
重要なポイント
2025年3月8日(土)~9日(日)にかけて、吉祥寺・武蔵野公会堂で開催されたインディ―ゲームイベント、"TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025”(以下、TIGS 2025)。そのイベントに出展された『コメンテーター』のプレイレポート。架空のニュース番組のコメンテーターとなり、やたら既視感のある話題群に鋭いコメントで切り込んでいくゲーム。……かと思いきや、実際は視聴者やスポンサーなどの板挟みで、"言いたいことも言えないこんな世の中じゃ"状態に!?
インディーゲーム制作チーム・テバサキゲームズ開発の、世論操作系報道ノベルゲーム『コメンテーター』。
本作は、日本国内でテレビ放送されている架空のニュース番組にコメンテーターとして出演し、毎回さまざまなトピックを批評していく風変わりな作品だ。
ときにニュース番組やワイドショーの出演者に対して、「この人、なんだか的外れなことを言っているな……」と感じたことがある人、あるいは「自分も鋭いコメントでお茶の間からの称賛を浴びたい!」と思ったことがある人は、ぜひとも本作をチェックしてみてほしい。
"支持"か"不支持"か!? 目指すは世間のご意見番
『コメンテーター』では、国際問題や、国政、凄惨な事件、芸能人のスキャンダル、果ては「デパ地下で〇〇が人気!」といった(しょうもない?)話題にいたるまでを、"コメンテーター"たるプレイヤーの視点でズバリと切り込んでいくことが可能だ。
ゲームを開始すると、唐突に1通の新着メールが表示される。
差出人は"トーキオテレビ"のプロデューサーを名乗る人物であり、そこには自身が大人気ニュース番組"NEWS SQUARE"のコメンテーターに就任したことが記載されていた。ご丁寧に、「(番組を)一緒に盛り上げていきましょう!」との添え書き付きである。
さっそくテレビ局に向かうと、待ち構えていたのは番組プロデューサーのウメサワ。見たところ柔和な印象の中年男性であり、大役を仰せつかったこちらとしても幾分緊張がほぐれるというものだ。

見た目イカツイ人ほど優しいとは言うが、その逆もしかり……かもしれない?
ウメサワとの「初めまして」的なやり取りもそこそこに、ゲームは番組放送前の打ち合わせフェーズへと突入。ここでは、今回の収録中に取り上げられるニューストピックが複数個表示される。
プレイヤーはそれらのトピックをピックアップし、"強く支持"、"支持"、"不支持"、"強く不支持"からなる4種のスタンスに振り分けることで、自身のコメントの方向性を決定するというシステムとなっている。
ここはやはり己の信念に従って選択を……と言いたいところだが、本作には"視聴者注目度"と、"スポンサー注目度"なるパラメータが存在するため、ひとりよがりなコメントで視聴者を冷めさせてしまったり、配慮のないコメントでスポンサーにケチをつけてしまったりすることは避けるべきだ。
また"放送まえ"ということで打ち合わせには制限時間もある。「一旦持ち帰らせてもらって熟考を……」なんて甘っちょろい言い訳は通用しないので腹をくくろう。
コメントする話題を4つ選んで、4種のスタンスに各1個ずつ割り振った後に、"ON AIR"ボタンをクリックすると番組収録がスタート。
画面にはスタジオ風景が映し出され、アナウンサーの女性がニュースを読み上げていく。そこに合いの手を入れるように、自身が事前に決めたスタンスに沿ってコメントを残していく。収録中はそのやり取りを見守るのみ。すべては"打ち合わせ通りに"、だ。
最後にリザルトとして、今回の放送に対する、視聴者・スポンサー双方からの反響が表示されて1日が終了。翌日にウメサワからのメールを確認し、次の放送に向けて打ち合わせに馳せ参じる――というのがゲームの基本サイクルとなっている。
ウメサワからは一定期間内における注目度ノルマが課せられるとはいえ、ひとまず基本的な流れを見た限りでは「楽勝じゃん!」と思った方も多いことだろう。
しかし、本作の奥深さは無論こんなものではない。事実、筆者はわずか数分間の試遊中に、苦悩のあまり幾度も天を仰ぐこととなったのだから……。
"自分の意見"を貫く余裕などない!? コメンテーターはつらいよ
打ち合わせフェーズには、"必ずニュースを4個選び、いずれかのスタンスで批評せねばならない"というルールが存在する。
この制約こそが、親しみやすいテーマ&とっつきやすいシステムを兼ね備える本作に、底知れぬ深みを与えてくれていると筆者は感じた。
"いずれかのスタンスで"と書いたが、1種のスタンスに対して複数のニュースを割り当てることは不可能だ。例として、Aというニュースを"強く支持"に置いた場合、Bというニュースはそれ以外の3つのスタンス(支持、不支持、強く不支持)のどれかに置くことになる。
結果どうなるか。たとえば、「大臣が収賄で逮捕」を"強く支持"に、「芸能人がセクハラで活動自粛」を"支持"に置いたとしよう。
すると残りふたつのニュースのうち、「イケメンプロゴルファーがツアー優勝」は少々苦しいが"不支持"に置くとして……4つ目の「小学生が新種の虫を発見」を"強く不支持"に置くしかなくなってしまったではないか!? なんて状況がわりとよく発生するのだ。

開発チームからは「経済に関わるニュースはスポンサーからの反応がいい」とのヒントもいただけた。……デパ地下グルメ最高!
なお、今回の試遊版では1回の放送あたり4つのニュースがランダムに出現する仕様だったが、開発チームいわく「製品版では最大8個が出現するようになる予定」とのこと。
しかも、察しの良い方はすでに予感されているであろう、打ち合わせでは時折、"スポンサーからの意向"がウメサワから語られることがある。
こうした圧力まで加わると、思考回路はショート寸前。番組制作サイド・スポンサー・視聴者の板挟みとなり、"配慮"や"忖度"がたびたび求められる"お茶の間の人気者"の苦悩が存分に疑似体験できるというわけだ。

自分がコメンテーターとして振るわなかった自覚はあるが、パートナーや子どもを引き合いに出すのは本当にやめていただきたい。
幸いにして本作は、プレイ1サイクルあたりのテンポが良いため、たとえ収録で"やらかして"しまったとしても、トライ&エラーをガンガン楽しめるゲーム性となっている。
もちろんゲームなので、致命的な発言をしたとして、炎上の対応に追われたり、実際に自宅に脅迫電話がかかってきたりする恐れもない。
しかし、本作のキャッチコピーに"自分のコメントに、責任をとれるか?"とあるように、ゲーマーたるもの、ゲームのなかで自らがとった選択と、その先に待つ結末については責任を持って受け止めるのが筋というもの。
華麗なコメントで収録を切り抜けたときの快感、そしてノルマ未達となった際にウメサワから届くメールを読んだときの虚脱感は、これを読んだ人にもぜひ一度味わってみてほしいと感じた次第だ。

都合により芸能人スキャンダルを擁護(不支持)するスタンスを示すも、意外にもっともらしいコメントになった図。"アドリブ"が利いたということにしておいてください。
なお、『コメンテーター』を手掛けたテバサキゲームズ代表のヒヅメ氏にお話をうかがったところ、本作は海外のインディーゲーム『The Republia Times』から着想を得ているとのこと。
架空国家の新聞社員として掲載記事を取捨選択するという『The Republia Times』のゲーム性に魅了されるも、当作品は日本語対応がなく、さらに現代日本とはかけ離れた情勢の国が舞台となっていたことから、この魅力を日本でも広めるにはどうすべきかと考えていったことが、『コメンテーター』開発のひとつのきっかけになったと明かしてくれた。
そのため『コメンテーター』では、テレビのニュース番組という日本人にとってなじみ深い舞台を設定。取り扱うニュースの内容も、現実の国内ニュースになぞらえたものにしたという。
徹底的な日本ナイズを施したうえで、日本的なブラックジョークもふんだんに盛り込んだ本作。日本人なら誰もが感情移入できてしまうような内容であり、"空気読み"的なゲーム性を好む国内ゲーマーを中心に広く受け入れられることだろう。
また日本文化に興味を持つ海外のゲーマーにとっても、日本人的な機微が詰まった作品として脚光を浴びる可能性は大いにあるはずだと感じた。
今回の試遊では、せっかくコメンテーターに抜擢されたにもかかわらず、八方美人の小市民的な立ち回りに終止してしまった筆者だが……正式リリースの暁には、華麗な"世論操作"で世の中をかき乱していきたいところだ。
『コメンテーター』はβ版を近日公開予定。興味を持った方は、ぜひSteamストアページからウィッシュリスト登録を済ませて続報を受け取ろう。