重要なポイント
プラットフォーム・ゲームとは、さまざまなオブジェクトを文字通りのプラットフォーム(土台・基盤・場)として利用し、世界を移動するゲームのことです。これらの地形要素を冒険して、右や左、上や下など他のエリアに到達します。プラットフォームとなるものは、立ったり、歩いたり、ジャンプできるものであれば何でも構いません。
以下は、プラットフォーム・ゲームの例です。
- 『ドンキーコング』(1981年)
- 『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)
- 『アレックスキッドのミラクルワールド』(1986年)
- 『バグ!』(1995年)
- 『スーパーマリオ64』(1996年)
- 『ラチェット&クランク』(2002年)
- 『スーパーミートボーイ』(2010年)
- 『セレステ』(2018年)
- 『ブラスフェマス2』(2023年)
ゲームにはさまざまなジャンルがありますが、そのなかでもとくに普及しているのがプラットフォーム・ゲーム(プラットフォーマーとも呼ばれることも多い)です。このジャンルに属するビデオゲームは、かつてはこの分類名で知られていたわけではありません。アクション満載のタイトルをどのように分類するか、開発者が長年試行錯誤した結果、この特定の用語が生まれました。
プラットフォーム・ゲームとは?
現在のプラットフォーム・ゲームの定義は、プレイヤーが走ったり、ジャンプしたり、さまざまな種類のプラットフォーム(土台・基盤・場)を渡って目標に到達することを強調したビデオゲームのことを指します。ここで言うプラットフォームは、プレイヤーがその上を移動できるものであれば何でも構いません。浮いているレンガ、丘の頂上、クジラの背中など、あらゆるものがゲーム内のプラットフォームとして使われ、プレイヤーがそれらを渡って進んでいきます。どのようなものでもキャラクターが、その上を歩けるのであれば、それは技術的にはプラットフォームです!
クラシックなプラットフォーム・ゲームのなかでももっとも有名なのは、『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)でしょう。この伝説的なタイトルでは、主人公のマリオが複雑で危険なエリアを冒険しながら、ピーチ姫(当時、海外では"ピーチ姫”ではなく"キノコ姫"と呼ばれていました)を救うために旅をします。マリオは、この壮大な2次元の冒険のなかで、多くの物体や敵の上を歩いたり、ダッシュしたり、ジャンプしたりしてゴールにたどり着きます。
『スーパーマリオブラザーズ』は、(のちに言葉が生まれることになる)プラットフォーム・ゲームというジャンルを定義しただけでなく、現代のゲーム文化の祖とも言える存在です。実際、プラットフォーム・ゲームは1980年代に人気が爆発し、初期のビデオゲームのなかでも広く普及したジャンルのひとつです。プラットフォーム・ゲームが台頭する以前は、デジタル版のボードゲーム(将棋やオセロなど)をはじめ、『スペースインベーダー』(1978年)や『アステロイド』(1979年)のような固定視点のシューティングゲームが主流でした。
しかし、当時は"プラットフォーム・ゲーム"という用語はまだ存在しておらず、開発者たちはこのようなタイトルをさまざまな説明的な名前で分類していました。なかには理にかなったものもありましたが、ほとんどの名称は、現在使われている"プラットフォーム・ゲーム"という用語よりも劣っていました(あるいは"アクションゲーム"という言葉でひとくくりにされていました)。
かつてプラットフォーム・ゲームは何と呼ばれていたか
プラットフォーム・ゲームの歴史は『スーパーマリオブラザーズ』以前に遡りますが、そのなかには、いまではおなじみのマリオ(当時は"ジャンプマン"などと呼ばれていました)が登場するゲームもありました。1981年にリリースされた『ドンキーコング』は、あとに続くプラットフォーム・ゲームの道を切り開いた最初期の作品のひとつです。
そこから1980年代後半まで、目的地に到達するために走ったり、ジャンプしたり、登ったりするゲームを表す用語は非常に多岐にわたっていました。
・過去に使われていた用語リスト
- 「走る/ジャンプする/登るゲーム」(『ドンキーコング』の開発時に宮本茂氏が使用)
- 「アスレチックゲーム」(『スーパーマリオブラザーズ』の開発時に宮本茂氏が使用)
- 「クライミングゲーム」(スティーブ・ブルームの『ビデオインベーダー』[1982]、エレクトロニックゲームズ誌第1巻第11号[1983]、TVゲーマーマガジンの1983年3月号で使用)
- 「ラダーゲーム」(クリエイティブコンピューターマガジン第8巻第12号[1982]、ビデオゲームプレイヤー誌第2巻第1号[1983]で使用)
・用語が使われ始めた時期
"プラットフォーム・ゲーム"という用語が登場する以前、こうした作品は"プラットフォーム"と呼ばれ始めました。この傾向は1989年ごろから、人気のあるゲーム雑誌で"プラットフォーム"という言葉が他の言葉と組み合わされて使用されるようになったことで確認できます。
その代表例のひとつが、雑誌『Complete Guide to Consoles』(書籍内では年が記載されていませんが、1989年と推測)の74ページで、執筆者が『スーパーマリオブラザーズ』を"プラットフォーム/アーケードアドベンチャー"と表現していることです。
また、1989年の『The Games Machine』第19号の24ページでは、執筆者が『ストライダー飛竜』(1989年)を"プラットフォームとはしごのゲーム"と呼んでいます。
次の点は私たちの推測に過ぎませんが、"プラットフォーム・ゲーム"という用語が1990年代初頭にかけてますます一般化するなかで、利便性のために"プラットフォーマー"という言葉に短縮されたのではないかと思われます。とくに英語話者はフレーズを短くするのが好きなので、『ドンキーコング』や『スーパーマリオブラザーズ』のようなゲームを指す言葉として、"プラットフォーマー"が支配的な言葉になったと考えるのは理にかなっています。ここで結論に飛躍してしまったことをご容赦いただければ幸いです。
プラットフォーム・ゲームの歴史
古くは、プラットフォーム・ゲームは1画面のゲームでした。これは、アーケード筐体でよく見られるタイプのものです。例を挙げると、『ドンキーコング』がこの形式の代表的なゲームです。
ジャンプマン(マリオ)がはじごを上り、樽を飛び越える際、彼は画面から出ることはありません。実際、画面内のすべてのものがこの1枚のデジタルグラフィック上で動きます。しかし、このジャンルはそのまま変わらずに止まることはありませんでした。
・横スクロール型プラットフォーム・ゲーム
このジャンルの進化の次の段階は、横スクロール型プラットフォーム・ゲームです。技術の進歩に伴い、アーケード筐体、そして家庭用ゲーム機が、以前よりもはるかに多くのデータを扱えるようになりました。ゲーム業界はこれをフルに活用し、プレイヤーに広大な世界を探索させる驚異的なタイトルを生み出しました。
セガの『アレックスキッドのミラクルワールド』(1986年)は、従来のプラットフォーム・ゲームに見られる楽しく充実したアスレチック性を保ちながら、ゲームの世界をさらに遠くまで探索できる革新的な進化を示しました。
この新たに得た自由度は、世界中のゲームファンに大きな反響を呼び、プラットフォーム・ゲームにおける新しいトレンドの始まりとなりました。このトレンドは、その後も長きにわたり、つねに進化と新しい発展を遂げていきました。
もちろん『スーパーマリオブラザーズ』もこのカテゴリに入ります。しかし、ここでは『アレックスキッド』にも少し注目してみてください。彼のゲームは振り返ると本当に素晴らしい作品だからです。インターネットアーカイブでぜひ自分でプレイしてみてください。他にも、横スクロール型プラットフォーム・ゲームの代表作として『ムーンパトロール』(1982年)、『メトロイド』(1986年)、『プリンス・オブ・ペルシャ』(1989年)などがあります。
・2.5Dプラットフォーム・ゲーム
1990年代、世界に革新的な進化がもたらされました。それは三次元(3D)グラフィックの登場です。もはやメディア愛好者たちは平面の方向に縛られることなく、より深い没入感を得るために3次元へと進むことが可能になりました。もちろん、ビデオゲーム業界はこのアイデアをすぐに採用し、急速に発展を遂げました。新しい次元を取り入れたプラットフォーム・ゲームは次第に増え、2Dタイプのものは少しずつ衰退していきました。ただし、近年のインディーゲーム(『ブラスフェマス2』など)の台頭により、再び注目を集めています。
真の3Dゲームの登場まえには、深みのある視覚効果を与えながらも、技術的には2Dに留まっている"2.5D"ゲームが存在しました。画面上にデジタルで表示されるものは、グラフィックの種類に関わらず、すべて2Dです。しかし、視覚の工夫やレベルデザインを活用して、2.5Dゲームの開発者たちは、3Dの世界に完全には踏み込まずに、新たな領域を切り開きました。その初期の例として、『Bug!』(1995年)が挙げられます。
『Bug!』では、プレイヤーは角度のついた道を前後左右に進んでいきます。前後の移動感覚があるにもかかわらず、カメラアングルは固定されたままです。プレイヤーが上下左右に動ける点は、『スーパーマリオブラザーズ』や『アレックスキッドのミラクルワールド』と同様ですが、『Bug!』では上下の動きが異なる水平ルートにアクセスする手段となっています。この視点の工夫が、『Bug!』を当時の他の多くの競合タイトルと一線を画する要素となっていました。
・3Dプラットフォーム・ゲーム
真の3Dプラットフォーム・ゲームとして、マリオの冒険を振り返ることができます。赤い帽子をかぶったマリオは、『スーパーマリオ64』(1996年)で3次元の世界に足を踏み入れました。この新たな深みのある世界で初めてマリオを操作できるようになり、自由に視点を動かせるカメラ、驚異的な水平移動など、多くの革新がもたらされました。
ゲーム業界に登場して以来、このタイプのゲームはじょじょに人気を高めていきました。
プラットフォーム・ゲームは、私たち人間が持つ探求心を捉え、没入感のあるビデオゲームを通じて冒険心をかき立ててきました。左から右へ走り、新たな高さを目指して跳躍し、栄光を目指して突き進むプラットフォーム・ゲームは、今日私たちが知るゲームの典型的なジャンルのひとつなのです。