
重要なポイント
- 『ファイナルファンタジーX-2』のシンラ君は、異界からエネルギーを抽出することについて仮説を立てており、これは『ファイナルファンタジーVII』における神羅カンパニーの魔晄利用と密接に似ている。
- 開発者の野島一成氏は、シンラ君を神羅カンパニー創設者の祖先として想定していたと発言しているが、公式の正史にはなっていない。
- 『ファイナルファンタジーVIIリメイク』に登場する仮面の人物を含むゲーム内の手がかりが関連性を示唆しているが、タイムラインには不明な部分が多く、さらなる考察の余地が残されている。
長年にわたり、『ファイナルファンタジー』シリーズのファンは、『ファイナルファンタジーX-2』(以下、『FFX-2』)の"シンラ君"という若きアルベド族の天才が、『ファイナルファンタジーVII』(以下『FFVII』)の神羅電気動力株式会社と関係しているのではないかと推測してきた。彼の異界からエネルギーを抽出するという発想は、魔晄と驚くほど似ており、彼の子孫が悪名高い神羅カンパニーを設立したのではないかという説を生んでいる。
開発者のコメント、ゲーム内のヒント、さらには『FFVII リメイク』のイースターエッグまで、この説を裏付ける要素は数多く存在する。公式には確認されていないものの、これらの関連性を無視するのは難しい。はたして『FFX-2』は本当に『FFVII』の遠い前日譚なのか、その証拠を詳しく見ていこう。
この説の起源について
『FFX-2』では、プレイヤーはカモメ団の一員である若きアルベド族の少年、シンラ君と出会う。シンラ君は年齢に似合わぬ卓越した技術者であり、魂が宿る異界の研究に深い関心を持っている。ゲーム内で彼は、異界には強大なエネルギー源が存在すると推測し、十分な研究が進めば、それを持続可能なエネルギーとして利用できる可能性があると提案する。しかし、彼はその技術が確立されるまでには何世代もかかるだろうとも認めている。
この発言をきっかけに、ファンはシンラ君の構想と『FFVII』の神羅電気動力株式会社を結びつけた。この企業は惑星のライフストリームから魔晄としてエネルギーを抽出することで知られている。シンラ君の子孫が彼の研究を引き継ぎ、異なる世界や時代で最終的に神羅カンパニーを設立したのではないか、という説は『ファイナルファンタジー』コミュニティ内で広く議論されるようになった。
『ファイナルファンタジー』シリーズは、ゲーム間でイースターエッグやオマージュを取り入れることが多いが、この説はとくに注目された。それは単なる小ネタではなく、『FFX-2』と『FFVII』が直接つながる物語としての可能性を示唆していたからだ。この説によれば、両者は同じ時間軸に属し、『FFX-2』は『FFVII』の遠い前日譚となるのかもしれない。
野島一成氏の発言
『FFX-2』と『FFVII』のつながりを示すもっとも有力な証拠は、ガイドブック『FFX-2 アルティマニア』に記載された、シナリオライター野島一成氏のコメントにある。
この本のなかで、野島一成氏はシンラ君を神羅電気動力株式会社の創設者たちの祖先として想定していたことを明かしている。彼によると、『FFX-2』の物語のあと、シンラ君はリンから資金援助を受け、異界からエネルギーを抽出する方法の研究を開始したという。
しかし、彼はこのエネルギーを完全に活用するための技術は、一世代で確立できるものではないとも述べている。その代わりに、シンラ君の子孫が何世代にもわたって彼の研究を引き継ぎ、やがて宇宙旅行が可能になった際に別の惑星で神羅カンパニーを設立する未来を想定していたのだ。
この説明は、両作品の直接的なつながりを示唆しているものの、野島氏はこれはあくまで個人的な解釈であり、ゲーム本編で明確に設定されたものではないとも明言している。つまり、彼自身はこの関連性を可能性として捉えていたが、公式の『ファイナルファンタジー』の正史として確定されたものではないということだ。
他の開発者の見解
野島氏だけが『FFX-2』と『FFVII』の類似点を認めた開発者ではない。『FFX-2』の主要開発者のひとりである鳥山求氏は、特定のシーンが『FFVII』の場面を彷彿とさせるように演出されたと語っている。たとえば、ベベル・隠された迷宮の最初のシーンは、ミッドガルのオープニングショットを意図的に想起させるようにデザインされたという。
さらに、『FFVII リメイク』のプロデューサーである北瀬佳範氏も、インタビューでこの説についてコメントしている。彼は完全に肯定したわけではないが、『FFX-2』のシンラ君というキャラクターが『FFVII』の神羅カンパニーと「もしかすると」関係があるかもしれないと認めた。
『FFX-2』におけるつながりのヒント
『FFX-2』では、シンラ君が発したある重要な発言が、このゲームと『FFVII』を結びつける説を生み出した。ストーリーレベル5において、プレイヤーが異界を訪れた後にセルシウスでシンラ君と会話すると、彼は次のように語る。
「調べれば調べるほど強烈 無限のエネルギーが渦巻いてるし」「この星に流れる命の力……かな」「うまくやれば そのエネルギーを引き出して使えそうだし」「実用化は何世代も先」
これら発言は、異界のエネルギーが電力源として利用できる可能性を示唆しており、これは『FFVII』における神羅カンパニーが惑星のライフストリームから魔晄を抽出する仕組みとよく似ている。しかし、シンラ君自身は、この技術を実用化するには自分の世代では到底不可能であり、何世代もかかるだろうと認めている。そのため、彼の子孫が最終的に成功する可能性があるという考えが生まれた。
もうひとつの重要な要素が、アルベド族の実業家リンの存在だ。彼は『FFX-2』のなかでさまざまな技術プロジェクトに資金を提供しており、シンラ君の研究にも多額の資金援助を行っていることが示唆されている。
さらに、この考えを裏付ける要素として、『FFX-2 インターナショナル+ラストミッション』がある。この作品は野島一成氏の『アルティマニア』インタビュー後に発売されたものであり、『FFX-2』の物語から3ヵ月後、リュックが「シンラ君はもうカモメ団にいない」と語る。その理由として、彼がリンとともに研究を進めるために旅立ったことが明かされる。これはシンラ君の研究が『FFX-2』のあとも続いており、より大きなものの礎を築いている可能性をさらに強調している。
『FFVII リメイク』におけるシンラ君のマスク(イースターエッグ)
『FFX-2』と『FFVII』をつなぐもっとも興味深い証拠のひとつが、『FFVII リメイク』に登場する。神羅カンパニーの内部には、神羅の社員たちが写った古い写真が飾られている。そのなかでとくに目を引くのは、ひとりの人物が『FFX-2』のシンラ君が着用していたものとほぼ同じデザインのマスクをかぶっていることだ。
この発見は、長年両作品のつながりを考察してきたファンのあいだで瞬く間に話題となった。その類似性は偶然とは思えないほど具体的であり、スクウェア・エニックスがこの説を暗に認めたのではないかと考える人も多かった。
のちに共同ディレクターの浜口直樹氏がこの件についてインタビューで言及し、この画像が「憶測を呼ぶため」に意図的に含まれたものであると述べている。彼はさらに、「これは『FFX-2』のシンラ君が成長した姿を示している可能性もあるが、単に似たマスクを着けた社員が敬意を表しているだけかもしれない」とも語っている。
この発言により、このつながりは解釈次第という形で残された。一方では、単なるイースターエッグとして、ファンの考察を認めるために盛り込まれたものかもしれない。しかしもう一方で、開発者たちが『FFVII』の世界をより細かく再構築した本作において、ここまで特定のビジュアルを意図的に取り入れたという事実は、何かより深い意味がある可能性を示唆しているとも考えられる。
超常的なつながり:ライフストリームと幻光虫
さらに、両作品を結びつける強力な要素のひとつに、それぞれの作品における生命エネルギーの概念がある。『FFX』では、異界が死者の魂が宿る場所として描かれている。一方、『FFVII』では、ライフストリームが同様の役割を果たし、惑星の生命とエネルギーの源となっている。どちらも生命の循環として機能し、生物が死ぬとその本質がこのエネルギー源へと還り、やがて新たな生命を生み出す。
両作品のシナリオライターである野島一成氏は、『FFX』に登場する幻光虫を『FFVII』のライフストリームと本質的に同じものと考えていると発言している。これは、両作品が同じ超常的な法則に基づいていることを示唆し、両者が同じ世界観を共有している可能性を強める要素となっている。
さらに、この関連性を裏付ける証拠として、『ダージュ オブ ケルベロス』や『アドベントチルドレン』における特定のキャラクターの死の描写がある。『ダージュ オブ ケルベロス』では、グリモア・ヴァレンタインの身体が『FFX』の幻光虫が散る様子とほぼ同じように消滅する。また、『アドベントチルドレン』では、カダージュがライフストリームに直接溶け込むのではなく、光るエネルギーとなって消えていく。この描写は、異界送りの儀式と視覚的に非常に似ている。
物語の空白と未解決の疑問
『FFX-2』と『FFVII』をつなぐこの説は非常に興味深いが、物語にはいくつかの説明されていない空白が残っている。そのなかでも最大の謎のひとつは、シンラ君の子孫、あるいは少なくとも彼の研究が、どのようにしてスピラから『FFVII』の世界へと伝わったのかという点だ。
野島一成氏は、シンラ君の研究が完成するには何世代もかかり、やがて宇宙旅行が可能になった際に「別の惑星」で神羅カンパニーが設立されたと示唆している。しかし、この移住がどのように、いつ行われたのかについては、具体的な詳細が一切語られていない。スピラの人々は高度な宇宙航行技術を発展させ、新たな世界に定住したのだろうか? それとも、ポータルのような異星間移動の手段を発見したのか? 公式な説明がないため、この部分の説は完全に推測の域を出ない。
もうひとつの疑問は、スピラの人々が『FFVII』に登場する古代種セトラと融合した可能性があるかどうかだ。もしシンラ君の一族が『FFVII』の物語が始まる遥か以前にこの惑星へ到達していたとすれば、彼らの技術が文明に影響を与え、最終的に神羅カンパニーの設立につながった可能性がある。あるいは、彼らがセトラと共存し、時間とともに新たな文化へと進化したのかもしれない。
最後に、『FFX-2』のシンラ君が直接的に神羅カンパニーの創設者の祖先なのか、それとも彼の研究が単に後世の技術発展の基礎となったのか、という問題もある。彼のアイデアや実験が何世紀にもわたって受け継がれ、それが最終的に神羅カンパニーの誕生へとつながった可能性も考えられる。
しかし、ゲーム内で確定したタイムラインや歴史的記録が存在しないため、これらの疑問はすべて未解決のままである。