NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)ってどういう意味? 単語の成り立ちから流行りのミームまでを解説

"脇役"をどう扱うかでゲームの魅力が変わる

ライター /

重要なポイント

NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)とは、プレイヤーが操作しないキャラクターのこと。物語に絡んでくることがほとんどない”受動的NPC”を筆頭に、戦闘をともにする"コンパニオン"、深くストーリーに関係し進行によって立場や状態が変わり得る"インタラクティブNPC"など、など多様な形態を持つ。NPCはゲーム体験の核心を担い、独特な文化や表現に影響を与え続けている。

ゲーマーならば、これまでに何度も聞いたことがあるであろう、"NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)"という言葉。

しかしながら、単語への理解度や、その用法は人によってまちまちである。

そんなNPCという単語を深掘りし、言葉の成り立ちや意味はもちろんのこと、昨今TikTokで流行っている"NPCストリーミング(NPC配信)"といったミーム・流行も紹介していく。

『Sea of Stars』に登場する世界を俯瞰するNPC「記録官」のつぶやき
ⒸSabotage Studio

『Sea of Stars』に登場する世界を俯瞰するNPC、"記録官”のつぶやき

<NPCとは何か?>プレイヤーが制御しないキャラクターのこと

ノン・プレイヤー・キャラクター(NPC)というその言葉のとおり、"プレイヤーが制御(操作)しないキャラクター"のことを指す。古くはTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)に登場する概念である。プレイヤーの遊びが円滑に進むようにサポートする役割(人)のことを指し、のちにコンピュータRPGにもこの言葉が使われるようになった。

ちなみに、TRPGはすべてのRPGの元祖である。テーブルを囲み、会話とダイスを使って物語を進めていくアナログゲームで、1974年リリースの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』から現在まで連綿と続いているジャンルだ。

なお、コンピュータRPGにおいては、本来ならばプレイヤーが操作しないキャラクターはすべてNPC、という定義になるが、倒すべき敵モンスターは該当せず、村人や同行者などを指す場合がほとんどだ。

『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』のNPC、救出された女性。
© SQUARE ENIX, ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI

『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』のNPC、救出された女性。彼女は以下に説明する、"受動的NPC"のカテゴリーに入る。

<NPCの種類>クエストギバーやコンパニオンなど

ここで、NPCの種類について、代表例を交えていくつか紹介していこう。なお、各項目の名前は便宜的に筆者が付けたものである。

①受動的NPC

代表例

  • 『ドラゴンクエスト』の店主
  • 『ファイナルファンタジーXIV』 羽振りのいい若者
  • 『Nine Sols』の山海9000

など……

ゲームに対して単一の役割を持っているものの、主体的に動き回ったり、物語に絡んでくることがほとんどないキャラクターを指す。アイテムを売買してくれる店主であったり、ゲームシナリオの背景知識(ロア)を紹介してくれる存在は、おおむねここに位置すると思っていいだろう。

彼らのなかには"クエストギバー"という役割が与えられているキャラもおり、これはゲーム中でクエストを受注できるNPCのことを指す。彼らに命じられて、どこかで敵を倒したり、謎を解いたりして戻ってくると報酬をくれる存在だ。

このクエストが複雑に分岐したり、彼ら自身に細かい物語があって、進行に応じて彼らの状態が変わってくると、後述するインタラクティブNPCに分類されると考えられる。

『Nine Sols』でアイテムを売ってくれるNPC、山海9000と会話。
ⒸRedCandleGames

『Nine Sols』でアイテムを売ってくれる"受動的NPC"、山海9000。いわゆるショップの店主である。

②コンパニオン

代表例

  • 『Fallout4』のドッグミート
  • 『ファイナルファンタジーXVI』のシドルファス・テラモーン
  • 『ウィッチャー3 ワイルドハント』のヴェセミル

など……

主人公およびパーティーなどに一時的に加入し、ともに戦ってくれる存在を指す。だが、細かい命令を下せる場合はNPCとは呼ばず、その場合はシンプルに"パーティーメンバー"、あるいは"仲間キャラクター"などと呼称するのが一般的である。

例として挙げた『Fallout』シリーズは、キャラによってはコンパニオンに多少命令ができることもあるが、どこまでプレイヤーの操作が関与できたらNPCと呼ぶか/呼ばないかについては、ユーザー間でも意見が分かれるところである。

『ファイナルファンタジーXVI』のコンパニオンNPC、シドルファス
© SQUARE ENIX LOGO & IMAGE ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO

『ファイナルファンタジーXVI』のコンパニオンNPC、シドルファス。序盤から主人公クライヴをサポートしてくれる。

③インタラクティブNPC

代表例

  • 『Mass Effect』のデイビッド・アンダースン
  • 『ELDENRING』のラニ
  • 『バルダーズ・ゲート3』のジャヘイラ

など……

さきほど挙げた、受動的NPCよりもストーリーに関係し、階層の深い会話や、物語進行によって立場や状態が変わり得るキャラクターを指す。

いわゆる"おいしいキャラ"というものであり、ストーリー全体もしくはシリーズ全体を通して、そのキャラクターがどう変化していくかを見届けるのが、ユーザーの楽しみになっていることも多い。彼らをどう扱ったか、またどんな境遇になったかをクリア済みプレイヤーのあいだで語り合うのが楽しいわけだ。

また『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』のビアンカやフローラのように、仲間キャラクターをインタラクティブNPCとして扱うことで、ストーリーを大きく動かすケースもあり、やはりゲーム体験の骨子に関わってくるポジションにあると言えるだろう。


メモ
スーパーファミコン版『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』では、仲間キャラクターであるビアンカかフローラのどちらと結婚するかが選択でき、選んだほうがパーティーに加入し、ふたりのあいだにできた子どもが勇者として世界を救っていく物語になっている。
『ELDENRING』のNPC、ラニ。褪せ人に対して怒っている。
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.

『ELDENRING』の"インタラクティブNPC"であるラニ。人を操るための薬、"セルブスの精薬"を飲ませようとすると激昂する。

④敵対的NPC

代表例

  • 『Fallout4』のほぼすべてのNPC
  • 『ダークソウル』の女神の騎士ロートレク
  • 『ウィッチャー3 ワイルドハント』の衛兵

など……

シナリオ上(ゲーム進行上)に登場するモンスターやラスボスとは違い、何かのきっかけでこちらに攻撃的な行動を取ってくるNPCのことを指す。

わかりやすいのはベセスダ・ソフトワークスが開発したRPG群(『Fallout』シリーズや『The Elder Scrolls』シリーズなど)に登場するキャラクターたち。

これらのゲームでは、街にいるほぼすべてのNPCがこちらの犯罪行為に反応して、態度を一変する(ときには攻撃してくる)。

ゲーム内にも現実世界に似た善悪のカルマやルールがあることを教えてくれるリアルな仕掛けであると同時に、(ゲーム内で)一定時間ほど逃げればどんな悪事も見逃されるなど、ジョーク(?)の域に達したゲームらしさを見れるものでもあり、その二面性はなかなか面白い。

『Fallout4』住民の反抗
© 2015 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company

『Fallout4』に登場する住民のほとんどは"敵対的NPC"である。プレイヤーの取った犯罪行為などよって反応が変わる。

以上、NPCを4つの区分に分けさせていただいた。

この4つに限らず、ゲーム文化が成熟する流れのなかで、"敵対的NPC"だと思っていたキャラクターが"コンパニオン"として加入してくれるイベントや、"受動的NPC"のふりをして、じつはゲーム内世界を裏から動かしていたなど、既存のゲームの文法を逆手に取った展開でプレイヤーを驚かせてくれるパターンもたくさん生まれてきた。

あくまでこの区分はひとつの指標として見ていただきたく、これらの常識的な感覚に対してどうクリエイティブを発揮するか、どんな具合に裏切ってくれるかが、現代のゲーム制作の面白いところなのかもしれない。

<ユニークなNPCの例>『Halo』のマスコットがWindowsのサポートAIに?

Cortana(コルタナ)

続いて、筆者が好きなユニークなNPCをふたつ紹介しよう。

まずは、マイクロソフトが提供する老舗のFPS『Halo』シリーズに登場するNPCだ。本シリーズに登場する"Cortana(コルタナ)"は、青い光に投射された人間(女性)型のAI。主人公のマスターチーフと同じくらい出番があり、シリーズのマスコットキャラクターとも言える存在だ。

そんな彼女(Cortana)は、2014年のWindows Phone 8.1から、WindowsのサポートAIアプリ(AIアシスタント)としてゲーム外に進出した。いまは同じAIアシスタントの"Copilot(コパイロット)"に取って代わられたが、約9年間、Windowsユーザーはマスターチーフの気分を味わえていたわけだ。とても素敵な抜擢である。

パッチ

そして、もうひとりのNPCは、フロムソフトウェアの『アーマードコア』シリーズや『ダークソウル』シリーズなどに登場する"パッチ”だ。

シリーズによって風貌は変わるが、禿頭で、コンビニに溜まるヤンキーのような座りかたをしているのが基本である。彼は卑屈な調子でプレイヤーに迫り、アイテムなどを売ってくれることもあるが、こちらが隙を見せると、奈落に突き落としてきたり、笑いながら侮辱してきたりとクズ野郎としての本性を表す。

しかし、闇に閉ざされたシビアな世界において、彼のころころ変わる人間らしい性格や、ついつい真似したくなる特徴的な口調からか、意外にもファンが多い。突き抜けて卑怯な奴であるがゆえに、強烈に印象に残るのだろう。

『ダークソウル リマスタード』仕掛けの前で待つパッチ
Dark Souls™: Remastered & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / ©2011-2018 FromSoftware, Inc.

『ダークソウル リマスタード』で道を開くための仕掛けのまえで待つNPC、パッチ。この後、プレイヤーを奈落に落とす。

<NPCストリーミングとは?>NPC文化はTikTokへ!?

最後に、NPCという呼称が、ゲームとは別の空間で使われているケースについても紹介しておこう。

"NPCストリーミング(NPC配信)"とは、おもに海外のTikTokで流行っているダンスの一種で、ゲーム内のNPCのように同じ行動を繰り返すパフォーマンスのことだ。

この発祥は日本人TikTokユーザーの夏絵ココ(@natuecoco)だとされているが、爆発的にヒットさせたのはpinkydoll(@PinkyDoll)である。

いくつか視聴してもらえばわかるが、そこにはゲームの動きを生身の人間が無理にやっていることからくる滑稽さと不気味さがある。TikTokにありがちな露出の高い服を着て行っている配信者も多く、煽情的な動画もたくさん並んでいる。

なお、海外のSNSでは"NPC"という言葉が、"独創性がない人物への侮辱"というニュアンスを持つようで、そんな背景から、わざとおバカなふりをした女性が視聴者を性的に煽り立てているのではないか……と考えている層もいるようだ。

その流れ自体はわからなくもないし、恐らくそういう意図もあるのだろうが、筆者としては別に女の子が薄着でダンスをする動画などTikTokに限らず山ほどあるし、彼女たちがNPCという概念に対して特別な思い入れを持っているようにも見えない。しょせんは一過性の流行に過ぎないのではないかと考えている。

わざわざ取り上げておきながら否定するのも妙な形だが、そんな流れがあるということは面白いことであり、ゲーマーが知っておいても損はないのではないかと思った次第だ。

NPC的な動きにおかしみや勝機を感じる彼女たちの独特なセンスは、たしかに一抹の危うさこそあれど、新時代の表現としてまた別の何かにシフトしていくような気もしている。

NPCというものを多角的に見つめてみると、いろいろなことがわかった。最初はTRPGにおいてプレイヤーを補佐するためだけの存在だったが、その常識を破り、プレイヤーを驚かせ、あまつさえ感動させるほどにまで成長したものの、やっぱり繰り返しの行動しか取らない存在だと思われている側面もある。

NPCのセリフひとつを巡ってファンが論争することもあれば、誰にも覚えられていないクエストギバーもいる。NPCをどう扱うか、そこにゲーム開発の真髄が隠されているのかもしれない。

『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』かっこいいセリフを吐きながら立ち去る吟遊詩人
© SQUARE ENIX, ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI

『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』のNPC、吟遊詩人。かっこいいセリフを吐きながら立ち去る。このキャラは"受動的NPC"である。

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