重要なポイント
昨今、『サイレントヒル2』をはじめ『クロックタワー』や『かまいたちの夜』など名作ホラーゲームのリメイク版やリマスター版がリリースされている。各作品は、現代のゲーム性やグラフィックに合わせた進化を遂げており、新旧プレイヤーが楽しめる工夫が詰め込まれている。これを機に、伝説的なホラー作品に触れてみるのはいかがだろうか?
暑い真夏の夜に遊ぶのも良いですが、ちょっと寂しくて不安な気分になる秋から冬にかけてが、じつはホラーゲームを遊ぶのにぴったりな季節なのではないか……と筆者は考えています。
本記事では、昨今、現行機でリメイクやリマスター、移植が行われたホラーゲームの伝説的名作をピックアップ。オリジナル版と、復刻版(リメイク版やリマスター版)の違いなどもあわせて解説します。
なお、ホラーゲームは数々の名作を生んでいるジャンルであり、何十年もまえのゲームであってもいまだに語り草となっている作品も少なくありません。アドベンチャー系からサバイバル系まで、幅広いジャンルのホラーゲームを現行機でお手軽にプレイしてみませんか?
サイコロジカルホラーゲームの金字塔『サイレントヒル2』
(オリジナル版の発売は2001年)
『サイレントヒル2』は、3年まえに亡くなった妻から手紙が届いたことをきっかけに、主人公ジェイムス・サンダーランドが妻と旅した思い出の場所に再度訪れるというストーリーの作品。サバイバルホラーの定番である『バイオハザード』はゾンビによるパニックを描いたホラーですが、いまでも多くのゲームが影響を受け続けるこの『サイレントヒル2』は、少し違う怖さでアプローチしました。
それは、人間の心理や狂気を描いたサイコロジカルなホラーであるという部分です。
化け物だらけの街や、そこに散りばめられた断片的なメモなど、さまざまな角度から描かれる物語は恐ろしくも地に足のついた、どこか現実味を感じる恐怖を内包しています。また、先が見通せないほど深い霧に包まれ、開けた屋外なのに先に進むのが不安になるフィールドや、一度みたら忘れられない異形のクリーチャーなども特徴的です。
プレイステーション5およびPCで発売されたリメイク版は、『Layers of Fear(レイヤーズ・オブ・フィアー)』などで知られるポーランドのゲームスタジオ、Bloober Teamによってほぼ完全に作り直されています。グラフィックは現代ゲームの最高峰といえるほどリアルに進化していますが、暗闇はしっかり暗く描くなど画面の"魅せ"かたによる恐怖感は損なっていません。とくに、オリジナル版よりもキャラクターの表情変化がより精細になったことで、大きくストーリーを変えずとも主人公を含む人物描写の深みもさらに増しています。
また、プレイ視点や戦闘システムの変更も大きなポイントです。原作は斜め上の背後から見下ろしたようなプレイ視点でしたが、リメイクにあたっては現代的な肩越しTPS視点に変更。加えて、原作では質素なシステムだった戦闘は、肩越し視点になったことで"狙って撃つ"という遊びが強化されたほか、ドッジ(回避)の追加によって戦いやすさも増しています。
戦いやすくなったからといって恐怖感が損なわれたということはなく、敵が近くにいるときは不快なノイズが大音量で鳴り響いたりと、プレイヤーを不安にさせる要素が満載です。
スラッシャー映画を体験するような『Until Dawn -惨劇の山荘-』
(オリジナル版の発売は2015年)
"パリピ"と呼ばれるような若者8人組が、山荘に訪れるところから始まるスラッシャーホラーアドベンチャー。プレイヤーはさまざまな場面で選択を迫られ、その結果がバタフライエフェクトのようにストーリーの分岐に影響を及ぼします。オリジナル版を手掛けたイギリスのゲーム開発会社、Supermassive Gamesはリアルなグラフィックで映画のようなアドベンチャーゲームを得意とするスタジオで、本作もその例に漏れません。
オリジナル版の時点でグラフィックは綺麗でしたが、プレイステーション5およびPCで発売されたリメイク版ではさらに細部まで作り込まれたほか、シーンの再編集によってより映画を自分の手で動かしているような体験が味わえます。固定カメラだけでなく3人称視点も追加されたことで、残虐なシーンもド迫力です。
日本地域のプレイヤーにとっては、さらなる付加価値もあります。オリジナル版(日本版)は残虐シーンに規制がかかっていたのですが、その規制方法が画面が暗転するだけだったため、「暗転ドーン!」などと揶揄され、一部批判的な声もありました。しかし今回は、海外版と同等の無規制というわけにはいきませんでしたが、カメラアングルを調整するという方法で対処。突然没入感を奪われるようなぶつ切り感はなくなり、それだけでもリメイク版をプレイする意義が感じられるでしょう。
ハサミ男から逃げ続ける初期サバイバルホラー『クロックタワー・リワインド』
(オリジナル版の発売は1995年)
本作は、謎の洋館に訪れた主人公ジェニファー・シンプソンが、大きなハサミを持ったシザーマンから逃げるサバイバルホラーゲームです。この手のサバイバルホラーはおもに’90年代後半から盛り上がりを見せたジャンルで、とくに初代『バイオハザード』(1996年)の爆発的なヒットが大きな要因でもあります。しかし『バイオハザード』よりもまえに発売された『クロックタワー』は、スーパーファミコンでその恐怖を実現していました。
本作が"怖い"理由のひとつに、操作が思い通りにいかないことが挙げられます。カーソルを動かすと指定した方向に歩き続けるという独特のシステムで、また主人公ジェニファー・シンプソンが戦闘能力を持たないこともあって、なかなか思い通りに逃げることができないのです。さらにグロテスクで強烈なイベントや、恐ろしいエンディングも話題となった作品です。
そんな『クロックタワー』のリバイバル作となる『クロックタワー・リワインド』はスーパーファミコン版を完全移植しているほか、のちに発売されたプレイステーション版の要素を取り入れ、遊びやすくなったモードも搭載。ほかにも多言語対応やオリジナルクリエイターへのインタビューやコミックなども収録されています。コアなファンが多い作品でしたが、復刻によって、歴史に残る名作を全世界の人がより深く楽しめるのは素晴らしいポイントです。
全員が犯人に見えて疑心暗鬼になる『かまいたちの夜×3』
(オリジナル版の発売は2006年)
スーパーファミコンのホラーゲームといえば、『かまいたちの夜』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。『かまいたちの夜×3(トリプル)』は、『かまいたちの夜』、『かまいたちの夜2』のメインストーリー、そしてシリーズ3作目にあたる完結編の三部作がすべて収録されています。
本シリーズの特徴は、吹雪が吹き荒れるペンションや絶海の孤島など、クローズドサークルをテーマにした殺人劇。次に誰が殺されるかわからないという恐怖感はもとより、最初はほんわかしていたはずの雰囲気がじょじょににピリピリしてくる空気感にもドキドキさせられます。
収録しているシナリオとしては過去にプレイステーション2で発売されていたものと同じ内容となります。追加要素としては、文字デザインをスーパーファミコン風のドットフォントに変更できる機能が搭載。『かまいたちの夜』といえばドットフォントに思い入れのある人も多いと思いますが、昔を懐かしみながら楽しめるのが特徴のひとつです。加えて、耳に残る名曲揃いの楽曲70曲以上を自由に聴けるサウンドプレイヤーも収録。怖かったシーンも、ニヤリとしたシーンもBGMをかければ思い出が蘇ります。
臨場感ある怖さが魅力の『SIREN』、恐竜を題材にしたパニックホラー『ディノクライシス』
『SIREN』(オリジナル版の発売は2003年)/『ディノクライシス』(オリジナル版の発売は1999年)
最後に紹介するのは、PlayStation Plusのプレミアムプランにて2024年10月より遊べるようになった名作『SIREN』と『ディノクライシス』です。
『SIREN』は、初代『サイレントヒル』のクリエイターがソニー・コンピュータエンタテインメント(現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に移籍して開発したホラーアクション。他人の死角と聴覚を駆使する"視界ジャック"と呼ばれる能力を使い、ヒントを得たり敵の位置を掴んだりして進まなければなりません。舞台は寂れた日本の村であり、どこか少し親近感も感じられる場所で恐ろしい化け物が徘徊している……という恐怖と、先が気になるストーリーはいまでも人気です。
そして『ディノクライシス』は、『バイオハザード』に次ぐカプコンのホラーゲーム。基本的なシステムは初期『バイオハザード』と同じですが、敵はゾンビではなく恐竜に。巨大な恐竜が大暴れして襲いかかってくるさまは、ゾンビとはまた違ったパニックホラーとしてファンを生んでいます。
PlayStation Plusのクラシックカタログタイトルは、過去の作品をプレイステーション4/プレイステーション5用のエミュレーターで動作させるという仕組みになっており、付加機能としてゲームの巻き戻しや、いつでもセーブ・ロードが可能。この機能は難度の高いこれら2作と相性が良く、先に進むのが少し不安なときにセーブしておいたり、思ったより弾薬を使いすぎてしまった……というようなときに巻き戻してやり直したりといった使いかたができます。もちろんオリジナル版どおりに巻き戻しナシで挑むのも良いですが、快適に恐怖を体験できるのも捨てがたいです!
本記事で挙げたゲームはいずれも、プレイステーション5やニンテンドースイッチ(そしてPC)といった現行ゲーム環境で復刻しプレイできるようになったものばかり。多くのゲーマーが折に触れて語っていたあの伝説のホラーゲーム、いまこそあなたもプレイしてみませんか?