1987年にファミリーコンピュータ用のRPGとしてリリースされた『ファイナルファンタジー』。
現在におけるまで、約35年以上もシリーズが続いており、それに付随して『ファイナルファンタジー』シリーズファンの仮説も多数存在しています。
16作品ものシリーズ本編と、数え切れないほどのスピンオフ作品を誇るこの作品には、さまざまな解釈や議論の余地が多くあります。
特定の仮説は長年にわたり語り継がれ、多くの人々がそれを真実だと信じるようになりましたが、スクウェア・エニックスはそのいずれも公式に言及していません。
『イブの三つの顔』のようなキャラクター構図は意図的である
『イブの三つの顔』とは、1957年のアメリカ映画。異なる性格の3人の女性が登場するのですが、しばしばそのキャラクター構図は、さまざまなメディアやコンテンツにおいて典型的・普遍的な設定としてよく目にすることもあります。
その3人のキャラクターの役割とは、落ち着いて頼りになる"妻"、そしてセクシーで自立した"誘惑者"、そして遊び心があり無邪気な"子ども"です。
このようなキャラ構図は、『ペルソナ』シリーズや、『ドラゴンエイジ』シリーズをはじめ、数多くのゲームでも見かけることができます。
そして『ファイナルファンタジー』シリーズでも、この三者の関係は複数の作品に登場します。たとえば、『ファイナルファンタジーX-2』では、ユウナが"妻"を、パインが"誘惑者"を、リュックが"子ども"をそれぞれ象徴しています。
また『ファイナルファンタジーVII』を見てみると、この構図は少し曖昧になります。ティファは見た目からは"誘惑者"と思われがちですが、実際はグループのなかでもっとも冷静で、"妻"を象徴しています。エアリスは家庭的な見た目でありながら自己主張が強く、ストリートスマートな面を持っているため、彼女が"誘惑者"を表しています。そして、ユフィの"子ども"としての役割は明らかです。
これらの表現は偶然だと考えるプレイヤーもいますが、『ファイナルファンタジーIV』、『ファイナルファンタジーV』、『ファイナルファンタジーVI』、『ファイナルファンタジーVIII』、『ファイナルファンタジーX』、『ファイナルファンタジーXII』、そして『ファイナルファンタジーXIII』にも見られるため、これが意図的でないと言うのは難しいかもしれません。
『クロノ・トリガー』のビッグスとウェッジは『ファイナルファンタジー』の世界と同じキャラクターである
ビッグスとウェッジというキャラクターは、多くの『ファイナルファンタジー』シリーズで見られますが、彼らが初めて登場したのは1994年に発売された『ファイナルファンタジーVI』です。このふたりは、ティナ・ブランフォードのナルシェ襲撃を手助けしますが、すぐに幻獣・ヴァリガルマンダに消されてしまいます。
また、1995年に発売されたスーパーファミコンの『クロノ・トリガー』では、同じ名前のビッグスとウェッジというふたりの兵士が登場し、ノルシュテイン・ベッケラーの実験小屋で働いています。本作のリリース後に、雑誌『Vジャンプ』は、「ふたりが『ファイナルファンタジーVI』で消えた後、『クロノ・トリガー』の世界に移動し、ノルシュテインのもとで新しい仕事を得た」という説を面白おかしく紹介しています。
なお、その説は、その後ビッグスとウェッジが他の多くの『ファイナルファンタジー』シリーズに登場したため、少し信憑性が薄れてきましたが、開発者が明確に否定したわけではありません。'90年代半ばには、この仮説に少しの真実があったのかもしれません。
エアリスは自分が死ぬことを知っていた(『ファイナルファンタジーVII』)
エアリスがセフィロスの手にかかって命を落とす場面は、ゲーム史上有名な出来事のひとつです。彼女の死は多くのプレイヤーに衝撃を与えました。本作のゲームディレクターの野村哲也氏は「死とは突然で予想外であるべき」と語っています。
年月が経つにつれて、エアリスが"忘らるる都"で祈りを捧げた時、自分の運命を完全に理解していたのではないかと考えるファンが増えてきました。
コスモキャニオンでブーゲンハーゲンが、「ホーリーを祈り、命の流れに戻ることで惑星を救う」と語ります。この時点ではメテオの詳細は明らかになっていませんが、セフィロスの意図を知ったエアリスは、世界を守るためには自らの死を受け入れるしかない、と考えたのかもしれません。
オズマは召喚獣である(『ファイナルファンタジーIX』)
『ファイナルファンタジーIX』における召喚獣は、マダイン・サリの召喚士族によって呼び出される強力なモンスターです。ガイアのクリスタルから生まれ、記憶から形成されたこれらは、恐ろしい破壊力を持つ守護者です。
オズマは、ゲーム中に登場するボスで、長いサイドクエスト"チョコボの穴掘り"をクリアすることでのみ到達できます。見た目は単なる浮かぶ球体にすぎないものの、オズマは『ファイナルファンタジーIX』でもっとも強力な敵の一体であり、その正体について多くのプレイヤーが推測しています。
長年にわたり、有力な仮説として、オズマは大衆に忘れ去られた召喚獣であり、その結果、現在のような色とりどりのエネルギーの塊に劣化してしまったというものがあります。この説は、オズマが"塚"で発見されることからも支持されています。
さらに、オズマを倒すとふゆう石のかけらをドロップします。このアイテムは、ダガーに召喚魔法アークを教えることができるため、この仮説にさらなる信憑性を加えています。
13の鏡像世界は『ファイナルファンタジー』シリーズの過去13作品を表している(『ファイナルファンタジーXIV』)
『ファイナルファンタジーXIV』の世界観は非常に複雑です。5つの拡張パックに渡って長く続くMMOのメインストーリーだけでも400時間以上のコンテンツがあり、ジョブやサイドクエストで得られる追加の設定も数百時間におよびます。
さらに、ゲーム内には他の『ファイナルファンタジー』シリーズからのキャラクターや場所も登場しますが、物語の膨大さと開発チームの緻密な作り込みから、これらは単なるファンサービスではないのではないかと考える人もいます。
ゲーム内では、プレイヤーは"原初世界"とも呼ばれる惑星ハイデリンにいます。昔、光と闇のバランスが崩壊したことで、"鏡像世界"とよばれる世界が宇宙に散らばり13個に分かれました。この"13"という数字を不思議に思うファンは多く、これは『ファイナルファンタジーXIV』以前に登場したシリーズ13作品のことではないか、とも言われています。
このややマニアックなファン理論について、ゲームのプロデューサー吉田直樹氏はコメントしていませんが、いまのところは、『ファイナルファンタジー』シリーズがこれらの13の世界によって表されていると想像するのは楽しいことです。
『ファイナルファンタジーX』と『ファイナルファンタジーVII』は繋がっている
一見すると、そうは思えないかもしれませんが、『ファイナルファンタジーVII』と『ファイナルファンタジーX』には共通のテーマがあります。両者の世界は大きく異なりますが、これらのゲームが少なくとも緩やかに繋がっているという証拠がいくつか見つかります。
『ファイナルファンタジーVII』では、ライフストリームが惑星に存在するすべての生命エネルギーを持っています。一方、『ファイナルファンタジーX』では、異界が亡くなった者の魂が宿る場所であり、それは生きている世界では"祈り子"として現れます。
さらに、『ファイナルファンタジーX-2』では、シンラというキャラクターが登場します。この名前は『ファイナルファンタジーVII』のファンにはすぐにピンとくるでしょう。この小さなディテールから見える要素について、両作品のディレクターである北瀬佳範氏は、2017年に掲載されたメディアのインタビューで完全には否定しませんでした。彼は以下のように答えています。
「同じ世界だとは断言しません。ただし、『ファイナルファンタジーX-2』のシンラはシナリオライターの(野島)一成が生み出したキャラクターで、彼がシンラを考えたとき、『ファイナルファンタジーX-2』の物語から数年後にこのキャラクターが成長し、神羅カンパニーを始めることを人々が想像してくれるといいなと思ったのです。ですから、彼がそこに少しほのめかしている部分はあります。とはいえ、同じ世界だとは言いません」
『ファイナルファンタジーVII』のジェノバと『クロノ・トリガー』のラヴォスは同じ種族である
'90年代、スクウェア・エニックスは次々と大ヒットゲームを生み出しました。そのなかには『クロノ・トリガー』(1995年)と『ファイナルファンタジーVII』(1997年)も含まれています。このふたつのゲームは、ほぼ同時期に開発されていたため、偶然の類似点があることは理解できますが、ファンのあいだではある詳細が意図的だったのではないかという憶測が飛び交っています。
『ファイナルファンタジーVII』のジェノバと『クロノ・トリガー』のラヴォスは、どちらも敵対する異星生命体で、それぞれの惑星に墜落してきた存在です。両者は惑星のエネルギーを吸収し、資源が尽きると新しい惑星に移動する習性があります。さらに、ジェノバの最終形態である"ジェノバSYNTHESIS"は、ラヴォスの殻を彷彿とさせる棘のある背中を持っているという指摘もあります。
ですが、開発者たちはそれぞれが同じ種族であることを明言したことはありません。