重要なポイント
RPG(ロールプレイングゲーム)の歴史と多様なジャンル進化について解説。RPGは"プレイヤーがキャラクターの役割を演じるゲーム"で、レベリングや戦闘、探索などが基本要素となっている。TRPGテーブルトークロールプレイングゲーム)が起源で、代表的作品として『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『ドラゴンクエスト』が挙げられる。JRPG、ARPG、MMORPGなど、多岐にわたるサブジャンルが存在し、ゲーム性やストーリー性の追求により、現在も進化を続けている。
ゲームジャンルが多様化した近年。さまざまなゲームシステムがミックスしたり、ユニークなゲームデザインが発見されたりしたことで、新たなサブジャンルが生まれてきた。
RPG(ロールプレイングゲーム)においても例外ではなく、JRPG(ジャパニーズロールプレイングゲーム)やSRPG(シミュレーションロールプレイングゲーム)など、さまざまなサブジャンルが勃興してきた歴史を持っている。
そこで本記事では、RPGとはどのようなジャンルなのか、またどのようなサブジャンルがあるのか、またそれぞれどんな差異があるのかなどを解説していく。
<RPGとは?>60年以上の歴史を持つゲームジャンル
RPGとは何なのかを説明するまえに、まずTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)について語っておかなければならない。TRPGとは、ゲームマスターが用意してきたシナリオに沿ってキャラクターを作成し、ダイス(サイコロ)や鉛筆、紙などの道具を使い、会話によって物語を展開していくアナログゲームのことだ。
1970年代、ウォーゲーム(ミニチュアを使って中世の戦術を再現するアナログゲーム)のデザイナーをしていたゲイリー・ガイギャックスが、新作にJ・R・R・トールキンの小説『指輪物語』のファンタジックな世界観を盛り込むことを思いつく。その後、彼はデイヴ・アーネソンとともに世界初のTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を完成させた。
この『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をコンピュータ上で再現しようとして試みられた作品群が、RPG(詳細に区別するならばCRPG(コンピュータRPG))と呼ばれているのである。
さて、では具体的にRPGとはどんなゲームなのかというと、"プレイヤーがゲーム内のキャラクターとして役割を演じるゲーム"のことだ。プレイヤーは、キャラクターの育成や世界の探索を通して、邪悪なる存在の打倒を目指したり、自分たちの願いを叶えたりする。
RPGの基本的な要素には、レベリング(レベル上げ)、クエスト依頼、アイテム収集、探索、戦闘などがあり、これらの要素がゲームを進める上での動力となり、プレイヤーの成長を実感させる。では、それぞれの要素を説明していこう。
- レベリング(レベル上げ):プレイヤーはキャラクターを成長させ、スキルや能力を向上させることができ、これによりストーリーを進めたり、強力な敵を倒したりできるようになる。RPGの醍醐味とも言える部分ではあるが、退屈な作業感を覚えさせてしまう原因でもあるので、ほぼすべてのRPGにおいてレベリングをいかに楽しく作るか、というのが開発側の重要なポイントになってくる。
- クエスト:大きくはメインストーリーとサイドストーリーに分岐する。ほぼすべてのRPGのメインストーリーはこのクエストに則ってシナリオが進行する。サイドストーリーはほとんどの場合、ゲームクリアに必須ではないが、独立したストーリーを楽しむためにひと通り遊んでおくというプレイヤーも多い。
- アイテム収集:プレイヤーに探索や冒険の動機を与える要素。武器や防具、回復アイテムなど、キャラクターの能力を強化したり、ストーリーを進める上で必要なものが手に入ることが多い。アイテムのなかにはレアリティが設定されているものもあり、とくに珍しいアイテムを発見したときの達成感や興奮は、多くのプレイヤーにとって大きな魅力である。
- 探索:文字どおりゲーム内の広大な世界を自由に探索することを指す。ときに隠されたアイテムやサイドクエストを発見することもある。こちらもほぼすべてのRPGに存在するが、昨今は容量の増加(オープンワールド化)に伴って、マップの広さに技術的な限界がなくなり、単なる移動や虱潰しの捜索をどう面白くするかについて各社が苦心している部分でもある。
- 戦闘:戦闘は、RPGにおける中心的な要素のひとつであり、プレイヤーの戦略性やスキルを試す場となる。敵を倒して経験値を得たり、アイテムを入手したりすることでキャラクターが成長し、さらに強力な敵と戦えるようになる。ターン制、リアルタイムバトル、アクション要素を取り入れたものなど、戦闘システムにはさまざまな種類があり、それぞれのシステムがゲームの個性やプレイ感を大きく左右する。
代表的なRPGの例
『ローグ』(1980年)……毎回自動生成されるマップを行き来し、財宝を持ち帰ることを目的としたRPG。"ローグライク"というジャンルを作り出した。当時はテキストアドベンチャーという、文字だけで構成された探索ゲームが流行っていたが、本作はCursesライブラリという制御プラグインを使うことで、ダンジョンを視覚的に表現した(本記事のタイトル画像はsteam版の『ローグ』)。
『ウルティマ』(1981年)……2D画面を見下ろしながらフィールドを探索するコンピュータRPGの祖。『ドラゴンクエスト』シリーズに直接影響を与えた米国の作品。『ローグ』、『ウルティマ』、『ウィザードリィ』などの作品がコンピュータRPGの始祖と呼ばれている。
『ドラゴンクエスト』(1986年)……言わずと知れた家庭用ゲーム機初のコンピュータRPG。『ポートピア連続殺人事件』などのアドベンチャーゲームで知られていた堀井雄二、『ドラゴンボール』で知られていた漫画家の鳥山明、作曲家として名を馳せていたすぎやまこういちといった豪華な座組は、この時すでに完成していた(本作は後述するJRPGの代表作としても知られる)。
<JRPGとは?>日本で醸成された独自のゲーム文化
JRPG(ジャパニーズロールプレイングゲーム)とは、おもに日本で開発されたRPGを指し、なかでもストーリーテリングやキャラクターの成長に重点を置いたものが多い。JRPGは、1990年代の日本のゲーム業界を代表するジャンルとなり、世界中に大きな影響を与え、現在ではJRPGに影響を受けた海外作品もJRPG的な作品として紹介されることが増えてきた。
特徴としては、ターン制バトルやドラマチックなストーリーなどが挙げられる。
- ターン制バトル:専用の戦闘画面に移行し、ボードゲームのようにターン制で行われる。プレイヤーはキャラクターの行動を順番に命じて、パラメータを参照しながら戦いを行う。とくにJRPGはザコ戦と呼ばれる通常戦闘のイベントが大量にあり、好き嫌いが分かれるポイントでもある。なお『ダンジョンズ&ドラゴンズ』から直接影響を受けたタイプの西洋風RPGは必ずしもこの限りではない。『ウルティマ』(1981年)は戦闘画面が存在せずそのままバトルに移行し、『ディアブロ』(1996年)はリアルタイムで直接殴り合う戦闘システムになっている。
- ドラマチックなストーリー:JRPGは、プレイヤーに感情移入させる強いストーリー性を持つものが多く、キャラクター同士の関係性や、ハイブリッドな世界観に焦点が当たる。海外製のRPGと同じく中世ヨーロッパ風の世界をモチーフにしていながらも、主人公側は善で敵側は悪といった二元論的思想や、ローマ帝国風の国家と民主主義/自由主義的な国家との対立といった、歴史的な背景に馴染みのない日本人でもわかるような落とし込まれかたがされているのが特徴的だ。一方で、海外のRPGは『ウルティマIV クエスト・オブ・アバタール』(1995年)に代表されるように、主人公やキャラクターに善悪を決める値(カルマ値と呼ばれることが多い)が割り振られていて、プレイヤーが自由に身の振り方を決められるケースが目立つ。
代表的なJRPGの例
『ファイナルファンタジー』(1987年)……『ドラゴンクエスト』と双璧を為す国産RPGの長寿シリーズ。『ドラゴンクエスト』の後発として、パーティー制やジョブシステム、ループするシナリオといった意欲的な要素が盛り込まれている。本作以降のシリーズ作ではドラマチックな恋愛や少年少女の成長譚が描かれることが多く、その点が非常にJRPGらしいと言える。
『テイルズ オブ ファンタジア』(1995年)……ナムコ(当時)が送り出してきた長寿シリーズ。対戦格闘ゲームを意識したリアルタイム戦闘や、スーパーファミコンの限界に挑戦したボーカル付きのテーマソングが話題になった。デフォルメされた等身のキャラクターが大剣を振り回したり、道中で会話劇を繰り広げたりするポイントは、日本のアニメを参考にしているのがよくわかる。
『女神異聞録ペルソナ』(1996年)……剣と魔法のファンタジー世界が舞台だったRPG界において、悪魔と契約した高校生を主役に置き、ダンジョン探索と高校生活を同時に楽しめるように作られたのが『ペルソナ』シリーズだ。学園物のフィクションが多い日本のゲームならではの設定である。
<ARPGとは?>敵をバッサリと斬り倒す気持ち良さ
ARPG(アクションロールプレイングゲーム)は、アクション要素とRPG要素を組み合わせたゲームジャンルのこと。プレイヤーはリアルタイムで戦闘を行い、キャラクターを操作しながらバトルを進める。RPG的な要素であるキャラクターの成長やアイテム収集が含まれるが、他のRPGよりも戦闘におけるアクション性が強調されていることが多い。
重要なのはリアルタイム戦闘と、それに伴う探索システムだ。
- リアルタイム戦闘:バトルはターン制ではなく、リアルタイムで攻撃や回避、スキルの使用を行う。ターン制のRPGではステータスやレベルが足りなければ絶対に勝てない戦闘が出てくるものだが、ARPGでは操作さえ完璧であれば初期レベルでもラスボスを倒せるような作品もある。
- 探索:ARPGもすべてのRPGと同じく、世界を自由に探索し、さまざまなクエストを遂行することが求められる。しかし、多くのARPGでは、探索とバトルがシームレスになっており、探索中に不意に攻撃を受けることがあったり、また敵に先行攻撃を仕掛けることができる作品も多い。
代表的なARPGの例
『キングダムハーツ』(2002年)……『ファイナルファンタジー』シリーズのスクウェア(当時)と、世界的なアニメーション会社ディズニーがコラボレーションしたARPG。ディレクターは『ファイナルファンタジーVII』でキャラクターデザインを担当した野村哲也。ターン制のコマンド選択式のシステムと、キーブレードという武器を用いたアクションが融合した作品。
『ダークソウル』(2011年)……高難易度3D・ARPGの金字塔。回避やパリィを駆使して敵の猛攻を防ぎつつ、ダンジョンの深淵を目指す。道中の回復アイテムの上限が決まっていたり、また死亡した場所に経験値やお金をすべて落とすシステムなどが特徴的。敵の攻撃が苛烈で、一瞬の判断が命取りとなる。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』(2015年)……アンドレイ・サプコウスキの小説をもとにしたポーランドのオープンワールドRPG。魔物ハンターであるウィッチャーのゲラルトが、世界の命運を握る少女シリを巡ってワイルドハントたちと激闘を繰り広げる。選択肢によって細かく分岐するシナリオが素晴らしい。剣術、魔法、錬金術など、好きなパラメータを割り振り、自由な戦闘スタイルで遊ぶことができる。
<MMORPGとは?>大人数で冒険する楽しさ
MMORPG(マッシブリーマルチプレイヤーオンラインロールプレイングゲーム)は、インターネットを通じて世界中のプレイヤーとリアルタイムで交流しながらプレイするRPGである。
MMORPGの特徴は、広大なオンライン世界を複数のプレイヤーと共有し、ギルドやパーティーを組んでともに冒険を進めることができる点である。また、ゲーム内にマーケットが用意されている場合もある。
- オンラインプレイ:プレイヤーは、用意されたAI制御の仲間キャラクターではなく、世界中のどこかにいる実際のプレイヤーといっしょにゲームを進めることができる。
- ギルド:ゲーム内ギルド(同じモチベーションや目的を持った集団)やパーティーを組んでともにクエストを遂行したり、他のプレイヤーとの対戦を楽しむことができる。
- マーケット:ゲーム内に経済システムが導入されており、プレイヤー間でアイテムや装備品を売買することができる。
代表的なMMORPGの例
『World of Warcraft』(2004年)……Blizzard Entertainmentが開発・運営するMMORPG。世界でもっとも登録者の多いMMORPGとしてギネスにも登録された。定期的に拡張パックをリリースしてゲーム内のコンテンツを増やしていく試みは、後述する『ファイナルファンタジーXIV』も参考にしたそう。
『ファイナルファンタジーXIV』(2010年)……スクウェア・エニックスが発売するMMORPG。発売後の悪評は稀にみるほど酷かったが、2013年に開発体制を一新して『新生エオルゼア』として再スタート。とくに2021年に発売された拡張パック『暁月のフィナーレ』のストーリーは世界中で絶賛された。
『The Elder Scrolls Online』(2014年)……歴史的RPGシリーズ『The Elder Scrolls』シリーズをもとにしたMMORPG。タムリエルという大陸を探索し、グレートダークという脅威に立ち向かうことが目的だ。オフライン作品同様に、プレイヤーの選択によって物語が変化していくのがウリである。
RPGのサブジャンル別 早見表
サブジャンル名 | 特徴 | 代表作 |
TRPG |
|
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』など |
RPG(CRPG) |
|
『ローグ』、『ウルティマ』、『ドラゴンクエスト』など |
JRPG |
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『ファイナルファンタジー』、『テイルズ オブ ファンタジア』、『女神異聞録ペルソナ』など |
ARPG |
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『キングダムハーツ』、『ダークソウル』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』など |
MMORPG |
|
『World of Warcraft』、『ファイナルファンタジーXIV』、『The Elder Scrolls Online』など |
<その他のサブジャンル>DRPG、TRPG、SRPGなどさまざま
RPG文化の隆盛に伴い、さらにそのサブジャンルは多様化している。代表的なその他のサブジャンルは下記。
DRPG(ダンジョンRPG)……拠点で事前にパーティー編成などの準備をし、ダンジョンに潜って財宝を持ち帰ったりすることが目的のRPG。ダンジョン探索画面は一人称視点で、前に進む、右左に曲がるといった操作をするゲームを指すことが多い。代表作は『ウィザードリィ』、『世界樹の迷宮』など。
SRPG(シミュレーションRPG)……軍隊を指揮し、マス目状に区切られたフィールドに駒を配置して、戦略的な戦いを展開することが求められるRPG。ひとりひとりのキャラクターのドラマ以上に、軍隊全体の行く末を語る物語が描かれやすい。代表作は『ファイアーエムブレム』、『タクティクスオウガ』など。
メタRPG……これまでのRPGのお約束を逆手に取り、プレイヤーに驚きと感動をもたらすRPG。ゲームの外側を認知しているかのような発言が飛び出したり、セーブ&ロードといった基本的な機能をゲーム側がハックしてきたりなど、よりユニークな展開が描かれるケースが多い。代表作は『UNDERTALE』、『moon』など。
ハック&スラッシュRPG……並み居る敵を薙ぎ倒し、戦利品を山ほど手に入れて、そのなかから強そうな装備を着用し、また並み居る敵を倒すというループを楽しむRPG。本来はダンジョンに潜って敵を倒すことを主軸に置いたゲームデザインを"ハック&スラッシュ"と呼んでおり、自動生成されたレアリティの異なるアイテムがランダムで手に入る仕組みは"ルートボックス型"と区別して呼ばれていた経緯があるが、どちらも同じ種類のゲームに組み込まれることが多く、同一視されるようになってきた。代表作は『ディアブロIII』、『Path of Exile』など。
以上のように、RPGにはさまざまな種類があり、各サブジャンルの特徴を理解することで、自分に最適なゲーム体験を見つけることができるだろう。スタイリッシュな戦闘が好きならARPG、黙々とレベル上げとアイテム集めをしたいならハック&スラッシュRPGといった感じで、RPGは幅広いニーズに答えてきた。
ぜひとも本記事の代表作一覧から、これまで遊んでこなかったジャンルに挑戦してみていただきたい。