"走る"がもっと自由に! 『マリオカート ワールド』をやり込んで感じた進化と課題

フリーランをはじめとする自由度への期待と、実際の印象のギャップ

ライター /

8.5
評価
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評価項目 評価 ユーザーの評価
グラフィック・アニメーションの美麗さ 10.0
走行エリアが増加したことによるプレイの自由度の高さ 8.0
『マリオカート』シリーズ最新作としての魅力 9.0
カーレースの爽快感 7.0
『マリオカート ワールド』は、自由度の高いコース設計やフリーランモード、収集要素や新モードなど、遊びかたの幅が大きく広がった意欲作だと感じた。グラフィックや演出も進化し、やり込み要素も豊富。ただし、自由度の限界や24人対戦による混戦で、爽快感に欠ける場面も。シリーズファンとしては今後の改善やダウンロードコンテンツにも期待したい。

長所

  • これまでの『マリオカート』シリーズとは異なる、新鮮なレース体験を味わえる
  • グラフィックやアニメーションが進化し大迫力になった
  • コスチュームやステッカー集めなどやり込み要素が多様化
  • サバイバルモードでハラハラ! 真剣レースの醍醐味が味わえる

短所

  • フリーランのコンテンツが少し物足りない
  • レースの参加人数が多く、ごちゃつくので爽快感にやや欠ける

『マリオカート ワールド』は、レースゲーム『マリオカート』シリーズ約10年ぶりの新作。発売まえから、"Nintendo Direct"や"マリオカートDirect"で動画が公開され、大きな話題となっていた。

これまでのシリーズ同様、本作でも、マリオやルイージ、ピーチ姫などおなじみのキャラクターたちが各種マシンに乗ってバトルを繰り広げる楽しさがが存分に味わえるようになっている。多数の新要素が追加されているが、そのなかでも筆者が本作の見どころだと思うのは、以下の3つである。

  • 道中も舞台に! 大陸横断の多彩なレースコース

本作では、世界(マップ)の各地に広がるコースを走ることができる。"マリオサーキット"などお馴染みのレースコースはもちろん、新しいコースも多数登場し、さらに本作ではひとつのコースが終了し次のコースに向かう道も、すべてレースの舞台となっている。移りゆく景色を見ながら、レースを楽しめるのが楽しい。

  • 自由すぎる走行スタイル

広大なマップを自由なスタイルで走れるのが、本作の大きな魅力のひとつ。たとえば上の動画のように、マシンのままトラックの荷台に乗り込むと、そのままトラックを操作することができる。ほかにも、レールや電線の上、壁など、これまで走れなかった場所が走行可能になっており、コース選択の自由度は大幅に広がっている。

さらに、新たに追加された"フリーラン"モードでは、レース中には入れない道や海の上など、マップの隅々まで自由に探索できる。ミッション形式のミニゲームも用意されており、遊びかたは多彩だ。

  • やり込みかたは無限大! コレクション要素や新モードが大幅追加

 

本作はキャラクターのコスチュームやステッカーといった、新たな収集要素が追加されている(詳細は後述)。なお、キャラクターは全50種類、マシンは40種類にのぼり、すべてを集めるにはかなりのやり込みが求められる。

さらに、順位の低いプレイヤーから順に脱落していく"サバイバル"モードも新たに追加され、緊張感ある手に汗握るレースが楽しめる(こちらも後述)。

このように、新要素が満載の『マリオカート ワールド』。本記事では、発売日からやり込んできた筆者が、プレイして初めて実感できた本作の魅力と、今後への期待についてレビューする。

あれもこれも新しい、豊富なコンテンツに大興奮!

本作は、とにかく新要素が盛りだくさん。前作『マリオカート8 デラックス』(以下、『マリオカート8』)から大きく進化しており、シリーズファンなら間違いなく満足できる1作だ。

シリーズものではあるが、物語的なつながりはなく、本作から初めて『マリオカート』をプレイする人でも安心して楽しめる。アシスト機能も充実しており、初心者でも気軽にレースの世界に飛び込めるようになっている。

まずは、コースやギミックが新しい。さらにプレイスタイルも新しい。上の動画のように、壁やレールの上など、走れる場所が圧倒的に増えている。どのコースも走るたびに、どこを走れるんだろう? より速く走るにはどの道が良いんだろう? とワクワクしてしまう。

そして、とにかく映像が綺麗だ。雷や爆発はより色鮮やかに、スピードアップのエフェクトもより迫力満点に、水しぶきは繊細に。さらには選択画面のアニメーションまでインパクト十分。まさに映像美が大きな魅力である、Switch 2でプレイする意味がある作品と言えるだろう。臨場感たっぷりな映像のおかげで、よりレースに没入することができる。

『マリオカート ワールド』コスチューム

新キャラクターも多数追加されている。その数、全50種類(衣装違いや色違いをカウントすると50種類以上)と多すぎて選ぶのが難しい! おなじみのマリオやルイージ、ヨッシーなどはもちろん、ウシやペンギン、ゆきだるまなど脇役キャラ(?)でプレイできるのも面白い。

ただ前作『マリオカート8』と異なり、『ゼルダの伝説』や『どうぶつの森』や『スプラトゥーン』などのキャラクターは不在。個人的には、さまざまな任天堂作品の魅力的なキャラクターが一堂に会するのが好きだったため、やや残念ではあった。今後、ダウンロードコンテンツとして追加されることを願いたい。

またキャラクターだけでなく、新たなアイテムも多数登場している。一時的に巨大化し他のプレイヤーを踏みつけることができる"きょだいキノコ"(上の動画)や、他のプレイヤーを別のキャラクターに変身させてしまうアイテム"カメック"など、個性豊かで強力な効果を持つものばかり。

さらに、"サンダー"の効果時間が短くなったり、"ブーメランフラワー"の投げられる回数が増えたりと、『マリオカート8』から引き続き登場しているアイテムにもアップデートが!

また、サバイバルモードも面白い。サバイバルモードでは、コースをノンストップで走るが、チェックポイントごとに脱落者が発生。チェックポイントまでに、画面右下に表示されている順位(上の動画の場合はトップ8)に入れないと脱落し、レースはそこで脱落。このシビアすぎる世界観が癖になる。

前作『マリオカート8』では、正直1〜2周目前半までは順位が低くても(手を抜いていても)、アイテムやテクニックで挽回できることが多かった。だが、サバイバルモードはチェックポイントがこまめに設定されているので、終始気を抜かずにレースにのめり込むことができる。

チェックポイント間際では、加速アイテムや攻撃アイテムを使用するような攻防も多く、グランプリモードでは味わえない手に汗握る体験を味わえる。

走り込み・コレクション制覇・ミニゲーム……やり込みかたも無限大!

『マリオカート8』では、すべてのキャラクターやマシンを解放し、ひと通りコースをマスターしたあとは、ひたすらレースやネット対戦を通じて、プレイの腕を高めることがおもなやり込み方法だったように感じる。

だが、本作の楽しみかたは無限大だ。ガチ勢も緩くプレイしたい人も、またひとりでも家族や友だちとも、さらに少しだけプレイしたい時もガッツリプレイしたい時も、楽しめるような作りになっている。

まずはレースのやり込みについて前述したように、壁やレールの上など、コース内で走れる場所が圧倒的に増えているので、より効率的で走りやすいルートを見つけるのにはプレイを重ねる必要があり、飽きが来ない。

 

また、全キャラクターを解放することが、ひとつのやり込み要素にも繋がっている。なぜならば、新アイテム"カメック"を使わないと解放されない隠しキャラクターが多数いるからだ。

"カメック"は、ライバルを別のキャラクターに変身させるアイテムである。これを自分で使う&他プレイヤーに使われることで隠しキャラクターが解放される仕組みになっている。しかしこの"カメック"、出現確率がそれほど高くない。しかも、隠しキャラごとに対象のコースが決まっている(たとえば隠しキャラの"テレン"は"おばけシネマ"のコースでカメックを使う&使われることで解放される)ので、対象のコースを何度も走りながらカメックの出現を待ち続ける、といったやり込みが必要になり、時間を忘れてプレイしてしまう。

コレクション要素も膨大すぎる。たとえば、キャラクターのコスチューム。マリオ、ルイージ、ピーチ姫など一部のキャラクターには多彩なコスチュームが用意されている。コスチュームを手に入れるには、各地にある"ヨッシーズ"で"ダッシュフード"と呼ばれるアイテム(紙袋にスマイルマークが書かれたもの)を、獲得する必要がある。

ダッシュフードは複数の種類(料理)が存在し、獲得するまでその内容は分からない(ダッシュフードの種類は、ヨッシーズのある場所によって異なる)。対象のキャラクターをすべて合わせると、153種類のコスチュームがあるので、ヨッシーズをくまなく巡る必要があるだろう。どんなコスチュームが手に入るか、ワクワクしながら各地を巡るのが楽しい。

コレクション要素はほかにもある。新たにステッカー要素も追加されている。マシン性能に直接関係はなく、あくまでプレイヤーがマシンに貼ってカスタマイズを楽しむためのものだ。ステッカーの入手方法は、コインの累計獲得枚数、累計走行距離などさまざまな実績に紐づいている。

また、ステッカーの多くはフリーランモードでの"ミッション"(指定の条件を制限時間内にクリアするミニゲーム。上の動画はそのひとつ)をクリアしたり、マップ内の隠し要素を見つけたりしないと獲得できない。ミッションにはかなり難易度が難しいものもあるし、マップ内の隠し要素も見つけづらかったり辿り着きづらい場所にあるからこそ、面白い。

獲得が難しいステッカーをマシンに貼れば、ちょっぴり誇らしい気持ちで走れること間違いなしだろう。ステッカーのコンプリートを狙うならば、相当な走り込みとワールドの探索が必要だ。

このように、レース・キャラクター・コレクション......とゲームを楽しむ選択肢は複数ある。レースの腕を高めよう! とレースに打ち込むのも面白い。フリーモードをゆるりと探索しながら、コレクション集めをするのも良いだろう。

それぞれが好きなカスタマイズをして、家族や友だちとレースをしてみるのも楽しい。前作に比べて、楽しみかたの幅が大きく広がった作品になっているのは間違いない。

自由度と爽快感は今後に期待……!

ただ正直な意見を言うと、手放しに絶賛するにはやや物足りない部分もあると感じている。

その理由のひとつ目は、思ったよりも自由度が少ない。"オープンワールド"や"世界を自由に駆け巡ってレース"するというイメージを持っていると、期待外れな印象になる。

広大なエリアを自由に探索するのは、あくまでフリーランだけと思っておくと良いだろう。もちろんレース中でも電線やレールなど、さまざまな場所を走行できるが、しかしコースを外れて自由自在にどこでも走れるわけではなく、一部フリーランのみでしか自由に走ることができない場所も多い。

実際のところ、フリーラン自体もやや魅力に欠ける。前述したコレクション要素はあるものの、それ以外に、探索する上での目的が薄い。もちろん、広大な世界を探索すること自体が目的のひとつではある。だが、とくにレース要素もないだだっ広い空間をひとりきりで走っていると、どこに向かっているんだ……? という感覚に陥る。

たとえば、各地にいるキノピオなどのキャラクターと会話やミニゲームができたり(いまは上の動画のようにただ存在しているだけだ)、集めたコインでアイテム交換ができたり、などの要素があったらより面白いかもしれない。今後、フリーランをより楽しめるようなダウンロードコンテンツの登場を心待ちにしたい。

ふたつ目は、爽快感を感じづらい点だ。簡単にいうと、プレイしていてストレスが溜まるポイントが多い。もちろん『マリオカート』シリーズ自体、やり込んでいくほど、アイテム運による理不尽さはつきものだ。

いちばんの原因は、レース参加人数が増えたことだろう。これまではコースを12人で走っていたが、本作は2倍の24人。人数が多すぎるがゆえ、プレイしづらい。たとえば3周あるコースでは、1周目はほぼ混戦状態でごちゃごちゃしており楽しく走れない。

この人数増加により、アイテムの運ですべてが決まってしまう傾向が前作よりも強くなった印象もある。2〜3周目前半で上位にいたとしても、自分より下にいる20数名に攻撃を受け続けることになる。バナナやこうらなどの防御アイテムが手に入らなかったり、"トゲゾーこうら"などの厄介な攻撃アイテムを連発されてしまうと、かなり厳しい。とくに、本作の見どころでもあるレールや電線などの特殊な場所を走っている際に攻撃を受けると、落下してしまい大きなタイムロスに。瞬く間に順位が転落してしまう。

逆に最下位にいたとしても、アイテム次第では上位に返り咲ける。これは、初心者やレースゲームが不得意な人からすれば嬉しいポイントだろう。ただ筆者のように『マリオカート』シリーズのレーステクニックを極めて勝ち抜く、というレース要素を重視しているプレイヤーからすれば、やや本ゲームを遊ぶ目的と異なるように感じてしまう。

ただ、人数の多さがプラスに作用する場面ももちろんある。たとえば、部活の合宿や、会社のゲーム大会という場面を想定すると、大人数のプレイは確実に盛り上がるはずだ。

『マリオカート ワールド』サバイバルモード

©Nintendo

また、サバイバルモードでは人数が多い方が、脱落タイミングまえの混戦状態が楽しい。それにサバイバルモードでは後半にいくにつれ人数が減っていくので、真剣なレース感もどんどん増していく。レースガチ勢は、サバイバルモードをプレイすれば爽快感とハラハラをバランスよく味わえるのではないだろうか。

今後のアップデートに希望があるとしたら、コースを走る人数を12人もしくは24人のように、カスタマイズできると嬉しいと思う。

それでもシリーズ最新作として大満足の一作!

少し気になる部分はあれど、本作は間違いなく前作『マリオカート8』から大きな進化を遂げている。革新的で挑戦的な新規要素を詰め込んだ『マリオカート』シリーズ最新作として、納得の一作だ。より熾烈に、より自由に、より深く、レースを満喫することができる。

今後、長期的にさまざまな追加コンテンツやアップデートが行われることは間違いないはずだ。『マリオカート ワールド』のこれからに期待しつつ、引き続き本作をやり込んでいきたい。

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