやキーホルダーをぶら下げて行動するかたも増えてきたので、『Thumbylina』でも"推し"を持ち歩く感覚を体験してもらえればというのもあります。

――本体を作るのが、すごく大変そうです。

基本のメニュー画面

©PINION/©Leona Software

開発者:製造委託をしているので、基本的には問題ありません。ただ、3Dプリントでボタンなどを作るときは非常に細かい作業が必要になりますね。

ちなみに、この本体を作るときは"光造形"という方式を使うのですが、作業時に科学的な臭いがするので、家のなかでは作業ができないんですね。そこで外で作業するわけですが、パーツを落とすと見えなくなってしまって……。ですから、歩留まり(※)はめちゃくちゃ悪いです(笑)。そんな状況でも、がんばって1個ずつ手作りしています。


メモ
(※歩留まり/ぶどまり)製品の生産過程において、投入した原材料や素材に対して、どれだけの割合で良品が生産されるかを示す指標。

――さきほどお買い上げされたかたがいましたが、販売もされてるんですね!

開発者:はい。現在もまだ開発途中ではあるのですが、1個5000円で販売しています。なにか問題が発生した場合は連絡をいただければ、交換対応をします。今日(ビットサミット13の1日目)でも何個か売れたので、明日以降のぶんもちゃんと確保しています。

『Thumbylina』は2024年の8月に作ろうと思い立ち、11月にはソフトが完成していました。私は日本のゲームの中国展開をお手伝いする仕事をしているのですが、その関係で中国のイベントに参加する機会もありまして。

それで、上海のインディーゲームイベントや台北ゲームショーなどに『Thumbylina』を出展したところ、来場者に「欲しい」と言われたんです(笑)。まだまだ開発中ではあったのですが、それでもよければ、ということで台北ゲームショーから販売を始めました。

直近では、日本の吉祥寺でおこなわれた"TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025"にも出展し、そこでも完売しました。

――売れ行き好調ですね(笑)!

開発者:(笑)。なので私としては、もっとインディーというか、個人でこういったモノを作る人が増えてもよいのではと思っています。それこそ私たちが子どものころは、『デジモン』や『たまごっち』、釣りのゲームなど、いろいろなおもちゃのデバイスがありました。

勉強モード

©PINION/©Leona Software

――なぜ、こういったゲームを作るかたが少ないのでしょうか?

開発者:やっぱり、ハードウェアを作ることのハードルが高いと思われているのではないでしょうか。でも実際、ハードウェアを作っている人に聞いてみれば、「そんなに難しくはない」とみんな言うと思うんです。ソフトウェアを作っているみなさんが、そのことを知らないだけで。

――ソフトウェアを作る技術さえあれば、あとは意外となんとかなっちゃうと。

開発者:そうですそうです。じつはソフトウェアと同じ感覚で作れます。実際、いわゆるメーカーフェアに行くと、『Thumbylina』のようなおもちゃ的なゲームを作っているかたはいます。

ただ、そういうかたは、インディーゲームのイベントにはあまり来ないように思います。逆も然りで、インディーゲームを作っている人がメーカーフェアに行くことも多くないのかもしれません。つまり、お互いの接触の機会が少なく、ある意味でハードウェアとソフトウェアの分断のようなことが起きている可能性があると思います。

――すごく興味深いお話でした。業界で頑張っているかた同士が出会う機会が増え、個性的なハードウェアを活用したゲームもたくさん見られるようになるといいですね。

デジタルに咲く一輪の花をゲットしよう

いろいろとミニマムな『Thumbylina』だが、そこに込められた開発者の愛情や熱意は、とてもビッグだと感じた。ちまっとしてカワイイ本体の見た目もさることながら、そのなかでさまざまな顔を見せてくれる"Thumbylina"は、本当に魅力的な存在だ。まさに、"すべてが愛おしくなる"ゲームである。

本作の発売日は、2026年4月ごろを予定しているらしい。昨今の"推し活"ムーブメントに乗り、自分も"推し"といっしょに活動したいと思っているそこのアナタ! ぜひ『Thumbylina』をゲットし、いっしょに自分を磨いてみてはいかがだろうか!?

Pinion Logo
ニュースレター
を購読する


購読する プライバシーポリシー
投票
いちばん利用頻度の高いSNSは?
投票する
結果を表示