新要素モリモリ&超遊びやすい!! HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ...』

『ドラゴンクエスト』シリーズの新たな伝説がはじまる!

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ムービーやボイスの追加で原作からさらに深みを増したストーリーに、美しいグラフィックとサウンドの組み合わせが上質なゲーム体験をもたらしてくれる。新要素も満載で、とくに"キラキラの場所"や"ひみつの場所"を探すのが楽しい。

長所

  • 新しくも安定して面白い『ドラゴンクエスト』を味わえる
  • 現代に合わせたシステム改良で遊びやすさが超アップ
  • 新職業の"まもの使い"の性能が特徴的
  • キャラクターメイキングの幅が広く、自分の個性を出せる

短所

  • "すごろく"がなくなっていたのが残念
  • レベルアップ時の全回復など、難易度を著しく下げる要素も
  • 敵の状態異常回復スピードなど、戦闘バランスは見直しの余地あり

2024年11月14日、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ...』(以下、『ドラクエ3リメイク』)が満を持してリリースされた。本作のベースとなっているのは、いわずと知れた『ドラゴンクエスト』シリーズの3作目である。ジャンルはRPGで、勇者(主人公)とさまざまな"職業"の仲間で最大4人のパーティを組み、世界に脅威をもたらす魔王の打倒を目的に冒険する。

ちなみに、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ...』は1988年2月10日にファミコン向けソフトとして発売され、その後もスーパーファミコン版やゲームボーイカラー版などに移植された(以下、『ドラクエ3リメイク』より以前にリリースされた同系統の作品を"原作"と記載)。

『ドラクエ3リメイク』はシンプルなコマンド選択式の戦闘、仲間の職業を変えられる"転職"システムなど原作にもあった基礎部分はそのままに、多くの新要素やゲームを遊びやすくするためのチューニングが施されている。そのため従来のファンは新鮮な気持ちで遊べるし、本作で初めて『ドラゴンクエスト』シリーズを遊ぶユーザーや、RPG初心者でも楽しめるようになっている。

本記事ではゲーム開始から最後の隠しボスまでの攻略記事を担当した筆者の視点から、『ドラクエ3リメイク』の良さ、そして今後の『ドラゴンクエスト』シリーズHD-2D作品に期待する点などをご紹介したい。

ボイスやシーンの追加で"エモさ"が増したメインストーリー

『ドラクエ3リメイク』のメインストーリーは、基本的には原作の流れをそのまま踏襲している。しかし、本作ではボイスつきの新たなイベントが随所に追加されており、それらが冒険に華やかな彩りを添えてくれる。

なかでも勇者の母、そして父の"オルテガ"や彼の仲間だったキャラクターなどの行動や想いが描かれたシーンは必見で、しばしば涙腺に"つうこんのいちげき"を与えてくる(とくに、"オルテガのかぶと"を母に見せるシーンで、彼女のセリフや哀愁だだよう声色に感動して筆者は不覚にもガチ泣きした)。個人的には、「これらのシーンを観られただけでも、本作をプレイした価値は十分にあった」と自信をもって言える。

”オルテガのかぶと”を勇者の母親に見せるシーン
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

”オルテガのかぶと”を勇者の母親に見せたときの場面。

また、原作では"船"を入手した直後など、次はどこに行けばいいのかが分かりにくいタイミングもあったが、『ドラクエ3リメイク』では謎の声(その正体はメインストーリーの後半で明らかになる)が「これから あなたが 行うべきことは~」といったように、道を示してくれるようになった。ありがてぇ……。

謎の声が次の道を示してくれるシーン

© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

おもにファミコンやスーパーファミコンといったレトロゲームでは、イベント(会話など)の表現が比較的に淡々としがちである。それは原作も例外ではなかったのだが、『ドラクエ3リメイク』では前述のようなシーンの挿入により、RPGには欠かせない"冒険のワクワク感"をはじめとした"エモさ"が非常に色濃く醸成されていたように思う。

至れり尽くせりのシステム改良

「めちゃくちゃ遊びやすいゲーム」。それが筆者の、『ドラクエ3リメイク』に対する率直な印象だ。これは『ドラゴンクエスト』シリーズとしてはもちろん、ひとつのRPGとして見た場合にも同様である。その要因はズバリ、原作にはなかったシステム面の改良や、新要素の追加にある。

まず、ゲーム開始直後に"楽ちんプレイ"、"バッチリ冒険"、"いばらの道だぜ"の3種類から戦闘の難易度選択が可能になった。選んだ内容によって、"敵に与える&敵から受けるダメージ量"や"入手できる経験値・ゴールドの量"などに違いが生じる仕組みだ。

ゲーム開始時の難易度選択

© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

特筆すべきは"楽ちんプレイ"で、なんと"キャラクターが戦闘不能にならない(致死ダメージを受けてもHP1で生き残る)"という、RPGの常識を覆すレベルの仕様となっている。なお、難易度はプレイ中の設定でいつでも変更できるため、どうしても倒せない敵がいるときだけ活用することも可能。「プレイヤーに途中で投げ出されてしまうよりも、突破する手段を与えることで最後までプレイしてもらいたい」……そんな開発陣の意気込みを感じる。

一方で、ウデに覚えのあるプレイヤーは"いばらの道だぜ"で刺激的な冒険にチャレンジすることもできる。それぞれのプレイスタイルに合った遊びかたの提供は、時代に合った親切な作りだと言える。

レベルアップ画面
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

レベルアップ時にHPとMPが全回復するようになったのも、難易度の緩和にひと役買っている。

次に、町やダンジョンのマップを見られるようになった。人によっては「いやいや、そんなのいまどき当たり前じゃん!(笑)」と思うかもしれないが、かつてスーパーファミコン版をメインに遊んでいた筆者にとって、この変更はあまりにも大きい(なにせ、世界地図以外は見られなかったんやで……)。

ボタンひとつでダンジョンの構造まで丸見えで、「もう行き止まりで困らないじゃないですかヤダー!(歓喜の涙)」ってなもんである。さらにガイド機能を使えば、次の行き先まで表示してくれる親切っぷりにも泣ける(こちらは任意なのでオフにもできる)。

ダンジョン内でマップを開く
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

こんな複雑なマップでも、どこに進めばよいかが分かる!

そして、移動呪文"ルーラ"が最強になった。消費MPゼロ! 町だろうがダンジョンだろうが天井で頭ぶつけないで出られる! 最初は「やりすぎだろ!」と思ったが、堀井雄二氏に「じゃあ、まえの仕様に戻しましょうか?」と笑顔で言われたら、「ぐぬぬ……」と黙り込んでしまいそうだ。

余談だが、筆者が好きな『ドラゴンクエストX』でも、場所を問わず天井にぶつからない"ルーラ(ストーン)"が実装された。今後は"天井にぶつかる"というシリーズの"お約束"がひとつ減るのかもと思うと、それはちょっと寂しい気もする。

ダンジョン内で”リレミト”を使おうとしている
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

おなじみの"リレミト"は、"ルーラ"習得後にお役御免に(泣)。

各種コンテンツやバトルも大幅テコ入れ!

前項ではシステム面についてふれたが、コンテンツやバトルにもさまざまな変更や追加要素がある。なかでも目玉として挙げられるのは、さまざまなブレス攻撃やモンスターを使役して戦う能力をもった新職業"まもの使い"の追加だろうか。

"職業"による特性が攻略のカギを握る本作において、その選択肢がひとつでも増えることには、大きな意味がある。実際のところ、"まもの使い"は新職業ということもあってか優遇されている印象で、強敵の突破も含めて『ドラクエ3リメイク』をやり込むうえでは必須レベルと言ってもよいほど重要な存在だ。

筆者はその強さを事前に知っていたのであえてクリア後に解禁したが、これから『ドラクエ3リメイク』をプレイする人で、スムーズにゲームを進めたい場合は最初のパーティに"まもの使い"をひとりは入れることをオススメする。

”まもの使い”のステータス

© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

”まもの使い”の”やせいのかん”
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

"まもの使い"の"やせいのかん"を使うと、保護できるモンスターが現在地にいるかどうかを探知できる。なお、モンスターの保護には特定のアイテムが必要などの条件が決まっている場合もあるが、"まもの使い"がパーティにいればそれらの条件は無視できてとても便利だ。

また、"まもの使い"と関連の深いコンテンツに"モンスターバトルロード"がある。これは各地で保護した"はぐれモンスター"を出場させ、ライバルが繰り出してくるモンスターとの戦いを勝ち抜くことで、レアな装備やアイテムを入手できるというもの。

”モンスターバトルロード”で戦う
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

”モンスターバトルロード”。

原作にもモンスター同士が戦う"闘技場"は存在したが、そちらは勝つと思うモンスターにゴールドを賭け、予想が当たると賭けたときの倍率に応じた配当をもらえた。ただ、どちらも自分でモンスターに具体的なコマンドを指示できないのだが、「見ているとヒヤヒヤする」というナゾの緊張感や面白さは共通している("モンスターバトルロード"では、"さくせん"だけはプレイヤーが決められる)。

通常の戦闘に関わる部分では、特技の追加が大きいだろう。たとえば"戦士"や"武闘家"などは原作では単体攻撃の"たたかう"がメインの攻撃手段だったが、『ドラクエ3リメイク』では特技によって敵グループや全体に攻撃しやすくなり、戦略の幅が大きく増えた。

強力な装備でガチガチに身を固めた戦士(素早さ激遅)に"バイキルト"をかけ、敵にひたすら脳筋アタックするのが大好きな筆者のように、「自分の好きな職業を使いやすくなって嬉しかった」というプレイヤーは他にも大勢いるのではないかと思う。

”とくぎ”のステータス画面

© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

『ドラゴンクエスト』シリーズの醍醐味とも言える探索の部分では、"キラキラの場所"と"ひみつの場所"が新たに追加された。どちらもフィールドマップに存在する要素だが、前者はフィールドマップの特定の場所を調べるとそのままアイテムを入手できる。一方、後者は小さめのマップに入り、そのなかを探索してアイテムを入手したり、 "はぐれモンスター"を保護したりできるといった違いがある。

”キラキラの場所”を調べる
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

キラキラの場所。

いずれも便利な装備品や"つよさ(ステータス)"を上昇させる"たね"などを入手できるので、つい夢中になって探してしまう。『ドラクエ3リメイク』のフィールドマップは原作と比べてはるかに広大だが、少し移動すればすぐに何かしらを発見できるので、探索は苦になるどころか、むしろ楽しかった。

気になったところ

ここまで『ドラクエ3 リメイク』の魅力を存分にご紹介してきたが、気になった点もいくつかある。

まず、スーパーファミコン版にあった"すごろく"がなくなっていた点は、個人的にとても残念だった(同じように思った人も多いはず!?)。『ドラクエ3 リメイク』では原作にあった要素の多くはほとんどが残されてはいたのだが、闘技場しかりギャンブルを想起させる要素は実装が難しかったのかもしれない。これも時代の流れだろうか……。

つぎに、ゲームバランスの面。レベルアップ時の全回復は基本的にはありがたいものだが、とくにダンジョンでは緊張感が薄れてしまい、難易度を著しく下げる要因になっているとも感じた。これもプレイヤーの挫折を極力なくすための措置だと思われるが、今後の作品ではオン/オフの切り替えができると、より遊びの幅が増えるのでベターではなかろうか。

戦闘に関しては、敵に"ラリホー"や"マホトーン"などをかけて状態異常にしても、そのターン中にすぐ回復してしまうのがもどかしかった。敵の行動を1ターンは妨害できるが、すぐに回復されるくらいなら普通に攻撃したほうが……というのはRPGとしてなんだか寂しいので、せめて2~3ターンは維持してほしかったところだ(ボスの状態異常耐性が全体的に緩めだったのも背景にありそうだが)。このあたりの調整は、今後の作品に期待したい。

今後のHD-2D化にも超期待!

『ドラゴンクエスト』シリーズ大好きっ子の筆者から見て、『ドラクエ3 リメイク』は珠玉の一本だったと言える。なんといっても、メインストーリーにボイスやムービーが追加された点は非常に嬉しかった。

また、"キラキラの場所"や"ひみつの場所"といった、探索にワクワク感を与えてくれる要素の追加も、原作との差別化ができていて良かったと思う。やはり宝箱などを調べて強い装備品が出てきたときなどは、思わず「おぉっ!」と言ってしまう人は多いのではなかろうか(あとは序盤から"たね"系のアイテムをバンバン拾えて「これ大丈夫か?」と思ったりとか……)。

”やまびこのぼうし”を拾った

© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX © SUGIYAMA KOBO ℗ SUGIYAMA KOBO

ゲーム全体としては"楽ちんプレイ"の搭載など、あまりゲーム(RPG)に慣れていない人でもエンディングまでたどり着けるような仕組みが満載だった。筆者は"バッチリ冒険"で最初から最後までプレイしたが、終始サクサクと進められたので、原作が好きで未プレイの人には、ぜひとも『ドラクエ3 リメイク』を手にとってほしいと思う(あまり時間のない社会人や寝落ちしちゃう人でも、オートセーブがあるから安心だ!)。

そして2025年内には、世界観的にもつながりのある『ドラゴンクエストI&II』のHD-2D版が発売予定となっている。堀井雄二氏いわく、同作にはなにやら驚くような要素を盛り込んでいるとかで、いまからドキドキが止まらない!

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