重要なポイント
いまをときめくゲーム業界のスタークリエイターたち。そんな彼らでも、自身のキャリアが積まれるまでに、一見すると現在の制作スタイルからは想像もつかないような作品に関わっていた。しかし、そこをあえて深掘りしてみると、じつは一貫したものが見えてくるような気がした。
本記事では、そんな有名クリエイターたちの隠れた名作についてピックアップしよう。驚けること間違いなしだ。
①『爆ボンバーマン2』――吉田直樹(代表作『ファイナルファンタジーXIV』)
『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)のプロデューサー&ディレクターとして同作を10年以上引っ張ってきたスクウェア・エニックスの吉田直樹氏。彼はもともとハドソンに在籍し『爆ボンバーマン2』のストーリーモードのディレクターを担当していた。彼がキャリアのなかで携わってきた唯一の非RPGタイトルである。
『ボンバーマン』からMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)へと流れていった彼だが、じつは『FF14』にもその経歴が残っている……と言えるような要素がある。
『FF14』のPvPモード(プレイヤー同士が対戦するモード)である"クリスタルコンフリクト"のマップ、"ヴォルカニック・ハート"では、十字砲火が起こり、その様子がまさに『ボンバーマン』っぽく見えるのだ。実際、ファンのあいだでは"『ボンバーマン』ステージ"とも呼ばれている。
"ドマ式麻雀"モードの追加や、『Fall Guys』とのコラボレーションなど、あらゆる遊びを取り込んで成長する『FF14』。そのうち、エオルゼア(『FF14』の世界を指す)のなかで『ボンバーマン』が遊べる日が来るかもしれない……!
②『Strange Shadow』――コタケクリエイト(代表作『8番出口』)
大量のフォロワーを生んだ、ウォーキングシミュレーター『8番出口』。開発者であるコタケクリエイト氏は、本作を作る以前から取り組んでいるゲームがあると話している。それがホラーアドベンチャーゲームの『Strange Shadow (ストレンジシャドウ)』だ。こちらは2025年発売予定である。
巨大生物から逃げ隠れするゲームで、どことなくアートスタイルや雰囲気は『デスストランディング』を彷彿とさせる。
筆者は2023年のBitSummit(日本最大級のインディ―ゲームの祭典)にて本作を試遊させていただいた。そのときのビルドでは、漠然とした不安感を覚えさせる環境デザインや、背負っているアイテムを使うことで足場を超えるなどのギミックが見られた。
なお、本記事に合わせて、コタケクリエイト氏からメッセージをいただいたので紹介する。
「『Strange Shadow』は不気味な巨大生物から逃げたり隠れたりするプラットフォーマーアドベンチャーゲームです。イメージとしては『LITTLE NIGHTMARES』が近いかもしれません。
発売は2025年を予定していますが、もしかしたらもう少しかかるかもしれません(ごめんなさい)。
また、現在公開しているゲーム映像はかなり古い物なので、見た目やゲームシステムは発売する際にはいろいろと変わっている部分があると思います。タイトルも、"よりゲームに合ったもの"に変更予定です。
巨大生物ならではの恐怖感や面白さが体感出来るようなゲームに仕上げたいと思っていますので、楽しみにお待ちいただけますと幸いです。」(コタケクリエイト)
『8番出口』同様に、ワンアイデアのホラーチックなゲームを斬新な方法でまとめあげるのが上手い同氏……ぜひ『Strange Shadow』にも期待したい。
③『不思議のダンジョン 風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!』――イシイジロウ(代表作『428』)
『428 〜封鎖された渋谷で〜』や『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』など、秀逸なサウンドノベルやアドベンチャーゲームを世に送り出すクリエイターとして有名なイシイジロウ氏。
各分野で活躍する人たちが集って"人狼"をプレイする"アルティメット人狼"の主宰など、あらゆるメディアで幅広く活躍されている同氏だが、キャリアのスタート地点はチュンソフトにあり『風来のシレン』シリーズに携わっていたことはご存じだろうか。
過去には『不思議のダンジョン 風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!』のゲームバランスを担当しており、現在のストーリーベースの作品に携わることが多い彼からすると、とても珍しい仕事であったと言えよう。このキャリアが伏線となって、いつか満腹度の存在する人狼ゲームを作ってくれる日が……来るかもしれない?
ちなみにシリーズ最新作『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』の有料ダウンロードコンテンツ"plusパック"にて、ひさびさにアスカの登場がアナウンスされている。
④『爆走デコトラ伝説BLACK』――小高和剛(代表作『ダンガンロンパ』シリーズ)
推理アクションゲーム『ダンガンロンパ』シリーズの小高和剛氏もまた、過去になかなかユニークなゲームに携わっている。彼は『爆走デコトラ伝説BLACK』という、デコトラ(デコレーショントラック)をテーマにしたニンテンドーDSのゲームで、シナリオを担当していたのだ。
『デコトラ伝説』シリーズは、デコトラをぶつけ合うという非常に荒々しいゲーム性で人気を博していた。とくに『BLACK』はシナリオの評判が高く、流石は尖ったシナリオベースのゲームでファンを獲得した小高氏らしい仕事ぶりである。
もし『ダンガンロンパ』シリーズがいまでも続いていたら、超高校級のデコトラ運転手が出てきた可能性も……いや、さすがにそれはないか……。
ちなみに、さきほど紹介したイシイジロウ氏がプロデュースを手掛けた『極限脱出 9時間9人9の扉』にて、ディレクターとシナリオを担当した打越鋼太郎氏と、小高和剛氏がタッグを組んだ新作『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』が2025年4月24日に発売予定。こちらも非常に楽しみだ。