
重要なポイント
2025年3月8日(土)~9日(日)にかけて、吉祥寺・武蔵野公会堂で開催されたインディーゲームイベント、"TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025"(以下、TIGS 2025)。そのイベントに出展された『一緒にかえろう』のプレイレポート。親ガモになって子ガモを探す、愛らしさ満点の3Dアドベンチャー!
鳥に癒やしを求める人は多いことだろう。
なかでもカモはいい。丸みがあって、ふっくらしていて、幅広なくちばしは愛嬌がある。白鳥のような気品こそないものの、水辺を泳ぐ姿はどこか朗らかで、ハトよりよっぽど平和を象徴してくれているようにさえ思う。
カルガモ親子の引っ越し風景なんていったらもう最高だ。ぽてぽて歩く親鳥と、ちょこちょこ歩きで後に続く雛鳥たち。小動物の愛くるしい姿。自然界で育まれる親子の絆。動物を見守ることで摂取できる栄養素のすべてが、そこに詰まっていると言っても過言ではない。
インディーゲームサークル・honobonoが制作する3Dアドベンチャーゲーム『一緒にかえろう』は、そんなカモの親子の生態を巧みにゲームへと落とし込んだ魅力的な作品だ。
癒やし要素を強調してしまった手まえ、昨今話題の放置系ゲームや作業用ゲームを連想した人もいるかもしれないが、本作を試遊したなかでは絶妙な遊びごたえと晴れやかな達成感を味わうことができた。
家に帰りたくない子どもの心理を見抜こう
本作ではプレイヤーが親ガモを操作し、ステージ(フィールド)上に散らばった子ガモを探し集めていくことになる。
子ガモの総数は画面右下に明示されており、すべての子ガモを引き連れて巣に戻ってくることができればステージクリア。まさしく"一緒にかえろう"というわけだ。
いたってシンプルなルールだが、相手が子ガモと思って甘く見てはいけない。
この世にひとりとして同じ人がいないように、子ガモたちにもそれぞれ個性がある。なかには何かしらの欲求を抱えていて、それを満たしてあげない限りは一向に付いてきてくれない子ガモも。
たとえば、ハンググライダーを持った子ガモ。この子は自力で大空を飛べるようになる日が待ち遠しいのかもしれない。
この子のために、親としてしてあげられることは何か。ちょうどいいことに、そばにはブランコがある。だとしたら、いっしょにブランコを漕いで、そこからジャンプしてみたらどうだろう?
……と、このように本作では、子ガモの欲求を見抜く観察力と、それを満たしてあげるための素朴な発想力が試される。
ただ、謎解きが苦手な人も安心してほしい。親だってひとりの人間……もとい、1羽のカモだ。カモの身でできることは限られるゆえに、子ガモの欲求を満たすための解法も自ずと絞られてくる。
試遊版の時点で用意されていたアクションは、"走る"、"ジャンプ"、"鳴く"、"こどもを(背中に)乗せる"の4種類。ほかに"???"との操作もあったのだが、うっかり試すのを忘れてしまったのでぜひご自身の目で確かめてみてほしい。
今回遊べたステージでは制限時間や天敵の存在も見当たらなかったので、「コレでダメならつぎはアレをやってみよう」と、手を変え品を変え試してみるのがいいだろう。
観察力だの発想力だのと大げさなことを書いたが、ようするに大事なのは子ガモに向き合う"親心"なのである。
絵本のような世界を"カモの歩幅"で歩む贅沢体験
本作品の制作チームが「いままでにない表現を目指した」と語ってくれたように、本作はグラフィック面も大きな魅力のひとつであり、優しげなゲーム性と非常にマッチしていると感じた。
まるで絵の具で描かれたような、いかにも絵画的なキービジュアルが印象的な『一緒にかえろう』。その空気感が、そのまま3Dグラフィック化されていると言うべきか。
彩度が高めな鮮やかな色合いで描写されているにもかかわらず、どことなく"淡さ"を感じるのはローポリ的な表現を採用しているからか。カモたちを含むモノの輪郭線が極端なほどにジャギー(※)しているのも特徴的で、3Dゲームでありながらドット絵のような風合いを感じさせる。
それでいて、チープには見えないのも驚きだ。親ガモも子ガモも、特有の"まだら模様"がしっかりと再現されているし、遠目では平面に見えた草原もカメラ視点が寄れば葉っぱが細かく描写される。
切り株は根っこの部分にいたるまで複雑めに表現されているのに、転がっている丸太は素っ気なさすらある六角柱であり、ひとむかしまえの3Dゲームに感じたような懐かしさも漂う。かといって、細かく描写される部分とデフォルメが利いている部分がケンカすることもなく、統一感のある表現となっている。
全体的に飾らない牧歌的なグラフィックでありつつ、目を凝らせば緻密さが見えてくるように思えるのは筆者の気のせいではないはずだ。本作のグラフィック面の魅力をズバリ言語化できないのは不徳の極みだが、とにかくキービジュアルに惹かれるがまま試遊ブースに足を運んでみてよかったと心から感じている。
そして何よりも、こうした雰囲気のなかを、ぽてぽてと歩いていくカモたちがたまらなくかわいい。これまで長々と言葉を尽くしたが、本作の魅力はコントローラーを握って3歩も歩けばすぐに伝わるはずだ。
ユーザビリティが過剰なまでに行き届いた昨今のゲームに比べたら、親ガモの歩みのなんとノロマなことか。しかしながら、本作の絵本のような世界観を堪能しようと思ったら、"カモの歩幅"に勝るものはない。
親ガモの一歩一歩が、さながら物語の1ページとなり、子ガモを見つけるたびに新たな展開が巻き起こる。
次第に後ろを歩く子ガモが増えてくれば、そのぶんだけ絵面の愛らしさも指数関数的に増していき、長く伸びた隊列を見ればえも言われぬ達成感に浸れることだろう。
残す子ガモも2~3羽となれば、今度は親ガモとして我が子を早く見つけてあげなければという申し訳なさと使命感が湧いてくるし、最後の1羽を見つけたときの安堵感には思わずコントローラを握る手の力が抜けた。
かくして、あとは子ガモたちを連れ帰るだけとなったところで、気付けば親ガモたる自分自身が、名残惜しさから我が家に帰りたくなくなっている……そんな素敵なゲームだった。