重要なポイント
過去の名作を現世代向けに復活させるリリース方式として、リマスター、リメイク、リブートがある。リマスターは視覚や音質を向上させ、リメイクはシナリオやシステムの大幅な改変、リブートは新たな物語や構成で新シリーズとして再構築する。これらは既存ファンのノスタルジーを喚起しつつ、新規ファン層の開拓も図っている。
ゲーム史が長大化してきたことにより、過去の名作の復活や、入手困難だったタイトルが再販されることも増えてきた。
その際に、リマスター、リメイク、リブートとさまざまなリリース方式が取られているが、実際のところ、それぞれにどんな違いがあるのだろうか?
<リマスターとは>オリジナルの内容をより現代風にアップデートしたもの
リマスターとはおもに、もととなるゲーム(オリジナル)のシステムやシナリオにはほとんど手を加えず、現世代機向けにビジュアルや音質などを向上させ、見映えを良くしたものを指す。
UI(ユーザーインタフェース)や操作性などを改善したり、おまけ程度に追加要素を加えたりすることもあるが、ゲームプレイやシナリオといった基幹部分に手が入ることはほぼない。
なお、ゲーム内容には一切の手を加えず、ほぼ同じゲームを別の媒体で発売することは、移植と呼ぶ。
また、リマスター版を開発する際に、オリジナル版に存在したゲームプレイに支障の出るような大きなバグは修正されるが、ユーザーのあいだですでに常識となっているような有益なバグ技はそのまま残されるといったケースもあり、そのあたりは開発の判断によって左右される部分である。
おもなリマスター作品
- 『The Last of Us Remastered』……オリジナル版は2013年にプレイステーション3で発売。『The Last of Us Remastered』はプレイステーション3の限界に挑戦したビジュアルを、プレイステーション4でさらに美しく編集し直したもので、翌年の2014年に発売された。また、本作は『The Last of Us Part I』として、2022年にもう一度作り直され、さらなる画質の向上が見られたが、マルチプレイ要素が削除された。
- 『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』……1992年発売の『ロマンシング サ・ガ』を2005年にリメイクした作品が『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』。その『ミンストレルソング』を、2022年にリマスターしたのが本作である。リマスターとはいえ、新ボスや新仲間キャラクターの追加、そして倍速機能といった追加オプションなど、ファンが求めていた改善が随所になされている。
- 『DARK SOULS REMASTERED』……2011年に発売された高難易度アクションRPG『DARK SOULS』のリマスター版。60fps対応やグラフィックの向上などといったシンプルなリマスターではあったが、もともとP2P通信を用いていたために不安定だったオンラインマルチプレイ機能がサーバー制になったのは、相当な進化である。
<リメイクとは>オリジナルのアイデンティティを重視しつつ大胆に再構築したもの
リメイクとはおもに、もととなるゲームのアイデンティティ(キャラクターや世界観など)は重視するが、まったく新しいシナリオ展開や、ゲームプレイの改変・追加など、新作を用意するのと同じくらい大胆にアレンジされたものを指す。
グラフィックや音声などのアップスケールはもちろんのこと、ドット絵で描かれていたビジュアルを3DCGで起こしたりと、現代のプレイヤーに向けた大規模な改変がなされている場合がほとんどだ。
シナリオについても、あらためて書き直されることで、原作を知っている人ならわかるセルフパロディ的な発言が盛り込まれたり、現在の情勢や常識を加味したうえで話の筋自体が変更されたりと、大幅に改変されるケースが目立つ。
また、オリジナル版から数十年を超えたリメイク作品では、オプション機能で、音声をリメイク版とオリジナル版で変えられるなど、往年のファンに向けた細かい配慮がなされている場合もある。
おもなリメイク作品
- 『ファイナルファンタジーVII リメイク』……オリジナル版の『ファイナルファンタジーVII』を、3部作のアクションRPGとして再構成するプロジェクトの1作目。ダイナミックな3Dアクションの戦闘に変化したほか、ストーリーも大幅な変更がなされている。
- 『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』……『サガ』シリーズでもっとも評価の高い『ロマンシング サ・ガ2』のリメイク。"皇帝の継承"、"閃き"、"フリーシナリオ"といった原作のユニークな点はそのままに、のちのシリーズで導入された"連携"、"タイムライン"といった要素を融合している。
- 『バイオハザード RE:4』……『バイオハザード』シリーズのナンバリング4作目となるタイトルを、カプコン独自のゲームエンジン"REエンジン"で再構築。ゲームプレイの根幹は変わらないものの、ナイフパリィやサブクエストの追加などいくつかのアップデートがなされた。
<リブートとは>:まったく新しいシリーズとして再構成されたもの
リブートとは、キャラクターや世界観などは引き継ぐものの、シナリオ上のお約束などを部分的に外す形で、まったく新しいシリーズとして再構成されたものを指す。
たとえば、プレイステーション2で発売されたアクションアドベンチャーゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズは、ギリシャ神話の神々との戦いが描かれたが、プレイステーション4でリブートされた際に、物語の舞台が北欧へと移り、北欧神話の神々との戦いに変更されている。
リメイクやリマスターと大きく異なる点は、リブート版は単なる旧作の作り直しではなく、旧作を踏まえたうえでの完全新作であるという点だ。なお、リブート版リリースの際には、オリジナル版と同じタイトル名が付けられることも多いので、表記がややこしくなるというのが悩ましい点でもある。
おもなリブート作品
- 『ゴッド・オブ・ウォー』(2018年)……オリジナル版『ゴッド・オブ・ウォー』は2005年発売。2018年のリブート版は、舞台がギリシャから北欧の地へと変更され、プレイ視点の変更や新しい戦闘システムなど、主要な要素が生まれ変わっている。
- 『DOOM』(2016年)……1993年にリリースされたオリジナル版『DOOM』と同じく、並みいる敵を薙ぎ倒していくゲームデザインではあるが、スキルツリーやパルクール要素の追加など、多くの点が進化している。
- 『トゥームレイダー』(2013年)……古参の冒険家ではなく、大学を出たばかりの考古学者という設定でリブートされた本作。スキルアップや武器のアップグレードといった要素も追加された。
リマスター・リメイク・ リブートの比較表
ゲームやシナリオ面の大幅な改変 | グラフィックやサウンドのアップスケール | 新規ファンへの訴求力 | |
リマスター | なし | あり | 弱め |
リメイク | あり | あり(オリジナル版との切り替え機能が付いている場合も多い) | やや強め |
リブート | あり | ほぼ新規で制作 | かなり強め |
なぜゲームメーカーは、<リマスター・リメイク・リブート>作品をリリースするのか?
なぜゲームメーカーはこれらの方法を取るのか、という点について考えてみると、ひとつそこにはノスタルジーへの訴求が挙げられるだろう。
「自分が若かったころに遊んで楽しかったゲームをもう一度遊びたいが、昔のゲームハードは手放してしまった」というプレイヤーは多いだろうし、また単純に昔のゲームは現代のゲームと比べて細かい部分が粗く、遊びづらいと思うこともあるだろう。それらの点を解消するために、現世代機向けに過去のゲームを届け直すというのは大変意義のあることだ。
また、ロングセラーとなっているIP(知的財産)の場合、新規ファン層の開拓というのも重要なポイントだ。
たとえば、『サイレントヒル』シリーズは名前こそ有名だが、これまでナンバリングタイトルの移植はほぼ行われておらず、遊びたくともなかなか手が出しづらい状態にあった。2024年10月にリリースされた『サイレントヒル2』のリメイクはタイミングとしてはバッチリだったとも言えるだろう。
今後も、懐かしさと新しさを感じられる素晴らしいリメイクやリマスター、そしてリブート作品に期待したい。