長所
- ダークな雰囲気漂う独自の世界観
- 本編を遊んだプレイヤーでも満足できるボリューム
- 新たな武器、アイテムなどの追加要素が豊富
- 考察がはかどる各地の探索やアイテム収集
短所
- 本編以上に高難易度で根気が求められる
『ELDEN RING(エルデンリング)』のダウンロードコンテンツ(以下、DLC)『SHADOW OF THE ERDTREE(シャドウ オブ ジ エルドツリー)』は、『DARK SOULS(ダークソウル)』などの『ソウル』シリーズを手掛けたフロム・ソフトウェアの宮崎英高氏がディレクターを務めるアクションRPG。高難度で、敵に何度も倒されながら行動パターンや立ち回りを覚えていき攻略を目指していく、いわゆる"死にゲー"(と呼ばれるジャンル)の名作を生み出してきた宮崎氏だが、『ELDEN RING』ではさらに"オープンワールド"の要素を組み合わせ大ヒットさせた。世界累計出荷本数が2500万本を記録(2024年6月現在)するなど、世界中のゲーマーを"死にゲー"の虜にさせたビッグタイトルである。
そんな『ELDEN RING』待望のDLCが話題にならないわけもなく、『SHADOW OF THE ERDTREE』はリリース(2024年6月21日)から3日間でなんと世界累計売上本数500万本を突破した。
新たな地は広大で敵はより強力に
まず筆者についてだが、"死にゲー"が大好きないっぽうで、悲しいことにまったくもって得意ではない。『ELDEN RING』本編では、友人がレベル100前後で最後のボスである"エルデの獣"を倒したのに対し、筆者が倒せたときのレベルは150超え。今回のDLC解放のために倒さなければいけないボスのひとり"モーグ"にも、ひさびさのプレイとはいえ幾度となく返り討ちにあい、「もしかして、DLCをプレイすることさえできないのでは……」と、内心かなり焦ったくらいだ。
そんな筆者が必死の思いで辿りるいた"DLCのフィールド"は、ゲーム本編で冒険した狭間の地とは異なる"影の地"と呼ばれる場所。"狭間の地"もかなりの広さだったが、"影の地"も同じくらいに広大で探索しがいのあるオープンワールドになっている。
そんなDLCでまず気になることと言えば、やはり敵の強さ。本編でも100をゆうに超える"死"を乗り越えてきた筆者だが、DLCをプレイして感じたのが、敵の攻撃力がとにかく高い! "影の地"に降り立って早々、最初に出会った名前も表示されないモブの敵に殺され唖然。最初のボス戦ではボウガンの攻撃で文字通り秒殺されてしまうほどだ。それゆえ、相手によっては本編以上に死を重ね、粘り強くプレイしながら勝利を掴み取る必要がある。
では、クリアの見込みがまったくないほど難しいかといえば、けっしてそうではない。本編でもそうだったが、本作はオープンワールドゆえにけっして一本道ではなく、攻略できないと感じれば別のルートからのアプローチも可能。攻略手段やルートが数多く用意されているのが大きな魅力だ。
筆者の場合は"双月の騎士レラーナ"というボスがあまりにも強く、「これはダメだ。どうしても勝てる未来が見えない……」と、数十回殺されのちに討伐を一時断念。"彼女(ボス)"がいる砦よりもさらに先にある城を探索すると、新たな武器"デュエリングシールド"を発見したのだが、これがなんと盾に槍が付いた刺突盾となっており、防御をしながら攻撃も可能という優れものだった。本編では見たことのない種類の武器に可能性を見出した筆者は、さっそくこれを強化してレラーナに再戦。これまでの苦戦が嘘だったかのように善戦し、見事勝利を収めた。
このように、DLCには本編になかった個性的な武器や新たな強化アイテムなど、攻略の糸口になるものも数多く用意されており、広大なフィールドの各地で見つけることが可能。本筋の攻略はもちろん、ちょっとした寄り道でもプレイヤーを存分に楽しませてくれる。
また、敵がさらに強くなったということは、そのぶん倒したときのカタルシスが大きいのは言うまでもない。筆者はレラーナを倒した際は、何度も殺されたこともあって「よしっ! どうだちくしょう!!」と一人暮らしのアパートで叫んでいた。本編以上の解放感を味わいたいという人に、今回のDLCはまさにうってつけだ。
探索、考察がはかどる断片的な情報も健在
『ELDEN RING』の本編では、プレイヤーが王となるため狭間の地を冒険。かつてこの地を支配していた女王"マリカ"の血を引く種族"デミゴッド"などさまざまな者と対峙し、ときには協力しながら巨大な"黄金樹"を目指すストーリー楽しむことができた。
いっぽうで、各キャラクターのバックボーンといったゲームへの没入感をより深めてくれる細かい設定は、ただプレイするだけでは見えてこない。各地の碑文、入手したアイテムのフレーバーテキストなどにある断片的な情報から少しずつ見えてくるため、ゲーム発売当初は世界中のプレイヤーたちが狭間の地をくまなく探索。本作をより深く理解するため、アイテムを集めに奔走しては考察に勤しんでいた。
そして今回のDLCでは、"影の地"へと向かったデミゴッドのひとり"ミケラ"の足跡を追うというのが大まかな流れなのだが、それ以外の部分は本編同様、各地を巡って得られる情報を集め推察していくことになる。そもそも、"ミケラ"については本編でも情報が少なく、兄と呼ばれているいっぽうで、女性としての記述もあったりと謎が多かったキャラクターだ。多くのプレイヤーが"ミケラ"についてはもちろん、なぜ"影の地"へ向かったのか、どんな思惑があるのかなど、プレイ前から気になっていたはずだ。DLCにはそんなプレイヤーたちの知識欲を大いに刺激する情報が、新たなアイテムなどと同様に各地に散らばっており、ストーリーの攻略と合わせてとてもやりがいのある要素となっている。
また"ミケラ"以外にも、"影の地"とはいったい何なのか、新たに登場する"メスメル"といったの新キャラクターについてなど、DLCでも気になる要素は盛りだくさん。本編でさまざまな情報を収集、考察をしていたプレイヤーにとっては、これらの要素を解き明かしていくだけでも十分プレイする価値のある内容だ。
ボリュームは申し分なし! 本編をクリアした人はプレイすべし
先述したように、DLCは本編よりも高難易度で、根気が求められるものとなっている。ただし、筆者のような"死にゲー"があまり得意ではない人でもプレイすることは可能。筆者は幾度となく屍をさらしながらも、少しずつ着実に攻略を進められている。攻略スピードはほかのプレイヤーよりも遅いだろうが、完全に手詰まりという状況には陥っていない。どうしても敵が強く先へ進むことができないときは、一度諦めて別の場所へ行ったみたり、装備や戦い方を見直すなど、ときにはアプローチを大きく変えることで新たな活路も見えてくるため、試行錯誤が好きな人にとってもやりがいのある内容と言えるだろう。
また、ストーリーをクリアしたあと、または攻略途中の息抜きに各地でアイテムを収集し、自身の強化に役立てたり、フレーバーテキストからさまざまな考察を巡らせたりと、本筋以外でもプレイヤーを楽しませてくれる要素は盛りだくさん。ゲームのボリュームに関しては、巷で"ELDEN RING2"と呼ばれているくらい申し分のないもので、筆者のような本編を何十時間も遊んだプレイヤーでも満足させてくれる。むしろ、本編をプレイした筆者にとっては、プレイしない理由が見つからないといっても過言ではないDLCだ。
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