すべては自分の選択次第、極限状態のバトル×ミステリー『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』は時間が溶ける面白さ!

100通りのマルチエンディングと個性豊かなキャラクターに大興奮!

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エンディングは100通り! 極限状態で迫られる数多の決断で、物語の展開ががらりと変わる。次々と押し寄せる絶望と、明かされていく真実にプレイする手が止まらない。戦略的に立ち回るバトルシステムも新鮮で面白い。

長所

  • 100種のエンディングでじょじょに明かされる衝撃の真実
  • 魅力的なキャラクターが多数登場
  • キャラクターの特性を活かし、戦略を巡らせるバトルシステム
  • 『ダンガンロンパ』シリーズファンにはたまらないUI・グラフィック

短所

  • 周回プレイを繰り返すとバトルにやや飽きがくる
  • 選択によっては、ごく一部拍子抜けなシナリオも見受けられる

注意
※本記事には一部ネタバレを含みます。ただし、物語の真相や核心には触れていません。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』バトル

ⒸAniplex, TooKyo Games

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』は、『ダンガンロンパ』シリーズの企画&シナリオを手掛けた小高和剛氏と、『極限脱出』シリーズのディレクターを務めた打越鋼太郎氏がタッグを組んで開発したアドベンチャーゲーム。発売まえから、"100通りのエンディングがある"という前代未聞さに、期待が高まっていた一作だ(筆者も例に漏れずそのひとりだった)。

このゲーム、本当にボリュームがすごいし面白すぎる。正直、この2〜3年でプレイしたゲームのなかで、もっとも傑作と言っても良いくらいに夢中になっている。多少の気になる点はあれども、それを確実に上回る魅力的なストーリーということもあり、プレイするのを迷っている人には全力でおすすめしたい。

物語は、突如現れた謎の襲撃者に日常を奪われ、"最終防衛学園"に集められた15人の少年少女たちが主軸になる。謎のロボット"SIREI"に伝えられた彼(彼女)らの目的は、迫りくる敵"侵校生"から学園を100日間守り抜き、人類を救うこと。各キャラクターが持つ異能の力"我駆力"を駆使しながら、100日間の防衛戦争を繰り広げる。

なお、ゲームは以下ふたつのパートを何度も繰り返しながら進んでいく。

  • "ADV(アドベンチャー)"パート

隠された真相を探し、ときにプレイヤー自身が決断しながら"物語"を進めていく。"自由行動"の時間では、プレゼントを作って各キャラクターとの絆を深めたり育成したり、また学園や周辺の"探索"をして素材回収したり……さまざまな行動を取ることができる。

  • "SRPG(シミュレーションRPG)"パート

異能の力やキャラクターの特性"特異科目"を駆使し、敵である"侵校生"と戦う。バトルシステムは一般的なターン制のシュミレーションバトルで、味方と侵校生が交互に行動し、定められた勝利条件を満たすとクリアとなる。勝利条件はシンプルに敵を倒すこともあれば、時間を稼ぐ、味方を救うなどさまざまだ。

そんな『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』だが、(2025年4月24日の)発売からおよそ1ヵ月経ったいま(原稿執筆時点)も、昼夜やり込みすぎて寝不足気味な筆者が、その魅力を解説していく。

100の選択、100の結末――全ルートが"真実"になる物語体験

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』分岐点

ⒸAniplex, TooKyo Games

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』のいちばんの魅力はなんと言っても、100種類のマルチエンディングストーリーだろう。本作の発売まえにこの構想が発表された際には、「本気でそんなゲームを作るのか!?」というゲームファンの声が多発したのも頷ける。

ようは、"100日間の防衛戦争"というベースとなる世界観は保ちつつ、プレイヤーの選択次第で、多種多様な100のエンディングを迎えることになる。

100通りのエンディングのなかには、開発者の小高さんの手掛けた"真エンディング"(いわゆるメインルート)がひとつだけ存在する。それ以外の99個は立て付け上は分岐であるものの、実際はどれが真エンディングなのかも迷うほどにすべてがしっかりと作り込まれている。

公式サイトのクリエイターズブログによると、本作のシナリオディレクターの打越さんは、小高さんから「シナリオ99個のエンディングには必ず意味を持たせてほしい」、「それらはオマケシナリオやスピンオフのように見えてはならない」、「すべてのルートが"真ルート"と呼ばれてもいいぐらいの濃密な中身になっていること」と、言われていたという。

まさにその言葉のとおり、単なる数埋めとしての小話的な物語展開はほとんど存在しない。なかには明らかに選択をミスるとすぐ終わってしまうものもあるけれど、すべてのルートが作り込まれており、制作陣の熱量と本気がひしひしと伝わってくる。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』シナリオ

ⒸAniplex, TooKyo Games

プレイヤーはゲーム中の各場面で"分岐点"(いわゆる選択肢)として決断を迫られる。誰かを殺す・殺さない、敵と戦う・逃げるといったものから、犯人だと思う人物をひとりだけ選んだり、焼き肉を食べるか・寿司を食べるか、のような小さな決断まで……分岐点の数は非常に多い。

この分岐点の決断ひとつで、物語が180度変わってしまう。残虐で救いようのない"血みどろ編"と呼ばれるエンディングもあれば、思わずずっこけてしまうようなエンディングの"コメディ編"、はたま各キャラクターとの恋愛エンディングなどもあったりとさまざまだ。なかには、プレイヤーの視点が大きく切り替わるようなアッと驚く展開も存在し、プレイしながら興奮が止まらなかった(その興奮をリアルに味わってほしいので詳細はここでは伏せておきます)。

そしていじらしいのは、ひとつのエンディングに辿り着いたからといって、真相にはほとんど辿り着けないということ。むしろ意図しない展開が多発し、「この発言の意図は?」、「この人を殺した犯人は?」、「黒幕の存在は?」と新たな謎が生まれてしまう。

こうして複雑に絡み合った謎や伏線は、まったく別のエンディングを見ることで、ひとつひとつ解き明かされていく(一見、まったく謎が解き明かされないように感じるエンディングも一部あるけれど)。だからこそ、ひとつのルートをクリアすると、満足できずまた別のルートも見たくなり、最初からまた次の100日を繰り返してしまう。こうしてつい時間が経つのを忘れるほどに、のめり込んでしまうのだ。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』シナリオ

ⒸAniplex, TooKyo Games

なお、上の写真のように、各分岐は、ボタンひとつでフローチャート図からいつでも確認することができる。自身がどんな選択をしたか、どの分岐を試していないかを簡単に確認できるのがありがたい。また、いつでも"分岐点"に戻って選択肢を選び直すことが可能だ。

やや煩わしい点があるとすれば、分岐(選択肢)を選び直したあとだろう。「この日のはじめから」or「選択肢の直前から」のいずれかを選ぶことができるが、その際、再度同じ、バトル演出やストーリーを閲覧しなければならない。バトルはスキップもできるが、毎回演出は挟まれてしまうので、ムービーがあるバトルなどではやはり少々手間に感じがちだ。早く真相に辿り着きたいからこそ、もどかしい気持ちになってしまう。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』キャラクター

また、本作には15名の学生をはじめとしたキャラクターたちが登場する。メンヘラガール、クール女子、プロレスラー、硬派なヤンキー、など非常に個性が豊かな面々だ。CV(キャラクターボイス)も佐倉綾音さんや緒方恵美さんなど、有名声優陣が勢揃いで耳にも贅沢すぎる。

さらに、プレイを繰り返すほどにキャラクターの違った側面が見えてくるのも面白い。たとえば義理人情に厚いがゆえ、あるルートでは非常に信頼できる仲間だったはずが、別のルートでは主人公の裏切りを疑い仲間割れを先導する人物になったりもする。また、一見狂気的な行動を取る血走ったキャラクターのツラい家庭環境が明かされる展開もある。

数多くのエンディングを見るほど、各キャラクターの深みが増していく。いわゆる"推しキャラクター"の存在ができるユーザーも多いようで、キャラクターに感情移入もできてしまうような作りになっている。

さらに、本作の楽曲やサウンドもプレイの興奮をさらに加速させている。とくに筆者が好きな曲は Paledusk(ペイルダスク)というバンドが歌う『RUMBLE』だ。特定のバトル場面でのみ流れる楽曲なのだが、曲調がまったく読めずに目まぐるしく変わっていくさまが、展開のわからない本作を象徴しているようでもある。もちろん、これ以外の楽曲も物語に彩りを添えているのでぜひプレイしながら耳を傾けてほしい。

仲間の死すら戦略に!? 犠牲が勝利のカギを握る、WAVEバトル

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』バトル

ⒸAniplex, TooKyo Games

ここまでストーリーおよびキャラクターの多様さや面白さを語ってきたが、バトルシステムも戦略性に満ちていてやり込みがいがある。本作は、一般的なターン制のシミュレーションバトルではあるが、複数の"WAVE"といった括りで区切られている(いわゆる波状攻撃)。

たとえば、ひとつ目のWAVEでは弱い敵が、ふたつ目のWAVEでは中程度の敵が、3つ目のWAVEでボス級の敵が、といった形で構成されている。WAVEが切り替わると、体力が全回復し、死んでいた仲間も復活する(使用したアイテムは戻らない)。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』必殺技
ⒸAniplex, TooKyo Games

川奈つばさの必殺技"キリングブースト"。

つまりWAVE内であればキャラクターが死んでも全滅さえしなければ問題なし。むしろキャラクターの死が好都合なこともある。なぜならキャラクターが死ぬたびに、敵に大きなダメージを与えることができる必殺技ゲージ"VOLTAGE"が大幅に溜まるからだ。"VOLTAGE"が満杯になると各キャラごとにさまざまな必殺技を放つことができる。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』特異科目

ⒸAniplex, TooKyo Games

また戦いのキーになってくるのは、各キャラクターの特性である"特異科目"を戦略的に使うこと。"特異科目"は、"状態異常の敵に対して攻撃力が上がる"、"疲労状態で技の内容が変化する"などさまざまで、状況によって使いどころを考えるのが面白い。

さらにはシナリオによって、キャラクターがその場にいなかったり死んでいたりすることもある。つまり、その時々のバトルに参加できるキャラクターが異なるのだ。またキャラクターの配置もランダムなので、毎回ドキドキする。サポート系のキャラクターだけが1ヵ所に配置されてしまった時などは、やや焦ってしまうことも。

だからこそ、1名だけを強化するのではなく、満遍なく育成をする必要がある。そして状況を見つつ、手持ちのキャラクターやアイテムを活かして臨機応変かつ戦略的に戦っていく

100日間を何度も繰り返すので、バトル回数は正直多い。都度配置やキャラクターは変わると言えど、後半になると新しいキャラクターが登場するなどの新規要素があるわけでもないので、やや飽きは来てしまう。ただバトルごとにしっかりと思考を巡らす必要があるので、完全に作業になってしまうことはない。

何よりも、前述したシナリオの面白さはプレイするほどに加速していくので、若干のバトルの退屈さはシナリオの面白さが上回ってくれるはずだ。

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』キャラクター

ⒸAniplex, TooKyo Games

また、注意しておきたいのは、キャラクターの育成は"ADV(アドベンチャー)"パート内の"自由行動"セクションでしかできないということだ。バトルまえやバトル中には一切できない。そのため、"ADV(アドベンチャー)"パートが、なかったり少なかったりするルートだった場合は、育成ができないまま戦うという厳しい状況になる。先の展開はなかなか読めないので、"自由行動時間"が発生したら、なるべくキャラクターの育成を進めておくことをおすすめする。

一方、一度育成したキャラクターのステータスは、別のルートでも引き継がれる。分岐を選び直したからといって、ステータスがリセットされてしまうことはない。そのため繰り返しプレイすればするほど、キャラクターが強化されていき、バトルもやりやすくなっていくのは便利だ。

"あの感覚"が甦る――『ダンガンロンパ』ファン垂涎の新世界

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』キャラクター
ⒸAniplex, TooKyo Games

謎のロボットのSIREI(写真左)と、主人公の澄野(写真右)。

学園という閉鎖空間のなかで、次々と押し寄せる絶望。そのなかで少年少女が、お互いに裏切ったり、仲間のために命をかけたり……と、極限の選択を迫られていく。この残酷な世界観は、突如学園に集められた少年少女たちが"コロシアイ"をする『ダンガンロンパ』と似通った醍醐味を感じる。

UI(ユーザーインターフェース)やキャラクターのデザインのどれもが、『ダンガンロンパ』シリーズを彷彿とさせるのがファンとしては嬉しい。謎のロボットのSIREIは可愛い見た目ながら、謎に包まれており時に残虐な一面も見せる。そんな姿には、『ダンガンロンパ』のモノクマを重ねる人も多いだろう。

『ダンガンロンパ』キャラクター
©Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

『ダンガンロンパ』のキャラクターたち。

キャラクターの立ち絵も、綺麗ではありつつも派手すぎず、どこか『ダンガンロンパ』らしさを感じられる。不穏な雰囲気のシーンのBGMや、真相に近づいた際の気分が高まるような効果音からも「なんか『ダンガンロンパ』っぽい……!」という雰囲気を都度感じられる。

もちろん、本作は『ダンガンロンパ』とは直接関係のない物語なので、本作から始める人も十分に楽しむことができるだろう。

100日間の絶望を超えて、その結末に、きっと心が震える

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』シナリオ

ⒸAniplex, TooKyo Games

100通りのエンディング、戦略的なバトルシステムと大ボリュームな本作。エンディングすべてを制覇するには100時間では終わらないだろう。制作陣だけでなくプレイヤーも命懸けで向き合うような作品になっている。

できればストーリーに関する事前情報はなるべく入れず、ぜひ手に取ってみてほしい。極限と絶望の100日を繰り返しながら、真エンディングに辿り着いた時、心が震えるはずだ。


メモ
※あなたの好きなエンディングがあれば、エンディングナンバーを本記事の下部あるコメント欄にどうぞ! ちなみに筆者の好きなエンディングは、No.072です(ネタバレ防止のためにNo. のみの記載でお願いします)。
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