
重要なポイント
『スーパーマリオ64』の"はしりはばとび"を応用したバグ技"ケツワープ(BLJ)"は、後ろ向きに連続ジャンプすることで異常な速度を蓄積し、一瞬で遠くへ移動できるテクニック。とくにRTA(リアルタイムアタック)などの競技で活躍しています。
1996年6月23日、"NINTENDO64"本体と同時に発売された『スーパーマリオ64』。『マリオ』シリーズとしては初の3Dアクションゲームで、まるで箱庭のようなステージを縦横無尽に駆け回りながら多彩なアクションを繰り出せる本作は、ファンに衝撃を与えました。
そんな『スーパーマリオ64』のアクションのひとつに、"はしりはばとび(走り幅跳び)"があります。勢いよく助走をつけてから、(NINTENDO64のコントローラーの場合は)"Z"を押しながら"A"を押すと、マリオが「ィヤッフー!」というかけ声とともに長距離をジャンプ。すばやく移動したいときや大きな穴を飛び越えるときなどに役立ち、印象に残っているかたも多いことでしょう。じつはこの"はしりはばとび"を活用した、とんでもない"ウラ技(バグ技)"があることをご存知ですか? その名も"ケツワープ"!
……いや、"ケツ"で"ワープ"ってなんなの!? その疑問はごもっともです。そこで今回は、この"ケツワープ"を簡単に解説しましょう。
"ケツワープ"とはいったい何か?
結論からいうと、"ケツワープ"の正体は"バグを利用した超高速の移動方法"となります。具体的には、壁など特定の場所に向かって"うしろはばとび(後ろ幅跳び)"("はしりはばとび"を繰り出しつつ3Dスティックを後ろに倒す)を連続で繰り出すと、マリオが硬直して"移動速度が身体に溜まっていく状態"になります。
そして、スティックを倒して溜まりきった速度を解放するとマリオが超高速で吹っ飛び、天井・壁・階段など、通常ではありえない場所もショートカットできるのです。
ただ"うしろはばとび"を連続で繰り出せばよいわけではなく、決まった場所にマリオを引っかけつつ、タイミングよく1フレーム単位の操作をする必要があります。ユーモラスな名称とは裏腹に、高度なテクニックということです。
最初の数回は「ィヤッフー!」、「ィヤッフー!」とふつうに"うしろはばとび"のかけ声を出すマリオですが、"ケツワープ"の成功時にはあり得ないスピードになるため、「ィヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(中略)ィヤッフー!」と発声するのが非常にシュール。
ちなみに"うしろはばとび"を活用することから、おもに海外では"BLJ(Backwards Long Jump)"と呼ばれています。「"ケツワープ"より断然カッコいいじゃん!」と思うのですが、逆に海外では"ケツワープ"という名称が「実用的で直感的」と話題になったこともあるんだとか。
さらに2025年現在では、"BLJ"に"ポーズ(STARTボタンを押す)"を組み合わせ、より高性能になった"PLBJ"が主流になっているようです。
また、"ケツワープ"にはさまざまな応用テクニックも存在。たとえば"ニコニコ動画"では"はねマリオ"と組み合わせた"ケーツコンバット"、"メタルマリオ"と組み合わせた"ケツメタル"や"ケツ量保存の法則"、ほかにも"マグナムダイナマイト"、"エビフライ(仮)"など、強烈なネーミングが見受けられます。うーん、奥が深い……(?)。
タイムアタックで大活躍
"ケツワープ"がその本領を発揮するのは、"いかにゲームを早くクリアするか"に挑戦するタイムアタックのときです。『スーパーマリオ64』をふつうにプレイした場合、パワースターを一定数集めて扉を開け、クッパを倒してカギを入手して……といった流れでゲームが進みますが、"ケツワープ"を使えば、その手順の多くをスキップできます。
たとえば、最後のクッパと戦うためには本来70枚のパワースターが必要で、足りない場合は無限に続く階段で足止めされます。しかし、"ケツワープ"を使えばその階段を飛ばし、強引にステージの入口にたどり着けるのです。
『スーパーマリオ64』の"RTA(リアルタイムアタック)"や、"TAS(ツールアシステッドスピードラン:エミュレーターを使ったプレイ)"は、発売からおよそ30年が経とうとしている現在でも世界的に大人気。レコード(記録)を塗り替えるため、多くのチャレンジャー(走者)が日夜しのぎを削っています。
そのレギュレーションは、とにかく最速でのクリアを目指す"any%"(RTAのカテゴリのひとつ)や、120枚すべてのパワースターを入手してクリアする"120枚RTA"などさまざま。すべてにおいて"ケツワープ"が活躍するわけではありませんが、"any%"で最速を目指す場合には必須となります。
なお"ケツワープ"は、日本版『スーパーマリオ64』のソフトだと初期版でしか使えませんが、北米版やオーストラリア版などはバーチャルコンソールのものでもオッケーだそう。タイムアタックで海外版のソフトがよく使われているのは、そのためなんですね。興味をもったかたは、ぜひ"RTA in Japan"などの動画をチェックしてみてはいかが?