長所
- 個性的で魅力的なグラフィックとサウンド
- コミカルなストーリー
- シンプルだけど駆け引きが楽しいバトル
短所
- ユーザーによっては古臭さを感じるオーソドックスなスタイル
『OMEGA 6 THE TRIANGLE STARS(オメガ6 ザ・トライアングルスターズ)』(以下、『OMEGA 6』)は、もと任天堂のゲームクリエイター・今村孝矢氏が原作およびグラフィックを担当したコマンド選択式のアドベンチャーゲームだ。
今村氏といえば、『F-ZERO』(1990年)や『スターフォックス』(1993年)、『ワイルドトラックス』(1994年)など、これまでにさまざまな任天堂作品のアートデザイン、CGデザインなどを手掛けてきた人物である。
そんな彼のアートワーク(イラストやキャラクターデザインなど)は、まるで"海外のコミックス"のようなクールさがありつつも、どこかコミカルかつポップな雰囲気も持ち合わせている。
本作は、そんな今村氏が2022年にフランスで刊行しマンガ家デビューを果たしたコミック作品『OMEGA 6』を原作として作られている。
マンガを読んでいるようなプレイ感覚
アドベンチャーゲームの文法としては、非常にオーソドックスなスタイルである。与えられた"コマンド"を駆使して、謎を解きながら冒険をして物語を進めていく。
とはいえ、軽快なテンポとコミカルな演出が秀逸で、物語の先の展開がとても気になる作りになっているのが本作の魅力のひとつでもある。
まさに、良質なコミックを読んでいるかのように楽しめるプレイフィールが心地よいのだ。
さらには、スーパーファミコンのゲームを彷彿とさせるような"16ビット風"のグラフィックが懐かしくも新しく、当時『F-ZERO』や『スターフォックス』にハマった筆者のようなおじさんゲーマー(おばさんゲーマーも!)にはビンビンに琴線に触れるビジュアルになっている。
やたらと流暢な関西弁を話す宇宙人をはじめ、なぜか頭のない宇宙人、酔っ払ってクダを巻く宇宙人など、そんな"16ビット風"のグラフィックで描かれた個性豊かなキャラクターたちが100体以上も登場し、その多様なキャラクター(宇宙人)たちが、種族に関係なく交流する世界観は、まるで『スター・ウォーズ』の楽しさに通じるものがある。
駆け引きのあるインタラクティブな"遊び"
また、同じシーンでもランダムでイベントが発生したり、出会ったキャラクターを記録する図鑑システムがあったりと、(よりインタラクティブな)"テレビゲーム"として楽しめる仕掛けも、もちろん盛り込まれている。
なかでも、ゲーム進行の良いアクセントになっているのが、"じゃんけんカードバトル"だ。
わかりやすくいえば、マンガ『賭博黙示録カイジ』の"限定ジャンケン"のようなシステムなのだが、これがシンプルながらにとても戦略性が高い。
「相手の持っているカードは何か?」と予測する面白さ、そして限られた手札のなかで「どの順番でじゃんけんカードを出すか?」という駆け引き、さらにそれに相まって音楽家・天宅しのぶ氏(彼女も、もと任天堂)が手掛ける緊張感のあるサウンドが面白さを増幅させているといっても過言ではない(相手に勝利したときのSEを含め、全体的に16ビットゲーム風なサウンドがいい!)。
ほかにも、宇宙船内にある盆栽ルームで育てたフルーツを使えば、キャラクターの能力を上げたり、対戦相手のじゃんけんカードの手札を変えたりなど、バトルを有利に進めることができる育成要素も盛り込まれ、やり込みがいがある作りになっている。
非常にバランスが噛み合ったゲーム性
繰り返しとなるが、アドベンチャーゲームの文法としては非常にオーソドックスだ。だけども、今村氏のグラフィックおよび天宅氏のサウンドの魅力、そしてテンポの良さとコミカルなキャラクター性や各種演出、さらに"じゃんけんカードバトル"や"盆栽システム"といったシンプルだけど奥深いゲームシステム、それぞれがバランス良く噛み合った作品だと感じる。
そう感じるのは単なる懐古主義からではなく、本作はいまのゲーマーにも楽しめるポテンシャルを持っていると思う。
とは言いつつも、それこそ'80年代からパソコンでさまざまなゲーム(アドベンチャーゲームも!)を遊んできた筆者としては、往年のPCアドベンチャーゲーム『惑星メフィウス』を彷彿とさせるような、『OMEGA 6』のレトロフューチャーな世界観にグッときてしまうのである。
©TAKAYA IMAMURA ©Omaké Books ©Happymeal Inc. ©Pleocene ©CITY CONNECTION CO., LTD.