"作る"ことに特化した潔いゲーム性が魅力、『Satisfactory』にある純粋な"工場作り"のおもしろさ

効率的な工場運営に特化したゲーム性が魅力

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未開の惑星で工場を作る。ただ"それだけ"をトコトン突き詰め、ストレスなく工場作りに没頭できるタイトル。建築系のゲームに興味がなくても、触っていればいつのまにかトリコに。

長所

  • 工場運営に特化したゲーム性
  • ストレスフリーな建築要素
  • スパイスの効いたブラック(企業)ジョーク
  • 未来的かつ工業的な施設デザイン
  • 何百時間も遊べる発展性

短所

  • 工場運営以外の要素が乏しい
  • 効率的に進めないと非常に時間のかかるセクションがある

~未開の惑星に、ドデカい工場を作ってみないか。

あなたが開拓し、あなたが整え、あなたがすべてを運営する。

そんな、理想の工場を~

……いきなり意味不明な勧誘(メッセージ)から始めてしまったが、どうか怖がらないでほしい。これはこれから本記事でレビューする『Satisfactory(サティスファクトリー)』のゲーム性についてざっくり語っただけである。

『Satisfactory』は5年以上のアーリーアクセスを経て、2024年9月に正式リリースされた工場建築ゲームである。

本作においてプレイヤーがやることは、とにもかくにも"工場を作る"こと。それ以外は(ほぼ)なんにもない。キャラクターが寝たり起きたり、なにかを食べてお腹を満たしたり、水を飲んだりすることもない。あるのはただ、自身の所属する企業のために、惑星間を繋ぐ軌道エレベーターを建築していくという目的だけ。

いや、本当に"それだけ"なのだ。驚いたことに。

『Satisfactory』のゲーム画面。巨大な工場が広がっている。

©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

ストイックに工場を作れ、なにもかも忘れて

近いジャンルで言うなれば、本作は『Minecraft』や『ARK: Survival Evolved』のような"オープンワールドサバイバルクラフト"というものにあたる。とはいえ前述のとおり、キャラクターが食べたり飲んだり休んだりして生命を維持する必要がないので、より正確に言うならば、"オープンワールド・Notサバイバル・クラフト"みたいな感じだろうか。

やることはひたすらに、惑星間を繋ぐ軌道エレベーターを建築するための資材集めと、その加工のために工場を建築すること。たとえば鉄が必要なら、鉄の鉱脈を探して、デッカい削岩機を置いて、ベルトコンベアを引いて製錬炉に繋げて、精錬したものをまたコンベア経由で加工場に流して……なんてことをくり返していく。

『Satisfactory』のゲーム画面。鉄のインゴットを使って鉄のロッドを作ろうとしている。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

機械は電力さえあれば動くので、プレイヤーがいちいち手動で素材を加工しなくてよい。

『Satisfactory』のゲーム画面。銅線を使ってケーブルを作ろうとしている。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

手動で物を作ることもできるが、効率は悪い。建築資材がなくなったときの"詰み防止用"といったところだろうか。

言ってしまえばそれだけのゲームなのだけど、その"それだけ"がとにかく楽しい。メカメカしいクールな生産ライン(以下、ライン)をどんどん作っていくその見た目のカッコよさ……なんてのも理由のひとつだが、いちばん楽しいのは効率的なラインの組みかたを考えることだ。

削岩機や製錬炉、加工場にはそれぞれ「分間○○個生産シマス」という条件が定められている。

これはあくまでも一例だが、

  • 削岩機は分間4個のペースで鉄鉱石を生み出す
  • 製錬炉は鉄鉱石を分間2個ずつ鉄に製錬できる
  • 加工場は分間で鉄2個を6個の鉄パイプへと加工する

みたいな状況だとしよう。この状況で、もっとも効率よく鉄パイプを作ることができるラインを組む方法を考えるわけだ。

「削岩機は分間4個、製錬炉が分間2個だから、削岩機ひとつに対してふたつの製錬炉を作れば分間4個の鉄ができるな……。加工場は1分間に2個の鉄を加工できるから、じゃあ加工場もふたつ作れば1分間に鉄パイプが12個作成できるぞ、ウフフフ……」といった具合に。

加工するスピードに対して資源の生産スピードが遅ければ機械が止まってロスになるし、逆に速くても資源が詰まって同じくロスになる。このロスを解消するのが楽しいのだ。さらに2個以上、3個以上、4個以上の資材を組み合わせて加工する機械なんかもある。

「最終的に使いたいあのデカい加工場は分間0.5個で、必要なパーツはあれが4個、あれが12個、あれが8個だから……あ、あそこのラインが追い付いてなくてロスしてるしこっちの加工場にも流れるようにして、そんであそこに小さい加工場を作れば……ブツブツブツブツ」と、ひたすらに検証をくり返し、どんどん工場を大きくしていく。

「キレイにラインが組めたなー」と思ったら、数分後には資材が枯渇して生産がストップしてるなんてこともザラで、またそこで頭を抱えながらラインを再構築していったりする。

これがもう、言葉を選ばずに言うならば"アホみたいに楽しい"。トライ&エラーで効率をどんどん良くしていくときの"脳を使っている"感がたまらなくおもしろいのである。

ゲームを進めていけばいくほど新たな加工場がアンロックされていき、工場のラインもより複雑なものが求められるようになる。新たな課題がどんどんと出てくるため、プレイをしていてとにかく飽きない。

『Satisfactory』のゲーム画面。ごちゃごちゃしたベルトコンベアが重なり合う工場。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

どんどん工場が複雑化していくと効率もヘッタクレもないように見えるが、意外とちゃんと動いている。

『Satisfactory』のゲーム画面。ごちゃごちゃしたベルトコンベアが重なり合う工場。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

工場を作った身からすれば。この九龍城砦みたいな継ぎ足し感が愛おしいというものである……別に作り直すのが面倒だったわけでは、ない。

建築と解体は一瞬で完了し、また解体時は使った資材が100パーセント戻ってくるため、「とりあえず作ってからいろいろ考えるか」なんてこともできる。建築に使う資材も少なく、移設や増設、解体などにかかるストレスはほぼないと言ってもいい。

昼夜の概念があるオープンワールドゲームにありがちな、"視界の悪い夜をどう過ごすのか"といった問題もない。本作の夜は昼と同じぐらい明るいため、昼夜を問わず作業ができるからだ。

食事に休憩、睡眠の必要がない……というのは、なにも「ブラックな労働を体験させてやる!」ということではなく、"ゲームのコンセプト的に必要がなかった"からだ。とにかく"効率的な工場を運営し、それ以外のストレスは極力減らす"という姿勢が随所に垣間見えるのが、このゲームの大きな特徴だと言えるだろう。

『Satisfactory』のゲーム画面。星のまたたく夜空に、巨大な建造物が写りこんでいる。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

本作の夜はとっても星がキレイ。未開の惑星で見る星空に思いを馳せる……なんてステキさもある(なお、横では空気を汚しまくる工場がずっと稼働しており、その工場の作成者も自分であるものとする)。

"効率的な工場運営"のみの一点突破、ハマると強いがハマらない人はハマらない

このゲームの懸念点を挙げるならば、とにかくハマらない人はまったくハマらないことだろうか。どんなゲームにだってそれは言えるだろうが、『Satisfactry』はとくにそうだ。先ほども書いたが、あまりにも"効率的な工場を運営する"ことに全力なゲームなため、そこにピンとこなければとことんやる気が出てこない。

ビークルを使って未知の惑星を探索! とか、原生生物との戦闘! みたいな要素もあるっちゃあるが、正直それらはかなーり薄い。フィールドは広く、とても幻想的な風景が広がりキレイなのだが、探索の目的は貴重な資源が取れる場所を探す……ということにあるため、探索のみに主眼を置いてのゲームプレイは(もちろん人それぞれではあるものの)あまり深い楽しさが得られるものではない。あくまでも工場で一定数のパーツができるまでの時間つぶし、ぐらいに留めておくものだと思う。

また、軌道エレベーターの建築に使用する資材の量が非常に膨大で、ちゃんと効率よく進めないと、一部の段階では非常に長いあいだ"工場が動くのを待つだけ"な時間が生まれてしまう。繰り返しとなるが、とにかく工場運営に特化したゲーム性であるため、ゲーム内で時間を潰す手段がほぼないに等しい。これは正式サービスに伴いかなり改善された部分ではあるが、それでもまだ目立つ部分ではある。

『Satisfactory』のストアページ画面。タグには基地建築、自動化、オープンワールド、クラフトとある。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

命のやり取りといった緊張感を求めてこのゲームを触るのはオススメしない。現にSteamにおけるストアページのタグには"サバイバル"や"アクション"の文字はない。

騙されたと思ってラインをひとつ作ってほしい

ただ、このゲームの間口が狭いかというと、個人的にはそうは思わない。どちらかというと、その"効率化の沼"に落とすための導線がすごく丁寧なゲームだと感じている。

ぶっちゃけた話、筆者はその"効率的な工場運営"にまっっったくと言っていいほど興味がなかった人間だ(ハウジングなどの建築系に全然興味がなかった)。よく友人とこういうオープンワールドサバイバルクラフトのゲームを遊ぶのだが、建築要素はひとりの友人が一手に担い、筆者を含めたほかの人たちはただ気ままに狩猟や農耕、探索を楽しむのであった。

しかし、このゲームは違う。並みのクラフトゲームとはワケが違う。建築(における煩わしい手順や操作など)に関するストレスがほぼほぼ撤廃されており、すごくカジュアルに効率的な"工場の運営だけ"を楽しませてくれる。だからこそ、純粋な"おもしろさ"をダイレクトに感じさせてくれる。

『Satisfactory』のゲーム画面。巨大な原子力発電所の後方に、核廃棄物の処理施設がそびえ立っている。
©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

画面奥の細い建造物は、筆者が作った"(有用に消費する方法がない)核廃棄物を貯めておくだけ"の場所。未来への希望を込めて、"夢への懸け橋"と命名した。実際はただ環境汚染に蓋をしただけな最悪の施設である。

そしていちど"おもしろい"と思ってしまえばもう止まらない。あとは「軌道エレベーターに必要なパーツはアレで、ソレを作るにはあのラインからあのパーツを流してきて……」なんてことをずっと考える始末である。ハウジングが得意な友人の作るラインを参考にしたり、とんでもない遠い距離から資材を運搬するラインを作った友人に驚嘆したり、自分の作ったラインをみんなで検討しながら効率を突き詰めたり……そこにはただ"楽しい"という思いだけがあった。

「あんまり建築ゲームには興味がないし、この作品が合うかどうかが不安だな……」なんて思った人は、騙されたと思ってどうかいちどプレイしてみてほしい。そしてラインを、ひとつでもいいから作ってほしい。それだけできっと、なにか、わかるはずだから。

『Satisfactory』のゲーム画面。巨大な工場が広がっている。

©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

©2024 Coffee Stain Studios. Developed by Coffee Stain Studios. Published by Coffee Stain Publishing. All rights reserved.

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