長所
- ”いつものスプラトゥーン”を遊べる安心感
- 新しい”ブキ”の使用感がよい
- ”サーモンラン”がさらに遊びやすく
- 簡単なプレイヤー情報も見られるように
短所
- 過去作と比較して、斬新さにはやや欠ける
マンメンミ! ……おっと失礼。『スプラトゥーン3』を遊びすぎて、のっけからイカ語のイカした挨拶をしてしまった。『スプラトゥーン3』は、2022年9月9日に任天堂からNintendo Switch向けに発売された作品。タイトルどおり『スプラトゥーン』シリーズの3作目である(ちなみに、過去作の発売日は初代『スプラトゥーン』が2015年5月28日、『スプラトゥーン2』が2017年7月21日)。
ジャンルはいわゆるサードパーソンシューティング(TPS)で、"イカやタコの姿"と"ヒトの姿"を自在に使い分ける不思議な生物が主人公(操作キャラクター)となる。プレイヤーはカラフルなインクを射出して周囲を塗りたくる"ブキ"を装備した主人公を操作し、立体感のあるステージを舞台に、さまざまなルールによる対戦・協力プレイ・ソロプレイ(ストーリー攻略)などに挑んでいく。
『スプラトゥーン3』は、過去シリーズの長所はしっかりと継承しつつも、新要素の追加や、かゆいところに手が届くマイナーチェンジで遊びやすさがグッと増しており、本記事ではそんな本作のプレイが日課になっている筆者目線での魅力を語っていく。
安定のクオリティ+αで楽しめるバトル
『スプラトゥーン』シリーズの主要モードである各種バトルは、もちろん『スプラトゥーン3』にも健在だ。4対4のチームに分かれ、3分間のあいだに自チームの色のインクでステージ内をどれだけ塗りつぶせるかを競う"ナワバリバトル"をメインに、"ガチ○○(エリア・ホコ・ヤグラ・アサリ)"という4種類のルールがある。これらはいずれも『スプラトゥーン2』でも遊べたもので、"ガチマッチ"の名称が“バンカラマッチ”になったり、一部ルールでは細かい仕様変更があったりはしているが、大枠は変わっていない。『スプラトゥーン2』のプレイ経験がある人なら、すんなりと入っていけるだろう。
バトル関連の追加要素でとくに大きいものは、やはり"ブキ"だろうか。『スプラトゥーン3』では"ワイパー"と"ストリンガー"という2種のカテゴリが追加された。
"ワイパー"は横に振るとインクを中~遠距離に飛ばし、溜めると剣のように振り抜く。振り抜き攻撃は敵に当てると基本的に一撃で倒すことができ、「パキン!」という効果音も相まってバツグンの爽快感を得られるのが心地よい。
また、"ストリンガー"は弓矢のような“ブキ”で、溜める時間によって矢(インク)を飛ばす距離や強さを調節できる。敵に直接当てるには鍛錬が必要だが、地面に落ちた矢が弾けて敵にダメージを与えられる"ブキ"もある。筆者は普段から中~遠距離で戦うスタイルなので実際に使いこんだが、敵に直接矢を当てられると「パシュン!」と鳴って気持ちいいし、塗り性能も高くて満足だった。
ほかの追加要素で筆者が好きだと感じたのが、スタート時(敵にやられた際のリスタートも含む)に、上空からキャラクター(主人公)をプレイヤー自身が射出する仕組みだ。着地点をある程度自分で操作したり、着地後に移動速度が数秒間アップしたりするメリットも嬉しいが、なにより「バシューン!」という音とともにキャラクターが高速で飛んでいくときに爽快感を得られるのだ。あくまでも感覚だが、この仕様はおそらく敵にやられた際のストレス緩和にも少なからず寄与しているのではないかと思っている。
さらに、バトルまえに入場するロビーで"ブキ"やアクションの練習ができるようになったのも嬉しい変更点のひとつ。過去作では試し打ちをするためには毎回"ブキ屋"に行き、該当の"ブキ"を選んで練習場に入る必要があったが、その手間がまるっとなくなった(もちろん"ブキ屋"での試し打ちもできる)。ロビーではマッチングを待つあいだにもキャラクターを動かせるので手持ちぶさたになりにくいし、敵を正確に狙うためのエイム練習が欠かせない"ブキ"の使い手にも多大なメリットを与えたはずだ。
"イクラ発射"でさらなる高みへ! "サーモンラン"もパワーアップ
4人1チームとなり、海から集団で押し寄せる"シャケ"たちを倒して"金イクラ"をひたすら集める闇バイト……じゃなくて(笑)、協力プレイモード“サーモンラン”も『スプラトゥーン2』から引き続き登場。いわゆるPvEモード(プレイヤー対コンピューター)なので、対人戦が苦手な人でも遊びやすいのが特徴だ。
『スプラトゥーン2』のときはゲームの仕様で週に1日ほどプレイできない時間があったが、『スプラトゥーン3』ではそれが撤廃され、世のなかのユーザーが狂喜乱舞した(はず)。また、難易度のランク上限も『スプラトゥーン2』では"たつじん"が最高だったが、『スプラトゥーン3』でその上の"でんせつ"が登場し、さらなるやり込みが可能になったのもグッド。
バトル同様に"サーモンラン"も基本的な遊びかたは変わっていないが、大きな追加要素として"イクラ発射"ができるようになった。『スプラトゥーン2』では"金イクラ"を納品するためにキャラクターを専用のコンテナのそばまで移動させる必要があったが、『スプラトゥーン』ではインクを消費して、離れた場所に"金イクラ"を飛ばせるのだ。
これを駆使すれば、自分がコンテナからかなり離れた場所にいても味方にパスして代わりに入れてもらうことが可能。制限時間ギリギリで納品ノルマ個数に届かないなどの悲しいケースが減ると同時に、納品の効率化によってハイスコアを狙いやすくもなった。"サーモンラン"では報酬を効率よく獲得するためにスコアも重要なので、この変更は大きい。
しかし、有利になったのは味方だけではなかった! "金イクラ"を守ろうと必死の"シャケ"(コンピューター)たちは、『スプラトゥーン3』で新たな仲間を携えてきたのである。新登場したのは"ハシラ"、"ナベブタ"、"テッキュウ"、"ダイバー"、"ドロシャケ"などで、いずれもひとクセもふたクセもある厄介な敵となっている。とくに、遠方の水際からコンテナ目がけて大砲で鉄球を発射し、着弾地点に大ダメージを受ける波紋を2回も生じさせる"テッキュウ"は、ユーザーから強いウラミを買い続けている。
さらに、"オカシラシャケ"という大ボス級のシャケも新登場。この敵は何度かバイトに挑戦し、3wave目(通常の最終wave)をクリアしたときに出現することがある。巨体から繰り出される攻撃をまともに食らうと一撃で倒される可能性が高く、しかも戦っている最中は通常時と同様に"ザコシャケ"や"オオモノシャケ"も襲ってくるので、プレイ中はてんやわんやである。ちなみに"オカシラシャケ"は全部で3種類存在し、2024年6月にはこの3種類が"オカシラ連合"を組んで同時に襲撃してくる悪夢のような(実際はめちゃくちゃ楽しい)イベントが初めて開催された。
率直に言って、『スプラトゥーン2』の時点で十分に面白かった"サーモンラン"は、"ブキ"や敵、ステージの追加によって『スプラトゥーン3』でさらにパワーアップしたと筆者は感じた。もはや、このモードだけでも1本のゲームとして成立するクオリティと言っても過言ではないはずだ。
個性をゆる~く演出できる"プレート"
『スプラトゥーン3』では、ユーザープロフィールとしての機能を果たす"プレート"を設定できるようになった。"プレート"にはユーザーの名前が大きめに記されており、それ以外にも自分で組み合わせを決める"二つ名"や"バッジ"を付けられる。
ほかのユーザーが作成した"プレート"は、バンカラ街(『スプラトゥーン3』拠点となる街)にランダムに出現するアバターを調べたり、バトルの開始時などに見ることができる。「この人はこの"ブキ"が得意なのか」、「面白い二つ名をつけているな~」など、いろいろな人の個性が垣間見える点がなんとも楽しい。フリーコメント的な要素がないので、内容の主張が強くなりすぎず、必然的にゆる~い感じになるのもイイ。
"プレート"と二つ名はロビーにある"くじ"のほか、バトルや"サーモンラン"でランクを上げると報酬をもらえる"カタログ"などから入手できる。また、"バッジ"は「"ブキ"のじゅくれん度を○○にする」といった条件を満たすと自動的にもらえる。いわば一種の収集要素になっており、『スプラトゥーン3』を遊べば遊ぶほど獲得できるものが増えていくので、集める過程も楽しめるわけだ。
過去作にもありそうでなかったこの要素、「地味(?)ながらも追加されてよかったな」とひっそり感じたのであった。
間口の広さも人気を支える
正直に言えば、『スプラトゥーン3』は過去作と総合的に比較しても「これは革新的!」と感じる要素が多くはなかった。しかし、細かい点をひとつひとつ見ていけばシリーズを重ねるごとに着実に遊びやすく進化していることは間違いなく、なにより自分が「本当に面白い」と感じているからこそ、自然とプレイが日課になっているのだとも思う。
ポップでオシャレな作風(デザイン)に爽快なBGMの組み合わせも、幅広いユーザーが本作に馴染みやすさをおぼえる要因のひとつだろう。余談だが、2024年10月31日に任天堂から音楽配信アプリ『Nintendo Music』がリリースされたことで、『スプラトゥーン3』のBGMがいつでも聴けるようになったのはありがたい限りである。
ゲーム初心者もやりこみ勢もまるっと受け入れる懐の深さをもつ『スプラトゥーン』シリーズは、2025年で10周年をむかえる。まだ見ぬ『スプラトゥーン4』にかかるユーザーの期待も相当なものだと思われるが、すでに確立されたベースの楽しさはそのままに進化を続け、長く愛されるコンテンツであってほしいと切に願う。