和の世界観に戦略性とアクションが絶妙なバランスで両立、『祇:Path of the Goddess』

アクション好きにも刺さる戦略ゲーム

ライター /

8.4
評価
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8.6
ユーザーの評価
投稿数: 5
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タワーディフェンスの戦略ゲームでありながら、アクションも楽しむことができる。神道の要素を取り入れた世界観も印象的。

長所

  • 独創的な和の世界観
  • 妖怪をモチーフにした個性豊かで禍々(まがまが)しい敵勢力
  • プレイヤーも積極的に戦うタワーディフェンス×アクション
  • アクションゲーム好きにもオススメできる戦略ゲーム

短所

  • アクションがある程度要求されるボス戦

『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』は、タワーディフェンスと剣舞アクションの要素を組み合わせた戦略アクションゲームである。和風ファンタジーを思わせる世界観は、リリース前の時点(体験版)でも話題になっていたほどだ。さらに、発売後には人間国宝・桐竹勘十郎氏による監修・出演での文楽(人形浄瑠璃)コラボ映像を配信し、本作の前日譚を描いた演目『山祇祭祀傳 巫女の定の段』が披露されるなど、非常に力の入ったタイトルである。

"和"のテイストを前面に押し出した世界観

『祇:Path of the Goddess』穢れを祓う様子
©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

畏哭(いこく)の穢れを祓う舞技。

ゲームの大筋の流れは、"畏哭(いこく)"と呼ばれる異形の化物によって変わり果てた村々の穢れ(けがれ)を祓い(はらい)、畏哭に奪われた神が宿る十二の"面"を取り戻すというもの。プレイヤーは穢れを祓う巫女"世代(よしろ)"の護人(まもりびと)である"宗(そう)"として村人を救い、彼らと協力して畏哭と戦っていく。ジャンルは"神楽戦略活劇"と謳われているように、日本古来の神に捧げる"神楽(かぐら)"が大きな意味を持っており、畏哭が現れる異界の門と化してしまった村々の鳥居のまえで神楽を舞うことで、それを祓い村を救うことが可能だ。本作にはこのような神楽、鳥居といった神道の要素が数多く存在し、和を感じることができる神秘的で幻想的な世界観が大きな魅力となっている。

いっぽう、"宗"たちの敵である畏哭は、多種多様な個体が存在する。とても禍々(まがまが)しく、おのおのが個性的な見た目をしているのだが、"餓鬼(がき)"や"かまいたち"という名前からもわかるように、いずれも妖怪をモチーフにしている。そのため、恐ろしい見た目をした畏哭も名前を見ると「この名前の妖怪は知っているぞ!」と、敵ながらちょっとした親近感を持ってプレイできるのは面白く、まさに日本人ならではの楽しみ方のひとつかもしれない。ゲーム性はもちろん、独創的な和の世界観を味わうという意味でも、本作は非常にプレイする価値のある作品となっている。

アクションと戦略が補い合うタワーディフェンス

『祇:Path of the Goddess』畏哭との戦闘
©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

村人と協力して畏哭を迎撃。

タワーディフェンス要素を持つ本作は、日中と夜とでプレイヤーがとるべき行動が変化する。畏哭は夜になると群を成して異界の門から現れ、穢れを祓いに来た巫女の"世代(よしろ)"を襲おうとする。日中はそれまでに可能な限り穢れを祓い村人たちを救出。村人は近接攻撃が得意な"杣人(そまびと)"、遠距離攻撃が可能な"弓取り"など、"職業"を与えることで宗とともに戦ってくれる。そんな村人たちを好きな職業に振り分け、"世代(よしろ)"が襲われないよう夜に備えて村の各所に配置する必要がある。

また、一部のステージを除いて、"世代(よしろ)"が異界の門となっている鳥居に到達し、そこで穢れを祓う舞を踊ることでステージクリアとなるのだが、そのためにはプレイヤーが鳥居へと続く"霊道"を引かなければならない。"世代(よしろ)"は日中のあいだだけ霊道に沿ってゆっくりと鳥居へ向かうので、夜は彼女がどの位置にいるかで戦略も大きく変化。敵の進行ルートを考えて味方の配置を変えたり、ステージに備え付けてあるギミックを利用して敵を妨害したりと、あらゆる手を使って朝日が昇るまで"世代(よしろ)"を守り切らなければならない。まさにプレイヤーの頭脳が試される、戦略ゲームが好きな人に刺さるゲームシステムだ。

『祇:Path of the Goddess』畏哭のかまいたち

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と、ここまでの説明だと、味方ユニットを配置して敵から対象を守り切るオーソドックスなタワーディフェンスなのだが、本作ではこれにアクション要素が大きく絡んでくるのがポイント。多くのタワーディフェンスは味方を適切な場所に配置できるかなど、敵が襲来してくるまでの行動が戦略を左右していたが、本作ではプレイヤーが夜間の防衛戦にも積極的に参加でき、その立ち回りと活躍次第で戦況が大きく変化する。味方ユニットの数が足りなかったり、防御が手薄な箇所があっても、そのぶんプレイヤー自身が戦うことで補えるようになっている。そのため、戦略ゲームであるいっぽう、アクションが得意なプレイヤーにも非常に取っつきやすい。

また、本作には巨大な畏哭と戦うボス戦のステージも多数存在。ボスの攻撃が"世代(よしろ)"に向かないよう注意しつつ、ボスがひるんだ際には味方に一斉突撃の指示を出すなど、村での戦いとはまた違った立ち回りを楽しむことができる。そのほか、船の上で四方八方から襲ってくる畏哭を迎え撃つユニークな戦場などもあり、そのステージ構成は非常にバラエティーに富んでいる。そんな、プレイヤーを飽きさせない構成や演出も本作の魅力のひとつだ。

戦略ゲームが苦手な人にもオススメできるタイトル

『祇:Path of the Goddess』和菓子を食べる世代

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先述したように、本作は戦略ゲームでありながら、そういったジャンルが得意ではないという人もアクションで不足分を補うことができる、とても稀有なゲーム性を持っている。くわえて、攻略を進めていくと各職業や"宗"自身を強化できる要素も増えていき、より多様な戦略やアクションで敵を迎え撃つことが可能になる。だからこそ、タワーディフェンスが好きだという人はもちろん、アクションが得意な人にもオススメできる。

ストーリーは、穢れを祓って村を救い十二の"面"を取り戻す、という、とてもシンプルな内容だが、攻略の道中で手に入る絵巻物から世界観を深堀りすることも可能だ。"世代(よしろ)"が大好きな和菓子集めや、村人の関係性を知ることができる(フレーバー)テキストなど、本作をより深く楽しめる要素も数多く用意されており、純粋にタワーディフェンスを遊びたい人や独創的な世界観に浸りたい人など、プレイヤーのスタイルに合わせた楽しみ方ができるのも非常にありがたい。

筆者個人としては、和風スタイルの"純粋なタワーディフェンスゲーム"と思ってプレイし始めたので、最初はアクション要素にもかなり重点が置かれていることに驚かされたのが正直なところ。だが、そのぶんこれまでのタワーディフェンスゲームにないプレイ体験ができ、いい意味で予想を覆す印象的なゲームとなった。

©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

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