長所
- 安すぎるコスパのよさ
- シンプルな操作とゲーム性
- ランダム要素が産むリプレイ性
- 悪魔城への愛に溢れたDLC
短所
- 最序盤のみ難度がとても高い
- 単調と言えば単調なゲーム進行
- ゲーム内のみでは完結しにくい攻略性
『Vampire Survivors(ヴァンパイアサバイバーズ)』(日本での略称は『ヴァンサバ』)は、2021年にリリースされて以降、長年愛され続けている超人気ローグライトアクション。
人気の要因はいくつもあるが、まず本体価格が、ほぼワンコインの価格(2024年11月現在の価格は499円(税込))。それでいて、何十時間も飽きずに楽しめるゲーム内容となっており非常にコストパフォーマンスが高い。プレイ時間が1回約30分程度で終わる短さも魅力。さらに、難しい要素がほとんどないルールとシンプルな操作で、老若男女問わず楽しめるタイトルになっている。
昨今では"ヴァンサバライク"と呼ばれる、フォロワータイトルも数多く発売されるほどゲーム業界への影響も強く、ゲーム史に残る1本と言えるだろう。
2024年10月31日には、本作の新たな追加コンテンツとして、『悪魔城ドラキュラ』シリーズとコラボしたダウンロードコンテンツ(DLC)『Vampire Survivors: Ode to Castlevania』(以下、『Ode to Castlevania』)が登場した。
本記事では『悪魔城ドラキュラ』コラボDLCを含めてレビューをしていくが、まずは『Vampire Survivors』本体の魅力から語っていく。
『ヴァンサバ』の魅力の秘密とは?
『Vampire Survivors』のルールは至ってシンプルで、次々と敵が迫ってくるステージに挑み、30分生き残ればステージクリアー。特性の異なるさまざまな操作キャラクターのなかからひとりを選んで、あとは敵と戦い続けるだけでいい。
操作も非常に簡単で、基本は移動操作と選択肢を選ぶのみ。アクションゲームでありながら、攻撃はすべてオート発動となっており、移動キー(スティック)と決定ボタンくらいしか使用しない。
敵も難しい動きをすることはほぼなく、つねにプレイヤーに向かって迫りくるだけ。自分は敵を回避することに専念しながら動き続けるだけでよく、アクション部分では難しいことは考えなくていい。
とはいえ、頭を使う部分も存在する。それが本作の魅力のひとつである"装備品を取得するビルド要素"だ。装備は毎回リセットされるほか、ランダム性がかなり強いので、毎回プレイするたびに、どのビルドで挑むのかを考えながら楽しめる。
プレイヤーは敵を倒した際にドロップする経験値を拾っていき、最大値まで溜まるとレベルアップ。その際、ランダムでいくつか提示される武器・アイテムのなかから、ひとつを選んでキャラクターを強化していく。なお装備品は、同じものを選んだ場合は性能が強化される。
また、武器は特定の組み合わせの装備品を所持するなど、特定の条件を満たすと進化し、より強力な武器へと昇華する。武器・アイテムは、基本それぞれ最大6つまで装備可能なので、どの装備品を使うのか、どのアイテムを強化するのか、進化武器をどう取得するか、などを考えながら、レベルアップを重ねていくのが本作の面白さのひとつになっている。
この装備のビルド要素がとても楽しく、うまくハマると無数の敵を大量に蹴散すことが可能で、「俺つえー!」感バリバリの爽快感が味わえる。なかなか止められないゲーム性はもとより、高い戦略性と、バツグンの爽快度が、プレイヤーを魅了していく。
またステージによってはギミックなどが存在し、同じステージでも何度も楽しめるようになっている。さらに、キャラクターの基礎能力を伸ばす永続的な成長要素もあるほか、新キャラクターや武器・アイテムの解放も存在する。長期的に見ると、1プレイのなかで何をするのか目標を立てながら攻略し、新たな要素をどんどん解放していくゲームになっている。
1プレイ基本30分と言うとゲームとしては短いわけだが、解放要素が無数に存在するので、何度も何度もプレイしていくうちに、気が付けば何十時間も遊んでしまった……そんな時間泥棒ともいえるゲーム性が、初心者からコアゲーマーまでもを虜にしているのである。
登場しすぎな『悪魔城ドラキュラ』のキャラクターたち
『Ode to Castlevania』は、KONAMIの『悪魔城ドラキュラ』シリーズとのコラボにより実現したDLCだ。
本DLCを購入すれば、『悪魔城ドラキュラ』シリーズ作品からキャラクターやステージなどが多数追加される。ファンからも「本当に登場するとは!」と驚きの声がありながらも、待望のDLCとなっている。
というのも、『Vampire Survivors』はタイトル名にあるように"ヴァンパイア"をテーマにしており、キャラクターのビジュアルスタイルやBGMの曲調、はたまたアイテムなどが『悪魔城ドラキュラ』シリーズのオマージュに近い作りになっており、そもそも同シリーズをリスペクトしていたからだ。
確実に『悪魔城ドラキュラ』ファンが作ったであろう『Ode to Castlevania』だからこそ、コラボDLCの"原作愛"がものすごく、『Vampire Survivors』のDLCとしては過去最高のボリュームを誇っている。そのDLC価格は400円[税込]と本体価格に迫るが(ほかのDLCは250円以下)、それくらい大量の追加要素が用意されているのだ。
まずキャラクターが20名以上追加される。シモンやリヒターなど、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』にも参戦した代表的なキャラクターのほか、主役とも言えるベルモンド一族はほとんど網羅。シリーズファンならば知っている、レオンやユリウスも登場する。
ほかにもシリーズを代表する『悪魔城ドラキュラ 月下の夜想曲』のアルカード、メガドライブの『バンパイアキラー』よりジョニー、エリックなども登場し、ファンを喜ばせてくれる。
それでいて、驚きのキャラクターもたくさん登場する。たとえばゲームボーイの『悪魔城ドラキュラ 漆黒たる前奏曲』の主人公であるソニア・ベルモンドは、初の女性主人公ながらに、のちの『悪魔城ドラキュラ』シリーズの正史としては語られない、パラレルかつマニアックなキャラクターだ。登場したときには、いちファンとしてとても驚いた。
基本的なメインキャラクター以外も網羅されており、さらに各種条件をクリアーすると最初にシルエットだけ表示されていたキャラクター以外も、多数追加されていく。"追加キャラ20名以上"とは公式情報の表記なわけだが、じつのところ70名以上ものキャラクターが使えるようになる。増えすぎ。
『悪魔城ドラキュラ』らしい遊びごたえ
もちろん、DLCで追加されるのはキャラクターだけではない。『悪魔城ドラキュラ』をモチーフにした新ステージも追加されており、当ステージを攻略してくことで新たなキャラクターや、新武器・新アイテムがアンロックされる。
ステージも探索型(いわゆる"メトロイドヴァニア"と呼ばれているタイプの)『悪魔城ドラキュラ』をモチーフにしていて、本作最大級の広さを誇るステージを探索しながら、各所にいるボスを倒していく内容になっている。敵キャラクターも、シリーズおなじみの敵ばかり。
隠しエリアなどもあり探索する楽しみと、ボスを攻略していくバトルの面白さを『Vampire Survivors』なりに表現しているのは、とてもうまいアレンジ。特定のエリアでは、360度動き回れるトップビューのはずの本作が、いきなり横スクロールアクションに変化するのも驚いた。
とはいえ、基本は『Vampire Survivors』なので、やることは敵をとにかく倒すことに集約されている。そこに「どのルートを辿っていこうか?」といった簡易的な進行プランを考える要素が加わっているのもいい塩梅だった。
追加アイテムは武器がメインで、こちらも大量。シリーズを代表する"ヴァンパイアキラー"など、鞭の武器だけでも大量に用意されており、やはり解放していくだけでも時間が溶けていくほどに、やり応えバツグン。
ただ、そもそも『Vampire Survivors』に十字架や聖水といった、『悪魔城ドラキュラ』らしい武器が多数含まれているため、代表的な武器類はやや少ない。おもにシリーズファン向けの内容になっている。
ちなみに、『Vampire Survivors』は素晴らしい楽曲が多いが、今回のDLCでは楽曲も多数追加されている。BGMも人気が高い『悪魔城ドラキュラ』シリーズから、本作に合わせたアレンジ曲がたっぷりと収録されており、いずれもハイテンポなりミックスで気分が上がること間違いナシ。しかも、原曲まで付いてくるオマケ付きだ。
圧倒的コスパで敵を狩れ!
といった感じで、本DLCはキャラクター、武器、アイテムの追加が基本なわけだが、その量がものすごすぎる。その内容も開発陣の"好き"がひしひしと伝わってくるうえ、『Vampire Survivors』がいかに『悪魔城ドラキュラ』をリスペクトしていたのかもわかる。
『Ode to Castlevania』は、『悪魔城ドラキュラ』シリーズファンには、もちろんオススメできるDLCとなっている。『Vampire Survivors』は持っているけれども、『悪魔城ドラキュラ』シリーズをしらないといった人たちにも、新たなキャラクター・アイテムが使用できるようになるのでぜひ遊んでいただきたいと思う。
2024年8月には、過去にニンテンドーDSで発売されたシリーズ3作を収録した『キャッスルヴァニア ドミナス コレクション』(KONAMI)が発売されるなど、『悪魔城ドラキュラ』シリーズ復刻の流れもある。
『キャッスルヴァニア ドミナス コレクション』から『悪魔城ドラキュラ』シリーズに興味を持った人が、遊びやすい環境にあるのも、いちファンとしてもオススメしやすい。
なお、そもそも『Vampire Survivors』はDLCがなくてもプレイボリュームが盛りだくさんなのだが、『Ode to Castlevania』以外にもさまざまなDLCが配信されており、たとえばKONAMIの『魂斗羅』シリーズとのコラボDLCである『Operation Guns』なども人気だ。
他のDLCたちもそれぞれ低価格ながらに、やはり高いプレイボリュームを誇っている。コスパのよさだけで言えば、間違いなく『Vampire Survivors』に敵うゲームは少ないだろう。